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絶対に笑わない騎士は元王女にデレデレです  作者: 海野豹香


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15/19

目撃されたキス


ヴィステジア王国では、サラがいつものように孤児院で子どもたちに読み書きを教えていた。


「じゃあ、これは読めるかしら?」


子どもたちが元気に答える。


「わかった!『こんにちは』だね!」


「大正解!...あら、そろそろお昼の時間ね。じゃあ、今日はここまでにしましょう」


そう言って片付けをしはじめたとき、マザーが息を切らしてやってきた。


「大変なの!!マシューとリリーが!!」


ただ事ではない雰囲気に、サラはどうしたのか尋ねた。マザーが涙を堪えて話す。


「マシューとリリーが、サラさんとリアムの結婚祝いにって内緒で裏山に花を摘みに行ったみたいで...最近マルヴォリオが裏山に出たから立ち入らないように言っていたのに...もうだいぶ経つのに、まだ戻ってこないの」


「......っ!」


サラの顔が一気に青ざめる。子どもたちにも不安そうな表情が広がり、泣き出す子もいた。


「大丈夫。私が二人を探してくるから、みんなはマザーとここで待っていて!」


サラはマザーの制止の言葉も聞こえないくらいの勢いで裏山に走って行く。はやく二人を見つけないと、マルヴォリオに見つかったらきっと殺されてしまう。サラは必死に木々を掻き分け、二人のことを探した。



しばらく走ると、リリーの声が微かに聞こえる。


「...っぅえーん、だれかー」


「リリー!?」サラは声の方向へ向かって駆け出した。


声のする方を見ると、洞穴の中でうずくまるリリーと、足に怪我をしたマシューが身を寄せ合っていた。


「見つけた!...よかったっ」


サラは二人を抱きしめた。


「ごめん...僕がサラ先生とリアム兄ちゃんに花をプレゼントしようってリリーを誘ったんだ...」


マシューが目に涙を溜めている。足に大きな擦り傷があるが、折れてはなさそうでサラはひとまず安心した。


「...もう大丈夫よ。マシューも、リリーも、ありがとう。私とリアム様のためにがんばったのね」


サラは優しく二人の頭を撫でた。


「さあ、早く帰りましょう!マザーもみんなもすごく心配しているわ。...リリーは歩ける?マシューは私がおんぶするわ」


そう言って立ち上がったそのとき、洞穴の入り口から恐ろしい咆哮が聞こえた。


「...マルヴォリオ!」


二体のマルヴォリオが洞穴の入り口からサラたちに向かって突進してくる。すかさずサラが二人を抱きしめ庇った。


間一髪のその瞬間、サラのつけていた指輪が光り、マルヴォリオたちが弾かれる。


リアム様の......!


うっすらと目を開けたサラはリアムが魔力を込めた指輪を見る。


三人には結界が張られ、マルヴォリオは何度も突進するが弾かれ、様子を伺っていた。



「サラ先生...どうなっちゃうの...」


マシューとリリーが泣きながら縋り付く。


「大丈夫よ。私が絶対に守るから」


防護結界がいつまでもつのかが分からず、サラの額に汗が流れた。マルヴォリオたちが今にも襲いかかろうとタイミングを見計らっている。


「リアム様...っ」


サラが目を瞑ったとき、凄まじい衝撃音とともにマルヴォリオが次々と消滅していった。訳がわからず、サラは目を開けて確認する。


...そこにはなんと剣を振るうリアムの姿があったのだ。


「リアム様!」「リアム兄ちゃん!」


駆けつけた騎士団によって防護結界が解かれると、マシューとリリーは団員たちがすぐさま保護した。



サラに駆け寄ったリアムが彼女をきつく抱きしめる。


「...ッ...サラ......よかった...」


苦しいくらいに抱きしめられたリアムの身体が震えていて、サラは涙が溢れる。


「...リアム様の指輪が守ってくれました」


リアムの顔を見ると、彼も目に涙を溜めていた。


「...少し早く帰れることになったんだ。そしたら騎士団本部で指輪の魔力が発動したのを感じて...マザーから連絡を受けた団員たちと急いできたんだ。...怖い思いをさせてしまってすまない」


「私は大丈夫です。あなたのおかげで傷ひとつありません」


サラは微笑んでリアムの胸に抱きついた。

少し落ち着いたリアムがサラの顔を引き寄せ、静かにキスをした。


それを目撃した騎士団の団員たちは、「え...?あれリアム副団長だよな...?」と目を疑った。マシューとリリーもばっちり二人のキスを見て目を輝かせている。



「...もう、みなさんが見てます!」


サラがリアムの胸を押すが、全く動く気配がない。

リアムが「ずっと会いたかった妻にやっと会えたんだから、これくらい許してくれ」と言ってサラを抱き抱えるとそのまま下山しはじめた。


後に続く団員たちは信じられない光景に唖然としたままついていく。


山を降りると、マザーや孤児院の子どもたちが安堵した表情で出迎えた。


みんなで無事を喜び合うと、騎士団の団員たちにあとの処理を任せて二人は帰路についた。



「...君になにかあったらとずっと不安だった。離れていても、ずっとサラのことばかり考えてしまって、ルイスから早く帰れと言われてしまったんだ」


そんなことを言うリアムが可愛くて、サラは手を繋いだままリアムにキスをしようとした。しかし、つま先立ちしても身長が届かず彼の顎にキスしてしまう。


「リアム様......私も会いたかったです」


リアムが背を屈めて、二人は手を繋いだままキスをした。その後ろ姿を目撃した孤児院の子どもたちの声が遠くから聞こえる。


「あ!チューしてる!!」


そんな声を聞きながら、二人は顔を近づけて笑い合った。






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