009 休養日後編
平原を進み、周囲の見通しの良い場所についた。今日は戦闘はせず、ある仮説を検証する。
「魔力をうまく制御すれば、スキルがなくても魔法を出せるのでは?」
このことを思いついたのは、地図の魔道具を使った時だ。あの時、俺はスキル”地図”を既に手放していたのに、魔道具から放たれた魔力の動きはスキル使用時とそっくりだった。ということは、スキルは実体がないだけで魔道具と似たような存在であり、逆に魔力の動きさえ合わせられたらスキルも魔道具もなしで同じ結果を得られるのではないだろうか?
まずは、お手本の確認から。魔道具を取り出し、魔力を注ぎ込む。ある程度入れたところで、魔道具が起動した。魔力の流れを感じ取るべく気を配る。魔道具から水平に、全方向へと広がっている感じがする。しかもかなり均一だ。そして、魔力の動きが無くなった。
「終わりか?」
でもまだ地図が頭に浮かばない。と、四方八方から魔力が反射して帰ってきて魔道具へと戻ったようだ。再び魔道具が起動し、そこから頭に情報が入ってきて、地図が浮かび上がった。これで完了か。
ステータス欄を見ると、消費MP量は100だった。続いて、"地図"を取得する。回復魔法が消失したが、また取り直さなきゃいけないのが非常に不便だ。この検証がうまくいけば、今後にかなり希望が持てる。
では、次に”地図”を発動。念じるとすぐMPが消費された。そして魔力が周囲に広がっていく。ここまでは魔道具を使った時の挙動に一致している。そして同じように魔力が帰ってきて、、今度は直接頭に入ってきた。しかしまだ地図が出てこない。集中して魔力の動きを確かめる。順に魔力が配置されて地図を組みあげているようだ。そして地図が完成。こちらも100MP減った。
違う方法で作った二枚の地図を脳内で比較するが、全く同じだ。発動が終わるまでの時間もほぼ同じで、過程も変わらなかった。
「スキルと魔道具は本質的には同じものであり、魔力の動きを制御する」
といったところだろう。では本題だ。先程と同じように魔力が動くよう調整すれば、全く同じ地図を得られるだろうか?
初めに、もう一度”回復魔法”を取得する。これで”地図”はなくなった。ここからさっきの流れを再現していこう。まずは魔力を放出する。これは念じるだけで簡単にできた。次に、魔力を自分の周囲に均一に広げてゆく。魔力を動かすことはできたが、俺自身に纏うようになってしまい外へ広がらない。
「魔力には魔力だ。なんとかなれ!」
仕方がないので、さらに魔力を放出し、上下から圧をかけて対処する。少々強引だが、魔力に同じ動きをさせれば上手くいくと信じる。なんとか広がった。おそらく距離だと数十m程しかなく、スキルが数百m単位の地図を作りあげたことを思うとかなり小さいが、魔力の回収に取り掛かる。念じて返そうとするがうまくいかないので、さらに魔力を出して回転させ、絡めとるイメージで引っ張る。急に魔力が出しづらくなり、頭痛が。いきなりなんだ?しかしどうにか帰還させることにも成功した。余計な魔力が飛びまくっているが、選別して回収する。いよいよ最後の作業だ。魔力を向かわせた方角ごとに整理して並ばせる。すごくしんどいが力を振り絞り作業する。時間はかかったが地図の範囲が狭い分辛うじてできた。
整列が完了すると、頭に地図が浮かぶ。ひとまず試みは成功したようだ。しかし範囲も狭く品質にムラがあり、ちょくちょくノイズが見える。MPを確認すると0になっていて、HPも半分ほど削られていた。初回としては上出来だがかなり多くの課題が残ってしまった。これだとイマイチだ、何か解決手段はないだろうか。
取り急ぎ、MPステは強化しなくては。このために経験値を貯めておいたのにこの体たらくである。少々魔法を舐めてたな。まさかこんなに使うとは。
折角だから次は脳筋でいってみよう。沢山の魔力でブワーってすれば何か上手くいくだろ!
