008 休養日。いろいろやる 中編
更新が空いてしまい申し訳ありません。これからまた更新していきます
面会が終わり、別の部屋へと通された。ここで購入するかを決めるみたいだ。
「初めて会った時と比べてなかなか成長したな。正直ボコボコにされると思ったが」
おっちゃんから声をかけられる。褒められたってことでいいのかな。
「買いますか?」
単刀直入に問われた。さて、どうしようか。
値段が5000Gだが、これは今持ってる全財産の約半分だ。逆に言うと、まだ買ったとしても5000G以上残るから十分暮らせる。仮に訓練に時間を割いて稼ぎが減っても大丈夫だろう。もし買ったら、"鑑定"を持つ仲間が手に入る。これは相当大きいのではないだろうか。ここを逃したら、次のチャンスはそうそうないだろうし、、、
少々考えたが、買うことに決めた。
「買います」
「分かった。ただ念のため確認だ」
「買ったら返品はできないし、ともに行動するのが原則だ。奴隷側が犯罪を犯す等のことをしない限り買い手と対等な立場にある」
かなり真剣な口調だ。もちろん、と応じる。
「よろしい。手続きがあるから、今日の夕方にまた来てくれ。そこで引き渡しになる。では、代金を頂戴致します」
金貨50枚を数えて取り出す。こっちに来てから一番大きな買い物だ。
「よし、ちゃんと50枚あるな。だが、、、」
おっちゃんが10枚を抜き取って握った。値札通りじゃ足りないってことか?やはり怪しい店じゃないか。
「おい、そんな顔すんなよ。折角サービスしてあげようと思ったのに」
と言って、握りしめたものを返してきた。
「え?」
「ここで再開したのも何かの縁だ。ちょっとオマケしておいてやるよ。申し訳ないと思うなら、彼女のために使ってやんなさい。あ、このことは言いふらすなよ。二人の秘密だ」
「ありがとうございます、おっ様!」
すごく優しい人だおっちゃん呼びじゃ失礼だな。これからはおっ様と呼ばせていただきます。
「様付けとはまた大層だな。ま、これからも頑張れよ、少年」
会計も終わったので店を出よう。
おっちゃん改めおっ様は見送りについてきた。では別れの挨拶だな。
「ありがとうございました」
「おうよ。ただな、ひよっこがあんまり無理した買い物はすんなよ?」
おっ様のサービスは親心から来てたんだな。ありがたや。
店を出ると、もう太陽光がかなり上から差し込んでくる。想定外の出費はあったものの、本題の家を買いに向かう。当然すでに開いているので、即入店。前と同じく店員さんの待つテーブルへ向かう。同じ人だったので、話が早くて助かる。
「では、本日はご契約に来たということですよね」
そう言われ、物件をいくつか示される。すべて前にキープをお願いしたものだ。一人で暮らす前提で選定したのだが、思わぬ同居人ができてしまっている。
「すみません、二人用の家ないですかね...?」
申し訳なさを前面に出した声音で訊いてみる。
「ええ、もちろん構わないですよ。こちらは如何でしょう」
意外なことに店員さんはニコニコ笑顔で対応し、一枚の紙を見せた。
家族向け住居。ギルドからすぐの好立地。二階建てで広く、浴槽付きの風呂有。4000G/月
明らかに売れ残りだろこれ。店頭に出されてる他のやつより高いじゃねえか。
「すみません、他のは...?」
「こちらは如何でしょう!!」
強く推してくる。笑顔の裏に、キープしておいて自由に物件を選ばせるという訳にはいかない、そんな意志が見える。まあそらそうなるよな。
「大きな浴槽があるのが特徴ですよ!」
悩んでいるのを見て、セールスを掛けてくる。ん、浴槽?それは俺の知ってるやつと同じか?
