笑顔の君に
初デートからしばらく経ったある日。
リアムは国王ルイスの剣術指導で城を訪れた。
ルイスとリアムが激しく木刀で打ち合う。
「...ッリアム、手加減しすぎだ」
ルイスがそう言いながら木刀を振り下ろすが、リアムは寸前で交わして反撃し、ルイスの剣が弾かれる。
「...ここまでだな」
降参のポーズをとったルイスは「手を抜かれてもお前には勝てないな」と笑った。
国王であるルイスは本来なら剣の鍛錬は必要ない。しかしサラが幼い頃に誘拐されそうになったことで、兄として妹を守らなければと剣術を学ぶようになったのだ。
リアムはルイスのことを心から尊敬していた。ルイスとサラの両親である先王と妃は、五年前に立て続けに病死し、ルイスが国王に即位した。それからはずっと、自分と二つしか年が違わない彼がこの国の国王であり続けているのだ。
リアムが15歳で騎士団に入団したとき、ルイスは17歳。まだ年相応の青年だった。リアムが全く笑わないので、「面白いヤツ」だと気に入り、さまざまなイタズラをしかけては笑わせようとしていた。
そんなルイスも即位してからは、一国を背負う王として大人びたと思う。サラのことに関しては少し過干渉な兄だが。
鍛錬用の木刀を置いて、リアムとルイスは息を切らして座り込んだ。一時間近くの激しい打ち合いが終わって二人は汗だくになっていた。
「また負けた...負けっぱなしだな」
「当たり前だ。騎士団が国王より弱かったら困るだろ」
「...なあ、リアム。サラのことは、本気か?」
ルイスの真面目な表情に、リアムの顔も引き締まる。
「あぁ、本気だ。俺では身分が釣り合わないこともわかっている。でも...俺が彼女を幸せにしたい。彼女を何よりも大切にしたい」
そう答えると、ルイスはリアムに告げた。
「...そうか。よしっ、じゃあ早く結婚しないとな」
「は?」
「なんだよ、怖気付いてるのか?早くサラを王家から降嫁させないと、また次の婚約者が現れるぞ」
リアムはサラの婚約者であった隣国の王子を思い出した。また、彼女に婚約者ができてしまったら...そう思うと胸が焼かれるような感覚に陥った。
「それは...嫌だ」
リアムはそのまま立ち上がり、ルイスに言った。
「...いいんだな?」
ルイスが笑う。
「俺は最初からお前になら妹を任せられるっていったぞ!」
リアムはその足でサラの部屋まで向かった。
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「リアム様!?どうなさったんですか」
突然リアムが現れたことで驚きながらも喜ぶサラ。
「...少し話しませんか」
リアムが息を整えて言った。
二人は城の中庭へと移動する。
「覚えていますか?ここで、リアム様が私のことを好きだって言ってくださって...あの日のことは、ずっと忘れません」
庭に咲く花々を撫でながら、サラが歩く。
その様子を見ながら、リアムが口を開いた。
「...サラ、俺と結婚してくれ」
サラは振り返ってリアムの顔を見た。
「...え、リアム様...今のは...」
言葉が詰まるサラにリアムは跪いて、サラの左手をとった。サラの左手の薬指には、キラキラと光るサファイアの指輪がはめられていた。
サラは涙を流しながらも、「......っはい!」と笑顔で返事をした。ほっとした表情のリアムは立ち上がり、サラを強く抱きしめた。
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落ち着いたサラは、リアムに尋ねた。
「...リアム様、この指輪...」
花の意匠が施された真ん中に青いサファイアがついている指輪が、サラの薬指でキラキラと光る。
「...ずっと、渡そうと思っていたんです。本当はデートのときに渡したかったけど、王女にただの騎士である俺がプロポーズしていいのかって...ずっと考えてて。でも、ルイスが...いや、国王が俺のことを認めてくださると」
「兄様が......」
「必ず、幸せにします」
そう言ってルイスはサラに口付けた。
サラは笑って答えた。
「私だって、リアム様をたくさん笑わせたいです!」
「俺は...もうこの顔が癖で...」
「リアム様は笑ったほうが素敵です。絶対に笑わないなんて、嘘です。だってこんなに私には笑ってくれるもの」
リアムは少し困った顔をしながらも、愛しいサラのことを抱きしめて、確かに微笑んでいた。