MP:500→5000(+4500)
exp:9879→4379(-4500)
思い切って上げてみた。やはりMP切れが頭痛の原因だったらしく、気分も良くなった。
さあ、リベンジだ。
今度は勢いよく一気に魔力を放出する。総MPが増えた分出力がアップして、だいたい均等に広げることに成功した。射程も伸ばせている。では回収だ。ダメもとで戻ってこいと念じてみるが、そう都合よくはいってくれないか。さっきと同じようにやってもいいのだが、別の方法を試してみる。大量に魔力を出して、円を描くように動かす。しばらくすると、巨大な魔力の渦が形成された。竜巻みたいな感じで、うまく吸ってこい、、お、キタキタキタ!全部こちらへ帰ってきた。完璧だ。
じゃあ地図を組み上げ、、ってオイ。各魔力を一斉に戻した結果バラバラになってるじゃねえか。まるでジグソーパズルで、しかも各ピースの形が同じである。こりゃ骨が折れるぞ、、、
10分後、ようやく完成した。全体像を確認すると、ノイズは無くなっている。ただ、ちょこちょこ繋がりがおかしくなっている部分が、、、並べ間違えたな。ま、地図の範囲は遜色なくなったし、そこ以外の過程はほぼ完成したぞ。ところで、MPは、、、
「減りすぎだあああ!!」
なんと1000も消えていた。絶対に竜巻作戦のせいだ。いい案だと思ったのになあ。
「そもそも、広げる時と違って力でゴリ押せないのが悪いのだ!」
そう愚痴ったが、自分で失笑してしまった。原始人みたいなこと言ってるじゃないか。
"......チカラ..."
"......チカラ..."
無機質で無骨な声が頭に響く。
「チカラハセイギ......チカラデカイケツデキナイモノナド...アッテハナラナイ!!」
「..."魔法"...アゲル...カイケツスル......チカラコソガセイギ...」
魔法:99→4478(+4379)
exp:4379→0(-4379)
少しボーっとしてしまった。気合を入れなおしてもう一回練習するか。
「ん?」
違和感がある。明らかに周囲の魔力が視えるのだ。急にどうした?
嫌な予感がし、ステータスを確かめる。
name:木下翔太
age:18
lv:99[max]
exp:0
所持金:3260G
HP:280 / 500 MP:4000 / 5000
攻撃:1000
速度:700
魔法:4478
スキル 1 / 1[max]
回復魔法lv1
経験値が無くなって、、全て"魔法"に振られている!?俺は絶対にやってないし、"魔法"ステなんて今まで気にしてこなかった。どうしてだよ、、、
「変なことした奴出てこいや!!」
怒りを込めて叫ぶが、もちろん何の解決にもならない。お前自身だろ!!、と怒号が聞こえたような気がするが、そんな訳ないから怒っているのだ。ふざけんなよ。
「脳筋になってもいいが、短気になるのはいかんよ」
というおじいちゃんの言葉をふと思い出した。終わったことは仕方ないと、気持ちを静める。じゃ、最後にもう一回だけやろう。魔力を出して、広げる。
「あれ、動きの滑らかさが段違いだぞ」
ゆっくりと放出された魔力はスムーズに、しかも均一に広がってゆく。頭に描いた通りの動きを、念じるまでもなく実現している。
「かえってこーい」
冗談交じりに呼びかける。すると、主人の声を聞いた飼い犬のように勢いよく帰ってきた。
「え、マジ?、、こほん、魔力よ組みあがれ!」
おふざけで詠唱風にやってみた。
と、頭に入ってきた魔力たちは無意識のうちに自動で集まり、地図を形成してゆく。わずか10秒足らずで、質の高い地図が完成してしまった。スキル、魔道具で作成したものと比較してみる。
「なんかコレ、画質が良いぞ?」
一見すると違いがないのだが、今回作ったものは細部を見ようと拡大した際にそれに応じてより小さな物体まで描写している。森の木々の葉っぱ一つ一つまで判別できる。
最後に、消費MPの確認だ。見てみると、3900になっている。つまり、100しか減ってない。
結論、仮説は正しかった。実験大成功だ!
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やることも終わったので、歩いて街へと戻ってきた。ようやく城門が見えてきた。帰途で振り返っていて気付いたが、成功の要因は断トツで”魔法”ステの強化だったんだよな。経験値が勝手に使われていたことは焦ったが、そのお陰で正解を知れた。すごく不思議で、誰かが気づかせてくれたようにさえ思える。
あ!もう夕方じゃん。
「ノエルちゃんいまいくね~!」
結果が良かったからもういいじゃないか。そんなことよりいよいよ誰かと一緒に暮らすわけだ。ついにぼっち脱却!ランランラ~ン♪
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女神は椅子に座って、時たま下界を覗く。
「あの子、今どんな感じかしら。ん、面白いことをやってるわね。でも、、」
人々はしばしば遠回りし、なかなか正解に辿り着かない。そして、女神はそんな様子を見るのが退屈だ。
「こうすれば一発なのになあ、、。うーむ、仕方ない」
こうして、神は下界に”介入”する。ふつう人々はそれを”神託”と受け取る。
(変なことした奴出てこいや!!)
「コラァ!××××××!!お前自身だろ!!××××××××××!!!!」
女神は案外怒りやすく、口が悪い。
おじいちゃんの言葉、謎すぎる。
ここまでお読みいただきありがとうございます。




