13他の薬師の本音
私は薬師の部室に戻るとメアリー様がいた。
「アナさんお疲れ様。全くロイトン先生ったらいきなり殿下の担当に指名するなんてあなたも大変ですね」
「お気遣いありがとうございます。ですがしばらくの間と伺っていますので。メアリー様はいかがですか?仕事はもう慣れました?」
私は彼女に合わせてたわいない話をした。
赤茶色の髪は薬師らしく後ろで綺麗に束ねられている。彼女は未婚の令嬢らしい気やすさで口を開く。
「ええ、何とか。でも、来た早々薬師長が直ぐに今のヴェスさんになって色々大変だったのよ」
「まあ、それは大変そうですね。でも、その前任の薬師長が辞めた理由はなんです?」
メアリーはよく聞いてくれましたというような顔で私を見た。
「アナさんも知ってるでしょう?王妃様が毒殺された事件。あれ、薬師長が毒を使ったらしくて」
「まあ、薬師長が?」
私はそれが母の事だとわかっている。でも、彼女が何か情報を持っているかもしれないと思い何とか平然を装った。
「ええ、王宮中が大騒ぎでガクセン国王代理がすぐにアリア様と捕らえて牢屋に入れたの。ここは直ぐに封鎖されてその後は調査員がここを調べに来たわ。そしてヒソ毒の強い鉱石の粉が見つかったのよ。でも、そんな物他の薬師は一切見たことがなかったわ。だってそんな毒性の強い物はいつも厳重に金庫に入れてあって、書類にもきちんと記載が必要なんだから。それにあの日は、私が朝一番に薬草室の在庫を調べることになっていてそんな粉が無かった事を知っていたわ。なのに毒が見つかって」
「メアリー様はそれを誰かに話したんですか?」
「もちろんよ。薬師長がいないから宮廷医長のキケル先生に話したわ。でも、正式な調査でわかった事に異論を唱えたら私が疑われるかもしれないって言われて」
「それは辛かったでしょう?その事をヴェラ様は知ってるんです?」
「ええ、ヴェラ様は着任してすぐに私達に毒のことを聞いたの。だから私、毒はなかったはずだって言ったの。そしたら私の話を信じてくれて。でも、私の身に危険が及んでは行けないから今はこれ以上騒がないほうがいいだろうって。私もそれがいいと思ったから」
「でも、私に話してくれて良かったんです?」
「だってあなたはロイトン先生が信頼している薬師なんでしょう?だから私。信じていいのよね?」
本当にメアリーはいい人らしい。
「もちろん。絶対に誰にも言わないって約束します。それよりあなたもそのアリア様がそんな事をしたとは思っていないんですよね?」
「ええ、だってアリア様は本当に王妃様を心配されていたって王宮中の人が言ってたもの。私もお会いしたのはほんの数回だったけど、薬草の事にはすごく厳しくてでも、失敗しても怒るんじゃなくてどうしてかって事を説明して下さったわ。あんな人がそんな恐ろしい事するはずがないもの」
メアリーは懐かしむように目を閉じるとふっと首を振った。
私はうれしかった。母を信じている人がいる。
「ええ、きっといつか真実がわかる日が来ると思いますよ」
「おい、いつまで油売ってるんだ?今日は救護院に納める薬を作らなきゃならないんだ。アナさんも殿下の薬の調合が終わったらこっちを手伝ってくれよ」
そう言ったのはレオンさんだった。
「もう、レオンさん。言葉きついですよ。ちゃんとわかってますから」
メアリーがすぐに薬草の入った瓶に手を伸ばした。
そう言えば救護院に王宮から薬が届いていた。アスロイ大司教が自慢気に私が掛け合ったと言っていた。
「すみませんレオンさん、すぐに終わらせて手伝います」
私も急いで殿下の薬の調合に取りかかった。
突然、アマンダ様が声を荒げた。
「レオン。アナさんには薬の調合をさせるのはやめて!彼女は正式な王宮の薬師じゃないのよ。万が一何かあったら責任問題よ」
アマンダ様が気安いレオンさんに余計な事を言うな見たいな視線を送る。
「何だよアマンダ。人手が足りないんだからいいじゃないか。ロイトン先生が認めてるんだぞ」
「そんな事関係ないわ。彼女は平民なのよ。ここで働けるような身分じゃないんだから」
「そんな事言うなら俺だって」
「あなたは実績があるもの」
「そう言うの屁理屈って言うんだ。だから女って言うのは!」
レオンさんはそれ以上何も言わなかった。
ヴェス様は出掛けたのかいなかったし私は、やっぱり平民だからかと思いながら余計な詮索はしないように殿下の薬作りに集中した。
「アナさん、気にしないで。アマンダ様はきっとまた薬師に罪を擦り付けられたらって心配してるんだと思います」
こっそりメアリーさんが言った。
「ええ、わかってる」
まあ、3年もいたなら国王の病でもきっとひと悶着あったのだろう。それに王妃様のことも。やってもいないことを疑われるのはすごく嫌だと言う気持ちはすごくわかる。