「浴槽の大きさと深さってどれくらいですか」
店員の口角が上がった。買ってくれるという期待を感じる。
「何人かで一緒に入れるくらいの大きさで、肩まで浸かれる深さもありますよ。良質な石材を使っておりますので、入り心地と耐久性は保証できます」
ほう、期待以上だな。宿の風呂に浴槽がなくて、そろそろゆっくり浸かりたい頃合いだよ。
「浸かる習慣はないと思いますが、実は疲労回復にすごくいいんですよ」
俺元日本人だから知ってるんだよな。
「いまご成約いただければ、毎月入浴剤もお付けしますよ。秘境の名湯を楽しめますし、湯治にも」
反応が悪いことに焦ったか、オプションを提示してくる。この世界にも名湯という概念があるのか。
、、、というか、これは買うのがベターじゃないか?どうやらこの世界には銭湯がないようだし、今は構わないにしろこれから数か月シャワーだけというのも嫌だ。水回りも考える必要のある風呂ばかりは自作も厳しいし。
「今この家を買うのであれば、手数料なしで今月分の家賃さえ支払っていただいてすぐ鍵をお渡しできます」
「ちなみに手数料は家賃半月分です。他の物件となるとさすがにお支払いいただくことになりますね」
次々と妥協案を出してくる。風呂が相当不良債権として働いてきたのだろうな。
「家全体も綺麗で丁寧に建てられていると評価され。風呂さえなければ、と何度も言われてきました、、、」
店員さんが愚痴る。きっと俺以外の買い手が見つかるのは相当後のことになるだろうね。なんか愛着が湧いてかわいそうに思えてきたし家賃以外は完璧だから、救ってあげようか。
「じゃあ、買います。ちなみに家賃ってもう少し安くは...」
「わあ、ありがとうございます!すみません、家賃ばっかりはどうにもならないんです。風呂に半分くらいのコストが掛かっているので」
風呂に半分!?そこを抜きにしたら2000G/月で相場あたりまで下がるのかよ。そら誰も買わないよ、、、
もう毎日ゆっくり風呂に浸かるしかないな。何としても元を取らねば。
「納得いただけたようですね。では、こちらにサインと代金をお願いいたします」
契約書にサインをして、金貨40枚を差し出す。半日ですでに100万円近いお金を使ったのか。適正価格のものを購入しているだけだが、こう考えると恐ろしいな。
金額の確認が終わったようで、鍵と入浴剤を渡された。入浴剤は30個らしい。毎日入る想定なんだな。
「入浴剤は余ったらお知らせくださいね」
「元取らないといけないので毎日使いますよ」
「やっぱそうですよね!驚くほど肌もキレイになりますし、ほかにも体に変化が出ますから、楽しみにしてくださいね」
契約を取れたからか、表裏のない話し方になったな。
「お買い上げありがとうございました。鍵は二つありますが、もし足りないようでしたらまたお申し付けください」
退店すると、もうお昼時だ。屋台の立ち並ぶ大通りに出て、食べ歩きをしよう。
大通りには沢山の人がいて、活気にあふれている。全体的に親子連れやご年配の方が多く、同年代の人たちはあまり見当たらない。働いてるんだろう。
「串焼きいかがですかー!」
若いお兄ちゃんが声を張って売り込んでいたので、そちらに向かう。一つ5Gと手ごろな価格だったので購入。
「ありがとうございましたー!」
明るく溌溂とした声で、すごく良い雰囲気だ。いざ、実食
「もぐもぐ、、、ん?」
綺麗に焼かれた肉と野菜にこれまた食欲をそそるタレがかかっていて、とても美味しそうな見た目なのだが、、、苦みがあるというか、なんというか、、、
「正直言って、不味いな」
店を振り返るが、今も買っている人がおり、何人か並んで待っている。周囲で食べている人の表情も見るが、概ね好意的な感じだ。たまたま外れを引いたのだろうか?
他の店でも買って食べてみたが、あまり変わらない。やはり味に違和感がある。日本と同じような味付けだった宿の食事が特殊なだけで、これがこの世界での普通であるようだ。
と、格調高い装飾の屋台が目に入った。同じような串焼きを売っているが、一本30G。実質3000円!?元の世界なら絶対に買わないが、もしかすると望みの味付けかもしれないから一応買う。
「すみません、一本ください」
そう言っただけで、周囲にざわめきが起こる。現地の人から見ても高級品なようだ。
お金を払ったが、串焼きを渡されない。注文を受けてから作るタイプの店だった。頼む、美味しくあってくれよ、、
5分ほど待たされたが、見た目と匂いは別格だ。味はどうだ!
「、、、、、、」
ダメだ、もっと不味い。変な味がより強くなってる。
「美味くねえのなら、もらっても良いか?」
おじさんが話しかけてきた。じゃあ、と手渡す。
「マジ?こんなに美味えのに?正気か?」
自分から聞いてきたのに、いざ渡したら相当戸惑った様子だ。やっぱ味覚が違うんだな。
にしても、どうしたものか、、、
歩きながら思案する。宿の味、というか日本の味は結局見つからなかった。明日から契約した家で暮らすわけで、もう宿の飯は食えない。かといって、あの妙な味を毎日3食は無理だ。調理法を工夫して対処できるならいいが、アレが素材の味でどうしようもないとなると苦しいぞ。とりあえず女将さんに味の秘訣を聞いておかないとな。
気づけばもう城門まで来ていた。少し試したいことがあるのでこれから平原に向かう。気を取り直して午後も頑張ろう!
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