010 ノエルちゃん!
街に入り、奴隷商へと急ぐ。平静でいようと努めているが、やはり表情に出てしまって、門番に怪しまれてしまった。
「変な草でも食べたか?」
そんな感じです、と適当に誤魔化した。
一刻も早くノエルちゃんに会いたいが、先にトイレに入って身だしなみを整えておく。俺は頭脳タイプなのだ。奴隷のオーナーとしてふさわしい格好でないとな。これで完璧だ。
ついに店の前まで来た。すでに心臓バクバクだが、なんとか気分を落ち着かせよう。先に一息ついて、、、
「冷静に、焦らない、冷静、、、」
「何してるニャ?」
「!?!?」
「ショータ様、お待ちしておりました。手続きは全て問題なく完了しましたので、これでお渡しになります」
傍にいるおっ様が言う。
「これからよろしくなの!」
「よろしく!!」
威勢よく挨拶を返す。これからは頼れるお兄さんとして生きていくぞ!
「さっきの驚き方的に無理じゃニャい?」
思考が読まれた!?なんで??
「ふふふ、これが”鑑定”さ」
キリっとしてる。してやったりという感じだな。
「そう言ってもらえると嬉しいニャ」
完全に読めてるんだな。てか会話になってないだろ。俺喋ってないし。
「そうね。そろそろ普通に戻すニャ。実は、もうMPがほとんどないの」
「じゃ、改めてよろしくおねがいします」
そう言って、一礼。
「おやおや、仲良くやっていけそうですな」
おっ様も優しい口調だ。子供を見守っているような。
「これからはどこに向かうの?」
「もう宿に行くよ」
「では、お気をつけてお帰り、、ちょっと待て、ショータ。一旦こっち来い」
ノエルちゃんもついて来ようとしたが、制止された。
近寄ると、小声で話しかけられる。
「冒険者になってから一週間ちょっとでここに来るとは思わなかったぞ。やましいことはしてないようだが、どうやったんだ?」
お小言ですか。
「おいおい、褒めてんだって。ただ、一つ言わせてもらうぞ。お前はもう一人じゃない」
まったくもってその通りだ。
「無理してもいい。嫌われてもいい。何としても彼女を守ってやれ」
まあそらそうでしょ。
「違うんだよ。奴隷はな、主人が死ぬとよく後を追う覚悟で暴走するんだ。自分の身を大事にしろという意味だ」
「えっ」
奴隷の重みにようやく気づいた。
「わかってもらえてよかった。あと、彼女の鑑定能力は本物だ。俺が保証する」
「みんなが心を読めるわけではないんですね」
「そらそうだろ!ただ、MPが少ないんだ。使いどころには気をつけろよ」
「いろいろとありがとうございました」
「まて、、、最後に一つだけ。俺の毛は増えたか?」
はぁ??一応頭を見てみるが、、、少し生えてきてるかな。
「見る限り増えてませんが、少し生えてきてるみたいですよ」
「そうか!ありがとな。ほかの人には聞きづらいんだよ」
嬉しそうで何より。
話も終わったので、ノエルちゃんのところに戻る。では出発するか。
「「ありがとうございました!」」
「ご利用ありがとうございました。これからの活躍も期待しております」
=====
「なに話してたの~?」
大通りに出ると、早速話しかけてきた。
「えーと、何としても守ってやるぞってな」ポンポン
きっぱり言い切った。奴隷とはいえ頭ポンポンまずかったか、、?
「ご主人様、かっこいい!もっとニャ」
「ああ、命を懸け...」
「そっちじゃニャい」
頭を指さしている。え?ポンポンの方かい。恥ずっ。
「かわいいね~」ポンポン
「ありがとう!」
よっぽど気に入ったみたいで、宿につくまでずっとやらされた。いろいろ話したかったが、まあいい。これから時間はたくさんあるからな。
宿に帰ってきた。部屋に戻ろうとすると、女将さんが呼び止めた。
「もう一人泊めるのなら、追加料金だよ。同じ部屋かい?」
「はい。いくらですか」
「それなら30Gでいいよ。で、その娘は奴隷か?ちゃんと守るんだぞ」
「もちろんです。ところで、話があるのですが、、」
家を借りたので明日以降はそちらに住むことと、自炊が不安なので料理を教わりたいことを伝えた。
「料理はあんまり参考にならないと思うな」
「せめて見るだけでも、、、!昼に外食してみたのですが口に合わなくて、、」
「そうか、あの味付けに合わない人が稀にいるからな。ウチのと似た味の店をいくつか紹介しよう。料理も今からするから、荷物を置いて見に来るといい。ただ、多分見てもわからない」
確かに普段ならもうすぐ夕食の時間だ。ほとんどできていて温めるだけといった話なのか?
