18疑われる
私はアマンダ様の問いに戸惑いロイトン先生を見た。
だって、私をここに連れて来たのは彼だ。私は嫌だと言った。でも、殿下を助けるためだからと言われて仕方なく治癒魔法を使った。
それも二度も。殿下の容体は一刻を要していたから仕方がなかったと言えばそうだ。
でも、彼女から悪者みたいに言われるのは筋違いと言うものだろう。
「アマンダ、違うんだ。彼女は魔力がある。それは認める。平民だって事も。でも、さっき見ただろう。彼女がいなかったら殿下はどうなっていたと思う?一国の国王になる男を助けたんだ。それだけですごい事だろう?なぁ、そう思わないか?」
ロイトン先生はアマンダに落ち着けと言うように両手を前に押し出して、まあまあまあ、と言う風にして見せる。
「それはわかってますわ。でも先生。彼女がどこのだれで何者なのか仰っていません。私はそれを尋ねているんです!」
「今はそれどころではない。とにかく殿下を」
ユリウス様がそう言ってやっと落ち着いた殿下の衣服を脱がし始めた。
「着替えを」
私ははッとして部屋のクローゼットを開ける。中から寝間着を取り出してユリウス様に渡す。
彼は手慣れた様子で殿下の服を脱がして新しい寝間着を着せた。
「取りあえず上だけ着替えれば大丈夫そうだな。ロイトン先生ここにいて下さい。アナさんも。殿下の容体がいつ急変するかわかりません。俺はこの事をコートナー政務局長に知らせて来ます」
ユリウス様はそう言うと踵を返す。
「ユリウス様。それはおかしいんじゃありませんか?だってアナさんは平民で魔力も持っていて殿下を助けたふりをしてるのかもしれないんですよ。殿下に薬を作ったのも彼女です。今一番怪しいのは彼女じゃないんですか?それをここにいて殿下を任せるなんて非常識ですわ。ロイトン先生も疑わしいと思いますわ。それなのに。護衛兵!二人を拘束して」
アマンダ様はどうしても納得がいかないらしく私とロイトン先生を拘束しようとした。
部屋に控えていた護衛騎士が私とロイトン先生を拘束する。
「アマンダ、君は誤解しているだけだ。二人は殿下に毒を盛るような人ではない」
ユリウス様が呆れたように言う。
「それはユリウス様のご意見です。私はこれでもガクセン侯爵の娘。そして薬師としての目線でお話しているのです。二人が怪しい行動をしている以上私はそれを見逃す事は出来ませんわ」
「とにかく詳しい話は後だ。俺はこの事をすぐに報告しなくてはいけない。ロイトン先生。アナさん。すぐに容疑ははっきりさせますので安心して下さい」
ユリウス様は今は一刻を有すると判断したらしい。
「とにかく、ここで言い合いをしている場合ではないので、護衛兵、私が帰るまで2人はここで拘束しておいてくれ。いいな」
「「わかりました!」」
ユリウス様が出て行くとアマンダ様はすぐに護衛騎士に命令をした。
「二人を牢に連れて行きなさい」
「ですがユリウス様がここで拘束しておくようにと」
「あなた達、殿下にこれ以上何かあったら責任が取れますの?今は殿下の安全が一番です。二人をここに置いておくわけには行きません。それくらい判断出来ませんの?これはガクセン財務局長代理命令と思いなさい!」
アマンダ様は自分のお父様の名前を出して護衛騎士に命令をした。
さすがに財務局長の命令となればユリウス様の命令とは桁が違う。
「わかりました。申しわけありませんがそう言う事情ですのでお二人は牢に入って頂きます」
ロイトン先生も下手に逆らわない方がいいと判断されたらしい。
「ああ、君たちの言う通りにしよう。アナ、こんな事になって済まないが悪いがしばらく辛抱してくれすぐに私達の嫌疑は晴れる。安心してくれ」
私は胸の奥がぞわりとした。
これってお母様と同じパターンでは?お母様はそのまま犯人にされてそれですっかり気落ちして‥いや、もしかしたら毒を盛られたのかもしれない。
だってお母様はそんな事をするはずがないんだから。
母が自殺したと聞かされてそのままそれを信じていたが、同じ状況に置かれると母が自殺するとは思えないと感じた。
もしかしたら剣で切り付けられてそれで遺体を見せられなかったのかもしれない。
色々は可能性が頭に浮かんでは消えた。
もしかして私も同じ罠にかかったとしたら?
いや、ユリウス様はそんな人ではない。ロイトン先生だってきっと違う。
でも、こんな事になるともう誰を信じていいのかも分からない。
「いやです。私は何もしていません。放してください。私はただの平民でただここに来るように命令されて、平民の私はそれを拒むことも出来ませんでした。お願いです。事実を見て下さい。私は魔法を使いましたが殿下の命を奪ってはいません。どうか、もう帰らせて下さい」
「まあ、そんなに慌てるなんてやっぱり何か知っているのではありませんの?」
「違います!」
私は護衛騎士の拘束を振りほどこうともがいた。
「アナさんとおっしゃいましたか。今すぐ何かするわけではありません。とにかく事態がはっきりするまでとどまって頂くためだけですから」
そんな言葉が信じれるとでも?
「だから、返してください。逃げたりしません。でも、牢に入れられるのは嫌です!」
「諦めが悪いわよ。いいから連れて行きなさい」
「はい、さあ行きましょう」
護衛騎士が私の腕を両脇から掴む。逃げることなどできない。
「アナさん、心配いりません。すぐに疑いは晴れます。万が一にもあなたに害が及ぶような事にはしませんから安心して下さい。約束します」
ロイトン先生が傍らで言う。
「そんな言葉信じれません!」
私は無理やり王宮の地下牢に連れて行かれた。




