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絶対に笑わない騎士は元王女にデレデレです  作者: 海野豹香


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18/19

あのときの傷


リアムが騎士団本部で剣の鍛錬をしていると、団長が彼を呼んだ。


「リアム。お客様が来てるぞ」


「...?」


リアムが見ると、ペイジが団長のマントの後ろからひょっこり顔を出した。


「リアム様!」


団長からペイジを引き渡され、思わぬ再会にリアムは驚く。


「薬、ありがとうございました!兄ちゃんの体調も良くなって、これから村に帰るんだけど...どうしてもお礼をいいたくて」


「...そうか、よかったな」


リアムの大きな手がペイジの頭を撫でる。


「それで...兄ちゃんが、どうしてもあなたに会いたいって」


「...お兄さんが?」


ペイジの視線の先を見ると、一人の男が回廊の先に立っていた。だんだん近づいてくる彼の顔を見て、リアムは固まってしまった。


「...アーノルドか...?」


「...久しぶりだな、リアム」


リアムは信じられないというような表情で、その男を見つめた。



----------



騎士団本部の訓練場で、ペイジは虫を捕まえて遊んでいる。リアムとアーノルドは隣り合い、ペイジの様子を眺めていた。


「......驚いたよ。ペイジが"騎士団のリアム様"って人に薬を買ってもらったって言うから、まさかとは思ったけど、君だったんだな」


「...俺もまさかアーノルドがペイジの兄だとは」


「本物の兄弟って訳じゃないんだ。俺は孤児院を出てから村落で農家の手伝いをしていて...ペイジは今世話になっている家の子なんだ。まあ、こんな体だから手伝いっていってもペイジの世話係みたいなものなんだが」


「そうか......」


「リアム、立派になったな。一緒に孤児院で暮らしたのは...10年以上前だよな」


アーノルドは、リアムがフェリーチェ孤児院に行く前にいた孤児院で僅かな間だが一緒に暮らしていた。風が吹いて、アーノルドの前髪が上がると顔の傷が見えた。


「......その傷、俺が力を制限できなかったときの...」


リアムが苦しそうに言うと、アーノルドは突然笑い飛ばしていった。


「あっはっは、この顔の傷か?これはマルヴォリオにやられたんだ」


「...え?」


「お前の魔力で吹き飛ばされたときは流石に死んだと思ったけど、あのときの傷は綺麗に治ったよ。でも、リアムが孤児院を去ってからしばらくして、マルヴォリオに襲われて...顔の傷はそれでだ」


嘘か本当かはわからなかった。あのとき、魔力が暴発してそばにいたアーノルドや他の子どもたちが怪我を負った。皆が口々にリアムに「化け物!」などと侮蔑の言葉を浴びせた。皆に怖がられながら、冷たい視線を浴びたリアムは、その夜隔離されていた部屋からこっそり抜け出して、ベッドに横たわる包帯だらけのアーノルドに「ごめん」と何度も言った。


「...そう、だったのか...」


「ああ、あのとき怪我した奴らもみんな軽傷で、今も元気でやってるらしいぞ。みんなリアムがいなくなってから、言い過ぎたって反省していた」


リアムは目を瞑って深く息を吐いた。よかったとは言えないが、アーノルドの話に救われた。


「...きちんとお別れできなかったから、きっとリアムは俺たちのこと気にしてるだろうなと思って。あのときは俺も怖くて、お前に酷いことを言ってしまった。すまなかった。...今は騎士団の副団長なんだろ?マルヴォリオをやっつけまくって、俺みたいに苦しむ人を一人でも多く救ってくれ。...もう自分を責めなくていいんだ」


そう言ったアーノルドが、まるで昔一緒に過ごした日の幼い彼の顔に重なった。


リアムは涙を堪えながら、アーノルドを見る。


「...ありがとう」


リアムが震える声で言うと、アーノルドは優しく彼を抱きしめた。遊んでいたペイジが不思議そうな顔をして二人を見ていた。



騎士団本部の前でリアムはアーノルドとペイジを見送る。


「本当に村まで送らなくていいのか?」


「大丈夫だって。お前がくれた薬のおかげで体調もよくなったし、なにより騎士団を引き連れて帰ったら村のみんなが大騒ぎするからな」


「ありがとう、リアム様」


ペイジがリアムに頭を下げた。


「がんばれよ」リアムがペイジとハイタッチする。


「奥さんにもよろしくな」


そう言ってアーノルドとペイジは仲良く帰っていった。



----------



「おかえりなさい」


サラがいつものようにリアムの帰宅をお出迎えすると、何かに気づいた。


「リアム様、何かありましたか?」


サラの言葉にリアムは驚く。


「君は本当によく見抜くな...」


リアムは目を伏して小さく笑うと、今日の出来事をサラに話した。


「ペイジのお兄さんが...そうだったのですね」


サラは驚きつつも、吹っ切れた様子の夫の頬に手を当てて笑顔を見せた。


「リアム様はお優しい方です。もう大丈夫。あなたは正しく力を使えるし、たくさんの人々を守ってくれているのですから」


リアムが添えられたサラの手を握り、優しく笑う。


「...ああ。大好きだ、サラ」


そう言って彼はサラを抱っこして口付けた。












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