荷物を置いてきて厨房に入る。てか、リンちゃんが見当たらないな。何をしているのだろう。
中では女将さんが食材と食器を取り出していたが、そのままの格好だし、調理器具が見当たらない。
「あの娘の名は何だい」
「ノエルっていうニャ」
奴隷は置いてきたほうがよかったのかな。
「ちゃんとした扱いをしているようで安心したわ。もし”荷物”として部屋に置いてきていたらブッ飛ばしていたところよ」
あぶねー。奴隷にも配慮できるいい人だなあ。
「じゃ、やるわよ。一瞬だからちゃんと見てなさいね」
そう言って、女将さんは念じ始めた。すると、食材が光りはじめ、、、、料理が完成した。
「「は?」」
二人とも呆然とする。何が起こったんだ。
「これ、”料理”スキルなのよね。一応他も見るかい?」
「魔力の流れを視てもいいですか?」
「あら、あなた魔法使いだったのね。剣士かと思ってたわ。よく見ててね」
集中して見つめる。
「では、やるわね」
女将さんの周囲に魔力が漂う。そして食材に飛んで、、、ん?複雑な動きをしてるぞ。切る、熱する、混ぜるなどなどの工程をすべて同時に行っているみたいだということはわかる。そして、皿に綺麗に盛りつけられて、発動が終了した。
「どうだい」
「同時並行で作業しているみたいですが、習得できる気がしません、、、」
「一つずつ進めて作ることもできるけど、味が変わってしまうわね」
あらら、厳しいな。
「何十年にもわたる継続の成果だから、そう簡単にまねされても困るわよ」
「そうですよね、、、」
「ちなみに家はどこらへんにあるんだい」
引き続き料理しながら、話しかけられた。
「ここから10分くらいですかね」
「なら、朝夜に食べに来るといい。特別料金でやったげる」
やった!
「「ありがとうございます(ニャ)」」
「美味しそうに食べていたからねぇ。特別だよ。折角だからもう食べちゃいなさい。温かいうちに」
お言葉に甘えて、一足先に夕食をいただく。いままでと違い、今日からは二人だ。
「「いただきます」」
今日のメインは肉じゃが風だ。肉から食べてみる。変わらずやわらかいし、温かいのも相まってより美味しいな。ではじゃがいもみたいな芋も、、、、うん、これもホロホロでいい。
「おいしいね、ノエルちゃん」
自分から話しかけていく。
「はい、おいし、、、アチッ」
そうか、猫舌なのか!獣人だもんな。
「ごめん!無理させた。ゆっくりフーフーして食べな」
「ありがとう、ご主人様」
そう言っているものの、結局熱いのを我慢して食べている。仕方ない、アレをやるか!
まずは漬物を食べて小皿を空けます。次に肉じゃがを取り分けます。
「分けたほうが冷めやすいから、これフーフーして食べな」
「はい!」
フーフーしてるが、なんか控えめだな。奥の手を使うしかないな、、、ニヤリ
「一緒にフーフーしてもいい?」
「?、、もちろんいいニャ」
許可を取るとは思わなかったのか、ちょっと戸惑ってるな。でも、筋は通しておかないと今後関係の悪化に繋がりかねないから。というか、元の世界では同意を取るのが当然だったし。
「そろそろ冷めたね。じゃ、あ~ん」
初めてのあ~んだ。何、同意を取ってないって?異世界だからいーんだよそんなの。
「!?、、、ぱく、、、、おいしい!!」
すごく幸せそうな表情だ。ようやく味わえたかな。
「お口に合ったようで何より」
いつのまにか女将さんが後ろにいたようだ。惚気を見られてしまったのは恥ずかしいな。
「さっきの、もう一回やって欲しいニャ」
女将さんの前はちょっと、と言いたい。でも目がキラキラしてるんだもの。叶えてあげるのが男ってもんだ!!
「はい、あ~ん」
ぱく。
「もっかいニャ」
「あ~ん」
ぱく。
「もっかい」
、、、結果全部あ~んすることになってしまった。気に入るとエンドレス。そんな感じだな。流石に周りの視線を感じるから、次からは家でいるときだけにしてもらおう、、、
食べ終わったし部屋に戻ろう。同じベッドで寝て、ちょっとだけスキンシップ、、、なんてないかなあとムフフな妄想をしていると、女将さんに呼ばれた。何の用だ。ノエルちゃんは関係ないみたいで、先に戻っておいてもらう。
「女将さん、どうしました」
「ショータ、あんたあの娘のこと好きなの?」
初めて名前を呼ばれた。割と真剣なトーンだ。
「はい」
正直に答えておく。
「素直に答えてくれてありがとう。別に、奴隷を好きになってもいいし、結婚しても問題ない。ただね、それは相手もあんたを好きだと思っている時だけよ」
それはそうだ。奴隷の権利は買うときに強調された。わざわざ言われるってことは、さっきも本当は嫌がってたのかな、、、
「もちろんさっきじゃれてたのは全く問題ないよ。ちゃんと訊いてたし。あくまで注意喚起ね。例え勇者様のように偉くなっても変わらない」
まあここまでは大丈夫という指針を知れたのは助かるね。
「で、本題はここから。あなたが仮に他の人に好意を抱いても、両方を差異なく愛せますか?」
浮気ってことか?
「いや、生涯一人を愛し続けますよ」
「違う違う。複数人を囲える甲斐性を持てるか聞いてるの」
え?ハーレムってことか。
「悲しませないためには、そうするしかないですよね」
いい人見つけたからポイーは、さすがに倫理なさすぎる。
「ならいいの。もう戻っていいわ。呼び止めて悪かったわね」
「なんで今聞いたんですか?」
「ん~。きっとすぐにわかるわよ」
お読みいただきありがとうございます。




