19警務調査官(ユリウス)
俺はすぐに殿下の事をコートナー法務局長に知らせた。
「殿下に毒が盛られました。先日に続いて二度目です。もう、これ以上は放ってはおけません!」
「それで、殿下の容体は?」
「はい、シャロン・オールデル嬢が何とか治癒魔法で食い止めてくれましたので、今は落ち着いておられます」
「そうか。もう、これ以上ガイアスの勝手は許してはおけんな。すぐに毒を盛った犯人を突き止めるため王家直轄の警務調査官が入る。キャベル公爵も呼ぶ!」
警務局の担当はキャベル公爵ですぐに警務調査官が呼ばれる事になった。
「警務調査官のマリウスです。すぐに殿下の所に」
マリウスは現場の保全が優先だと部下を連れて殿下の部屋に急いだ。
殿下の部屋にはアマンダがいた。殿下は眠っていて容体は安定していた。
俺はロイトン医師とアナがいないのでアマンダに尋ねた。
「アマンダ、二人はどこだ?」
「二人は牢に連れて行きましたわ」
「おい、どういうつもりだ?なぜ勝手な事をした?」
「ガクセン嬢、事情をお話しください」
マリウスは眼鏡の淵をすっと上げてアマンダを見た。
「はい、殿下の容体がおかしくなったのは昨日。その時ロイトン先生は秘かに平民であるアナと言う女性を連れて来ました。彼女は魔法が使えて薬師でもあったそうです。先ほど殿下に魔法を促して殿下を助けたように見えました。ですが、もしかしたらそれは見せかけではと思いました。だから取りあえず護衛騎士に拘束させました。ここに置くのも不安でしたので牢に連れて行かせました」
「そうでしたか。あなたの判断は正しいと思います。今はまだ何もわからない状況ですので関係者は拘束しておくべきでしょう。なので、あなたにも監視をつけさせていただきます。ところでそのアナさんがそこまで怪しいと思われた理由を伺っても?」
「彼女は殿下の薬を作っています。それに昨日は王妃の投薬記録を勝手に見ていました。いきなり現れてしかも魔法が使えて殿下に近寄れた。しかも薬は彼女が作りました。だから、毒が薬に入っていたのかもしれないと思いました」
「殿下の口にするものだったと言う事ですね。わかりました。薬と薬湯を保全して下さい」
マリウスは部下に薬と薬湯を確保させた。
「さて、この部屋にはその薬と薬湯、そしてポットに入った飲み物があります。他に殿下が口にされたものがありますか?」
俺は食事の事を話した。
「殿下が一人で食べられたのですね?」
「いえ、昼食は私が厨房から直接運んでロイトン医師とアナさんも召し上がりました」
「殿下だけが召し上がったものがありましたか?」
「いえ、すべて俺が先に毒見をしています」
俺はここに運ぶ前にどれも毒見を済ませていた。それくらいはして当然だと思っていた。
「では、食事は問題なかったということですね。後は薬やここにある飲み物。この飲み物はどなたが?」
部屋に控えていた護衛騎士が前に進み出た。
「それはシャロン・オールデル公爵令嬢がお持ちになりました」
「殿下の婚約者の?彼女は中に入りましたか?」
「いえ、部屋の外で話をしてワゴンを受け取り殿下にお持ちしました」
マリウスはワゴンに近づきコップにオレンジ水が入っているのを確かめた。
「まだ、ほろ温かいですね。ホットオレンジでしょうか?それにしては色がやけにどぎつい気がします。それに匂いも‥これを保全して下さい」
部下がワゴンの上にあるポット、コップを保全した。
次にマリウスはロイトン医師が殿下が吐きだしたものを受けた掛布団や彼の白衣を見た。
「こちらは殿下が吐かれたものですか?」
「はい」
「これも保全。すぐに書類を整え薬師に毒の解析を依頼して下さい」
マリウスの部下は素早く証拠品を押収するとそれらを持って部屋を出て行った。
「ガクセン嬢は関係者と言う事になりますので、しばらくは薬師室には立ち入れ出来ません。ご了解ください」
「あなた、本当に失礼ね。私を疑う気?」
「これは正式な取り調べです。それも次期国王陛下暗殺未遂。事は重要案件ですので、もちろんルシフェル卿、あなたの行動制限もさせていただきます」
「俺も?いや、それはおかしいだろう?俺は殿下の側近。今、殿下のそばを離れるわけには行かない。万が一殿下がまた狙われるようなことがあったらどうするんだ?」
そこにヴォルク・レーニンぐ副騎士団長が入って来た。
「事情はコートナー法務局長から聞いた。ここからは俺が殿下の護衛に入る。ユリウス、今は警務調査官の言う通りにしろ!」
「レーニンぐ副隊長。しかし」
「すぐに調べは終わるだろう。それまでは皆、指示に従え。いいな!」
「わかりました」
「では、ガクセン嬢、ルシフェル卿、それぞれ用意した部屋でお待ちいただきますようお願いします」
「わかりました。レーニンぐ副隊長、殿下の事くれぐれもお願いします」
「ああ、命に変えても殿下をお守りする。安心しろ」
俺は護衛騎士に案内された部屋に行くしかなくなっていた。




