幸せな帰り道
リアムとサラが二人で暮らしはじめて半月。
町ではすっかり「美男美女の新婚夫婦」と評判が立っていた。最初はサラに熱い視線を向ける男がいたものの、リアムがサラを連れ添って歩くときに常に牽制しているため、アプローチする怖いもの知らずはいなかった。
「あら、サラちゃん!今日も旦那さんは仕事かい?」
サラはいつものように夕飯の食材を買いに来ていた。
肉屋の女将さんがサラに元気よく話しかける。
「ええ、そうなんです。今日は朝早くからお仕事だったから、元気が出る夕食にしたくて...」
にんまりと笑って「あら〜かわいい〜」とサラを撫で回したあと、いつも通りサービスで山盛りの肉を包んで彼女に渡す。
「今日もたくさんサービスしといたわ♡」
「いつもありがとうございます!」
リアムからは十分すぎるほどの生活費を渡されているが、サラはなるべく倹約的に生活していた。自分が王族であったことで、リアムを困らせたくない。その思いで、なるべく早く一般の暮らしに慣れたかった。
「私も働けたらいいのだけど......」
来月のリアムの誕生日に何かプレゼントを用意したいサラは夕飯を作りながら考えていた。
ふと、あることを思い出した。
「そうだわ!」
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帰宅したリアムと夕食を共に食べながら、サラはある考えを話した。
「私、働いてみようと思うんです。この前、フェリーチェ孤児院を訪問したときに、マザーが孤児院のスタッフが不足しているから人手を紹介してほしいと言われていたんです。でもあのときは王女だったし、身分も偽っていたので......ちゃんと本当のことをお話しして、リアム様の妻として働きたいのですが、ダメでしょうか?」
「働...?大丈夫なのか、ただでさえ家のことを任せきりにしてるのに...無理しなくてもいい。もし何か買いたいものがあるのであればーー」
「ちがうんです!ただ...リアム様の妻としてもっと頑張りたいというか...ほら、フェリーチェ孤児院はリアム様にとっても大事な場所ですから...それに私、もっといろんな経験をしたいんです」
「...?そうか、でも無理だけはするなよ」
「はい!」
こうしてサラはフェリーチェ孤児院で働くことになった。リアムと共に孤児院を訪れ、事情を説明したときはマザーが涙を流して喜んだ。
「...そうだったの、貴女がリアムの...」
そう言ってサラの手をとったマザーは、「リアムをよろしくね」と微笑んだ。
リアムも照れているのか、いつもより耳が赤くなりながら言った。
「サラのことを頼む」
「わかってるわ。こちらこそ、孤児院は忙しいわよ。よろしくね、サラさん」
「はい!よろしくお願いします!」
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マザーが言っていた通り、孤児院では仕事が盛りだくさん。掃除に洗濯、料理に子どもたちの相手。私は読み書きも子どもたちに教えることになった。
大変だけど、やりがいのある仕事。城にいた頃はできなかったことがたくさんできて嬉しい。
「サラ先生ー!!」
子どもたちが集まってきて、本を読んでとせがんできた。みんなで野原に座って本を読んでいると、ひとりの子どもが立ち上がって言う。
「あ!またリアム兄ちゃんが来てる!」
...そうなのだ。リアム様ったら、騎士団のお仕事の都合がつくときはこうして私を送迎してくれるのだ。最初は忙しいだろうからと遠慮したのだが、「俺がサラといたいだけだ」と言われ、私も気恥ずかしく思いながらも嬉しかったので受け入れた。
「えー、じゃあもうサラ先生帰る時間!?リアム兄ちゃんとラブラブなんだろ〜ヒューヒュー!」
茶化してくる声が聞こえたのか、リアム様は子どもたち相手に真顔で言った。
「そうだ。サラ先生は俺の奥さんだから。今日はここまでな」
そう言いつつもリアム様も混ざって子どもたちと少し遊んだあと、私たちはいつものように手を繋いで帰った。
夕焼けのなか、二人の影が伸びてゆく。
「今日もお疲れ様」
「リアム様も騎士団のお勤めお疲れ様でした。怪我はしてないですか?」
「ああ、大丈夫だ」
しばらく歩いていると、リアム様は歩きを止めて私を見た。
「...リアム様?」
「...こんなことをいうのもおかしな気がするが、サラは俺と結婚したことを後悔してないか?王女だった君に、たくさん苦労をかけていると思う。君が好きで、誰にも奪われたくなくて、急にプロポーズをしてしまったから...君がいつか後悔する日がくるんじゃないかと...怖いんだ」
リアム様の真剣な表情が、彼の心の葛藤を物語っていた。
「......後悔なんてするわけない。ずっとあなたが好きだったのに、気持ちも伝えられないまま恋が終わるんだって思ってた。でも、こうして大好きな人と結婚できて...これ以上の幸せなんてないわ」
私がそう言うと、リアム様は私にしか見せない笑顔を見せて、それから私を抱きしめた。
「...愛してるよ、サラ」
耳元で囁く彼の声は優しさで溢れていた。




