告げてしまった気持ち
走り去ったサラはそのまま自室に駆け込んだ。
「あ"あああ〜!言ってしまったわ......」
サラはベッドで布団にくるまってリアムの顔を思い出していた。ポカンとした顔...きっと突然告白されて驚いたに違いない。
「......どうしよう。気持ちを伝えるつもりはなかったのに、初めてあの方と向き合って好きが止められなかった...」
サラは思い出しては顔が茹でダコのようになり、ベッドでのたうち回っていた。
しばらくすると、ドアがノックされた。
「サラ?大丈夫か?リアムとの見合いの日、今日だったろ?」
兄でヴィステジア王国の国王であるルイスが心配そうに部屋に入ってきた。
布団にくるまるサラのよこにそっと腰掛ける。
「リアムはどうだった?いい男だろ。基本無表情だけど、結構優しい奴なんだよ...」
「お兄様...今日はありがとうございました。無理を言ってリアム様に会わせていただいて...これでもう、隣国に嫁ぐ覚悟ができました」
妹の言葉に兄は悲しげな顔になった。
サラは年明けに隣国の第二王子に嫁ぐことが決まっている。ヴィステジア王国に比べて軍事力は劣るものの、莫大な鉱脈がある隣国とは古くから友好関係の証として、王家同士の婚姻をたびたび結んできた。
「...すまないサラ。お前の気持ちを知っていながら、何もしてやれない俺が憎いだろう。国王として、お前の結婚を利用することを止められない最低な兄だ......」
ルイスが窓にうつる自分を睨みながら言った。
「......そんなことありません。王家に生まれた以上、民のため覚悟はできています」
サラは布団から出てきて真っ直ぐ兄を見て言った。
そんな妹の手を握ることしかできない兄は、己の不甲斐なさに打ちひしがれていた。
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二人が見合いをした日から数日経ち、リアムはいつものように騎士団本部で鍛錬をしていた。騎士団の団員は、自身の魔力を剣や弓、さまざまな武器に流し込み戦う。
リアムは騎士団一の剣術の達人だった。稽古の相手をしていた騎士団の団員たちが次々に木刀で倒されていく。
「......強すぎっす、リアム先輩」
もう動けないといった様子で団員たちが山積みになっていた。
リアムは先日のサラのことを思い出していた。初めて会ったのに自分を見つめる目が優しくて、気づけば彼女のことばかり考えてしまっていた。
「...こんな腑抜けてはダメだ」
リアムの顔に力が入る。今まで女性のことをこんな風に思い返すことなんてなかった。騎士団では寮生活なので、基本的に女性と接することはない。しかし、これまで任務で国王や貴族の護衛についたり、町でマルヴォリオを討伐した際に必ずといっていいほど複数の女性がリアムに言い寄っていた。しかし彼はどんな愛の告白も無表情で突っぱねるのだ。
リアムがタオルで汗を拭ったとき、レイヴンが声をかけた。
「おーい!リアム!国王陛下がお呼びだぞ」
リアムは先日逃げて行ったサラのことを思い出し、「あのことか...」とため息をつくと「わかった」とレイヴンに返事をした。




