011 モテ期は唐突に
部屋のすぐ前まで戻ってきた。中から話し声がする。ノエルちゃんはもう友達を作ったのだろうか。早いなあ。
「帰ったよ~」
部屋にはリンちゃんが居た。きっと年齢も近いから気が合うんだろうな。
「ショータさん!なんなんですかこの子は!」
今朝以来の対面だが、少しお怒り気味だ。
「勝手に部屋に上がったくせによく言うニャ」
ノエルちゃんが言い返す。言葉とは裏腹に冗談めいた口調だ。
「なっ、、あなたが悪いんですよ!!」
こちらを指さしてきた。どういうことだよ。俺何もしてないって。
「なんか、、ごめんなさい」
とりあえず謝っておく。心当たりがないか必死に思い出す。あ、あれかな、、
「朝、弁当買わなかったこと怒ってる?」
弁当は特別美味しいことに気づいたから、これからは欠かさず買う予定だが......
「ちーがーうー!!!」
火に油を注いでしまった。ヤバイヤバイどうしよう。
「好きだからニャ」
ノエルちゃんがボソッと呟いた。えーっと、どういう意味だ?
「ちょっ、、何言ってるんですか!!」
リンちゃんがノエルちゃんに飛び掛かる。図星だったのか少し赤面している。
「好きって、、何が?」
まだ状況が呑み込めない。何が起こっている??
「ショータさんのことニャー。可愛い私がやってきたことに嫉妬してるの」
暴れるリンちゃんを抑え込みながら答える。冒険者志望とあって、流石の力だ。
「それは秘密って約束したじゃん!」
動揺か、恥ずかしさなのか砕けた口調になり、声も上ずっている。
「私も大好きニャ!」
こっちは堂々としている。もう完全に優位に立っているな。で、何の話だ、、、ん?
「え???」
脳内でこれまでの出来事が繋がり、ようやく全て分かった。
が、頭が理解を拒む。夢ではなく現実なのか??
二人がくすぐり合い始めたのを尻目に、廊下に出る。一度冷静になりたい。
熱気のある部屋とは対照的に、廊下はシンとしている。窓を開けると、涼しい夜風が吹き込んで頭を冷やしてくれる。結局、事の顛末はどうなのか順に整理しよう。
まず、リンちゃんは俺に好意を抱いていた。そして今日、俺が宿に泊まる最後の日で、恐らく何か伝えようとした。しかし、俺が奴隷を連れてきており、問い質すとそいつも俺が好きだと判明した。それで焦ってる中で思いをバラされて怒った。
こんなところだろうか。なるほど、じゃあどうすればいい?
あまり考えがまとまらないので、気晴らしに散歩に出かける。じっくりと夜の街を見回るのは初めてだ。一つ気づいたのは、何組か一対複数のカップルらしき集団がいることだ。断定はできないが、そういうことだろう。仮に俺が二人ともを愛するとしても、きっとそれほど奇妙には思われない。
だが、日本の価値観だとどうか。道徳的に抵抗は、、ないな。全くないや。愛してくれる人を全員守ろうとして何が悪い。第一ここは異世界だ。日本の話なんざ知らん。女将さんのプッシュもあるし、決まりだな。思い切ってやっちまえ!
心を決めたので、宿に戻る。30分ほどの外出だったが、3分くらいであっさりと考えを纏めてしまった。こっちに来てから即決するようになったというか、雑になったというか、、、
さあ再び部屋の前まで来た。今度は静かだ。きっと待ってくれていたのだろう。
「やるしかない、頑張れ俺!」
小さくつぶやいて、扉を開ける。
「、、、?」
あれ、二人が見当たらない、、って、ベッドで仲良く寝てやがる。近づくが、マジの熟睡らしく起きる気配はない。そんなことある~??
リフレッシュにシャワーを浴びた。水の音で起きるかと思ったが、まったくそんなことはない。色々あって疲れたのでもう寝てしまおう。しかし、ベッドは二人に占有されていて、とても入り込める隙間はない。たとえあったとしても入る度胸はないが。仕方ないので、床で寝る。まあこれくらいどうってことないさ。
「、、ニャ、ニャ」
声を掛けられ目が覚める。ノエルちゃんか。まだ外は暗いけど、何かあった?
「誰か来てるのニャ。出てあげて」
そう言って扉を指さす。じゃあ、と向かう。
「どうしました?」
居たのは女将さんだった。穏やかな表情で一安心。
「ウチの子がベッドで寝ちゃったりしてないか?」
ピッタリ当ててきた。流石だ。
「仰る通りです」
「チッ、、お客様のところで、、、」
舌打ち怖すぎ。
「まあまあ、良いじゃないですか。ゆっくりさせてあげましょうよ」
たたき起こすのは忍びない。可哀そうだろ。
「好きだからか?」
肩を持ったことを気にしたのだろう。直球できた。
「はい」
動じずはっきりと答える。覚悟を決めたからな。
「そうか。なら付き合ってもいいぞ。だが、一つ条件がある」
やったね!条件もちゃんと愛するみたいな感じでしょ。楽勝だ。
「半年以内に、A級に昇格しろ」
「はい!当然です!」
そらそうでしょ。A級ね、、、ん?
(A級!?!?)
動揺したが、なんとか声には出さなかった。
「きついならもう少し優しくしてもいいぞ?」
表情から察したのだろうか、助け舟をだしてくださった。
「大丈夫です!いけます!!」
ムリムリムリムリ!!何返事してんだよ俺。
「そうか、頑張れよ」
そう言って、女将さんは帰っていった。
なんで思ってないのに口が動くんだよ......
とりあえず部屋に戻る。あっ、
「これ、深夜テンションってやつか、、」
気づいたが、時すでに遅し。次からは、大事な話は深夜以外でやろう。
「しんや、てんしょん?」
もうひと眠りしようと寝転がると、ノエルちゃんが話しかけてきた。こっちの話、と誤魔化しておく。
「私も、A級のショータさんじゃないと付き合えないニャ」
まあノエルちゃんとは、という甘えは許さないらしい。えぇ、、
「もちろん!なんならS級にまでなってみせるさ」
頼むからやめてくれー!またテンションが暴走してるって。
「S級ニャー!!」
まあ、喜んでくれるならいいさ(諦め)。
話が終わったからか、強い眠気に襲われる。
(言い過ぎたかもニャ)
ノエルちゃんが呟いたが、よく聞こえなかった。とにかく、絶対になってやる。S級に!
お読みいただきありがとうございます。
これで序章が一区切りになります。上げ始めてから日数が掛かってしまいましたが、それでも数多の作品の中から開いてくださったのはうれしい限りです。
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