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絶対に笑わない騎士は元王女にデレデレです  作者: 海野豹香


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19/19

パパになった騎士は今日も妻と娘にデレる


「サラ!元気だったか!?」


王城の一室、人払いされた部屋で兄妹は久々の再会を喜んだ。


「ルイス兄様!」


抱き合う二人を見つめるリアムに、ルイスがイタズラっぽく言った。


「妬くなよ、リアム。俺だって久々に妹に会えてうれしいんだよ」


「妬いてない」


リアムは真顔で言ったが、どうやら少し顔に出ていたらしい。ルイスがサラとリアムをソファに座らせた。


「お腹もだいぶ目立ってきてるな」


リアムがサラのお腹を見て言う。


「ええ、赤ちゃんも順調に育っています」


「そうか...俺も伯父になるのか......俺も結婚して世継ぎを考えないとなあ...」


「兄様......」


サラが心配そうにルイスを見た。


「なに、心配するな。俺はサラと違って想い人もいないし、なによりこの国の王として自分の責だと割り切っているからな。俺も幸せになるよ」


ルイスはサラを王室から出すとき、反対する大臣たちに自身の結婚を条件に許しを得たらしい。自身が妃を娶り世継ぎをもうければサラが王室に残る理由もないと言って、年の近い貴族の娘とお見合いを始めたという。サラのことがなくても、遅かれ早かれ妃を迎えなければならないとルイスは覚悟を決めていた。


剣の稽古のときにルイスから聞いていたが、サラには絶対に伝わらないようにと言われているので、この話はしていない。きっと真相を知れば、サラは自分のことを責めてしまうだろうから。


明るいルイスにサラは安堵した様子を見せた。その後、久々に城の侍女たちと再会し会話に花が咲いていた。


ルイスが小声でリアムに言う。


「隣国のバランドールだが...先日、王が崩御した。今は次の王座を巡って内政が荒れているらしい」


「バランドール王が?」


リアムはルイスの護衛としてバランドールに行ったことを思い出した。第二王子のカイルはサラの元婚約者であった。


「第一王子に反旗を翻した第二王子派が、内乱を起こしているようだ。...我がヴィステジアも跡目争いなど起こらぬようはやく世継ぎをと大臣たちがうるさくてな...」


「そうだったのか...」


「まあ、ないとは思うが...一応サラも元王族だし、王室を抜けたといっても、このまま世継ぎがいない状態だと生まれてくる子が目をつけられるかもしれない。俺もいい加減、身を固めないとな...サラと子どものこと、頼んだぞ」


ルイスが真剣な表情でリアムに伝えた。リアムは背筋を伸ばして礼をした。



----------



それからしばらく経ち、サラのお腹は大きくなり臨月を迎えた。つい先日ヴィステジア国王であるルイスが妃を迎え、盛大な結婚式が挙げられた。王室を抜けたサラは式には参列できなかったが、後日リアムとともに城でルイスを直接祝った。


ヴィステジア王国の慶事に、王都のあちこちで祭りが開かれている。リアムは今日もお祭り騒ぎが続く町の中を、騎士団の団員を引き連れて見回っていた。


「リアム!!」


レイヴンがかなり焦った様子で走ってやってきた。


「奥さん、産気づいたって...!はやく行ってやれ!!」


レイヴンがリアムの背中を押した。


「っすまない、あとは頼む」


そう言ってリアムはそのまま走って産院に向かった。



----------



リアムが産院につくと、産婆たちが忙しない様子で移動している。サラの妊娠が発覚したとき、リアムはこの国の騎士団の副団長であるし、サラは元王族であることから、万が一サラと子どもが狙われて襲われることがないようにと、騎士団本部に近いこの産院で産むことを決めたのだ。ここなら出産時になにかあっても、リアムや他の騎士団が駆けつけることができる。


部屋の中からサラの苦しそうな声が聞こえた。リアムは拳を握りしめて廊下に立ち尽くす。


もうどれくらい時間が経ったかわからない頃、廊下に立っていたリアムは産声が聞こえてハッと顔を上げた。


部屋から産婆が出てきて通されると、中ではサラが小さな赤ちゃんを抱いて笑っていた。


「リアム様...元気な女の子です」


リアムはサラの顔を見て、涙をこぼした。サラのベッドに項垂れて彼女の手を握る。


「ありがとう、サラ」


リアムはこれまでに見たこともないくらいの笑顔でサラに言った。




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リアムとサラの間に娘が生まれて二年が過ぎようとしていた。ヴィステジア王国では国王夫妻に念願の王子が誕生し、国中が歓喜に包まれていた。


隣国のバランドールでは長らく続いた跡目争いが終わり、第二王子であったカイルが新国王に即位した。その穏やかな人柄から、近隣諸国との仲も良く安定した情勢が続いている。



今日も騎士団本部では、リアムが素早く仕事を終えて足早に家に帰って行った。


「...副団長、変わりましたね」


「あいつも立派な父親だもんなー、奥さんと娘の前ではデレデレらしいぞ」


レイヴンがそう言うと、新しく着任した新米団員たちが「ええっ!?」と愕然とした。


「あの副団長が...デレ...?」


「嘘だろ...」


昼間の鍛錬で鬼の強さを見せていたリアムからは、想像もつかなかった。


レイヴンがやれやれといった顔で「俺らには絶対に笑わないからな、諦めろ」と言って団員たちの肩を叩いた。



----------



「おかえりなさい」「おかえりなしゃい!」


リアムが玄関を開けると、サラと二人の娘であるミアが笑って出迎えた。


「ただいま」


リアムはミアを抱っこして、サラとキスをする。


「む!」ミアが怒って自分の頬も差し出すので、リアムは笑ってミアの頬にキスをした。サラもミアの嫉妬が可愛く思えてクスクス笑う。


それから三人で今日も温かい夕食の時間を共にした。


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