恋人の特権
サラは侍女たちに協力してもらい、下町の若い娘のような格好をして待っていた。
「サラ様!可愛いです〜!」
「本当に、リアム様もメロメロですね」
侍女たちがサラを囲んで誉めたてる。
「みんな...協力してくれてありがとう。夕方には戻るから」
そう言ってサラは待ち合わせをした王城の中庭に行く。
「ここで...リアム様と...」
リアムと想いが通じ合ったあの日を思い出し、赤面していた。
「サラ様!」
リアムがやってきた。
「...すみません、待たせてしまいましたか?」
「いいえ、ちょうど今来たところでした」
サラが笑顔で言うと、リアムは彼女の格好に見惚れた。
「...あ...可愛いです、すごく」
斜め上を見ながら言うリアムが可笑しくて、サラはクスクスと笑った。
「リアム様、今日は敬語は禁止です!サラ"様"もやめてください。城の外では怪しまれますから」
「...わ、わかった。じゃあ、サラ...行こうか」
そう言ってリアムはサラの手を取り、二人は初めてのデートへと出発した。
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「おや、騎士団のリアム様じゃないか。もしかして、デートかい?」
もう何度目か、通りすがりの人々に声をかけられる。
街中を歩くと、長身のリアムはよく目立つ。それに騎士団での彼の活躍は皆が知るところだ。
「お熱いねぇ。これまた別嬪さんなお嬢さんじゃないか!」
隣で手を握るサラは、緊張しつつも笑顔で応えた。サラはこの国の王女だが、一部の貴族を除いて彼女の顔を知る国民は少ない。それというのも、幼い頃にサラ王女の誘拐未遂事件が起きて以来、あまり表には出ていないのだ。「謎めいた王女」の噂は一人歩きして、誘拐事件のときに顔に大きな傷ができただとか、騎士団に入れるほどの武術の達人だとか、様々な憶測が上がっている。
「とりあえず、店に入りましょう」
リアムはそう言ってサラをカフェへと連れていった。
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「わぁ!美味しそう」
リアムがカウンターから運んできたサンドイッチを見て、サラは顔が綻んだ。
「...口に合うかわからないけど、食べてみて」
リアムが皿に取り分ける。
「リアム様はよくここに来るんですか?」
サラが尋ねると、リアムは少し考えて言った。
「...こういうカフェに来るのは初めてだ。誰かとデートするのも。どんな場所が気にいるかわからないから、昨日騎士団の仲間にオススメの店を聞いたんだ」
照れながら白状するリアムが可愛く見えて、サラは笑ってサンドイッチを頬張る。
「美味しい!!」
リアムはそんなサラを愛おしげに見つめていると、別のテーブルにいた客の男がリアムに恐る恐る話しかけてきた。
「あの...もしかして騎士団のリアム様ですよね?この前、マルヴォリオに親父が襲われて...間一髪のところをあなたに助けていただいたんです。親父が生きているのはあなたのお陰です!ありがとうございます!」
「いや...礼など大丈夫だ。それより父親が無事でよかったな」リアムが答えると、男は嬉しそうにお辞儀をして席に戻った。
「...やっぱりリアム様はすごいです。こんなに街の人々に慕われて...」
サラが嬉しそうに言った。
リアムが会計をしている間、サラはカフェの外に出て待っていた。すると、彼女のもとに数人の女性がやってきた。
「ちょっとあなた!リアム様の何なのよ!」
「私たちは騎士団に入団した頃からずーっとリアム様を応援してるのよ!なんであなたがリアム様とカフェで楽しそうにしてるの!?」
口々に嫌味を言う彼女たちは、どうやらリアムのファンらしい。サラは困惑しながらも、「そうよね、かっこいいものね」と納得した様子で彼女たちを見た。
嘘をついて誤魔化すのは良くないと思ってサラが口を開いたとき、リアムの大きな背中がサラの前に現れる。
「...俺の恋人になにか?」
冷たく言い放たれた言葉にショックを受ける女性たち。
「...こ、恋人...?」
「二人で出かけているんだ。邪魔をしないでくれないか」
リアムはそう言うとサラの手を引っ張って早歩きでその場を去った。
二人に会話はなく、しばらく歩くと町外れの草原まで来ていた。人がおらず、穏やかに草が揺れている。二人は黙ったまま草の上に座った。
「...リアム様?」
「すまない。不快な思いをさせてしまって...」
「全然不快じゃありません。リアム様が街の人々から慕われているのも知っていますし、女の人たちがリアム様のことを好きになるのも...わかります。だってリアム様、かっこいいんだもの...」
照れて顔を隠すサラが可愛くて、リアムは彼女の顔を覗き込んだ。
「...俺の方が気が気じゃなかった。街の男たちがサラをずっと見ていて...イヤだった。だから、人がいない場所に行きたくて...」
「そんなことないですよ」とサラは笑うが、リアムは妬いているようだった。
「リアム様のことをたくさん知ることができて、うれしいです。どんどん好きになっていきます。騎士団のあなたも、街でのあなたも......私を恋人にしてくれて、ありがとう」
サラがそう言って笑うと、リアムは彼女に口付けをした。
「...俺のほうこそ」
そう言ったリアムは確かに笑っていた。サラは彼の笑顔を見て、幸せを感じていた。
「この笑顔を見られるのは、私の特権ですね」
そう言ってサラはリアムの手を握り、そのまま草の上に二人で寝転んだ。




