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007 休養日。やりたいこと全部やる 前編

 少し早めに起床。今日は急ぎめで行動する。なんでかって?やりたいことが多くて、あと外の飲食店で昼を食べてみたいからだ。リンちゃんが起きてると弁当を買わされてしまうからね。

 朝食を食べに一階へ。早朝でも他の宿泊者が既に何人かいたが、知らない顔ぶれだ。挨拶して少し談笑しているうちに、女将さん自ら配膳。狙い通りリンちゃんはまだ寝ているみたい。珍しく早いね、と言ってどこかへ向かっていった。リンちゃんを起こしにいったのだろうか、でも大丈夫だ。こちらは支度を予め終わらせておいたから、部屋に戻ることなくそのまま出発できる。でも彼女は身だしなみを整えるのに時間がかかる。髪を結んでいるうちにおさらばだ。

 念のため急いで飯を食べ終わった。そのまま宿を出よう。これならリンちゃんも間に合うまい。俺の勝ちだ——

「ショータさ~ん!」

 え!?振り返ると、リンちゃんがこちらへ向かってくる。本当に起きたばかりで、パジャマ姿だし、髪もボサボサだ。めっちゃかわいい、おしゃべりしたい。だが欲求を鋼の意志で振り切って、宿を飛び出した。


 いざ街へ。朝は人通りが少なく、店もまだ開いていないみたいだ。ギルドの前を通るが、まだ閉まっていた。通り過ぎて、大通りを進んで行き不動産屋を目指す。今日の目的の一つは家を契約することだ。宿の予約は今日泊まる分までで、更新しない予定。居心地は良いが、広いスペースで暮らしたいのと、あと自炊もしたい。と、大通りの一角に人が集まっていて、やけに活気がある。近くで見てみると、どうやら市場らしい。野菜や肉、魚など新鮮な食材が売られているが、もうほとんど売られている。宿で食べたことのある食材もいくつか見かけたから、きっとここで仕入れてるんだな。


 大通りからひとつ脇道へ入り、不動産屋へ着いたが、まだ閉まっている。さらに外側の通りの店は開いていそうで、声が聞こえたのでそちらへ向かってみる。

「うわ、ここか、、、」

 行って思い出したが、ここ「夜のお店」ゾーンじゃん。酔った人たちがたくさんいる。怖いので戻ろうとしたら、客引きに手を掴まれる。

「お兄さん、あんたもいい年やし、行ってみたらどうや?」

 優しい口調で話しかけてくるが、目が笑ってない。

「魅力的な店ばっかりやで、試しに入ってみ?」

 言外にどこも入らず帰るのは許さないということが読み取れた。


 周りを見る。まだマシなのはどこだろう。風俗?これは論外だ。占い屋?無難そうだが、すごくぼったくられそう。怪しい壺とか売りつけそう。飲み屋?普通の店に見えるが未成年飲酒はちょっとね、、この世界なら罪に問われなさそうだがでも嫌だなあ。


 最悪の事態は避けられるか、と飲み屋に気持ちが傾いていると、奴隷商の前で手を振る人が見えた。こっちが安全だよ、と伝えているのだろうか。確かに店の前も掃除されていて、クリーンな気配がする。客引きとグルの可能性も十分あるが、ここに賭けてみるか、、最悪戦ってでも逃げよう。


 奴隷商に入店。中も綺麗で、掃除が行き届いている。奴隷を入れている檻はどこかと探すが、見つからない。代わりにボードに人の特徴が記されている。思っていたのと違うな、、、


「やあ、いらっしゃい。って、ショータ君じゃないか」

 誰だ、なんで名前を知ってる!?いや、冒険者登録した時のはg...おっちゃんじゃないか。どうしてここに?


「何か妙なことを考えたりしなかったか?まあいい、店の監査に来てるんだよ。正しく奴隷が扱われてるかを調べるんだ。あと、奴隷の見極めも行ってる」

 相変わらず敏感なおっちゃんはさておき、彼は鑑定能力を活かした仕事をしていたんだな。真っ当な職っぽくて安心した。

「奴隷に扱い方なんてあるんですか?調子に乗らせないようにする的な?」

 気になっていたことを質問する。奴隷って犯罪者とかがなるものだよね?

「お前、なんか勘違いしてないか?奴隷に体罰したり、暴言を吐いたりしてないか確かめるんだよ。当たり前だが奴隷たちにも人権があるんだ。犯罪者とは全く違うの」

 え?全く違うの?

「多分誤解してるよな。最近は多くの人に事実を知ってもらえたと思っていたが、まだそんな人もいるか。じゃあ、まず第一にな、、」

 何か察したみたいだ。おっちゃんが丁寧に説明し始める。


「要は、孤児とかが田舎から出稼ぎをしてるんだ。貴族とかが引き取るんだが、それだと全然足りない。だから、奴隷として冒険者とか市民のところにも行けるようにしている。人身売買に近いが、それでも奴隷は買った人と対等でなければならない」

 奴隷といっても、一般的なイメージとは違って就活の一種といったほうが近い表現だな。ボードに貼ってるのは履歴書で、買い手は採用担当、みたいな。


「わかったみたいだな。話を聞いて思ったかもしれないが、もちろん買う側の人柄も審査しなきゃいけない。これが俺の実際の仕事だ」


「なるほど、じゃあなんでこんな通りに店が?」


「昔はもっと奴隷の扱いが酷かったんだよ、それで教育に悪いものだとみなされてここに。他とは違ってずいぶんとクリーンなものになったんだが、役所には伝わっていないらしい」


「ところで、なぜこんなとこに?きちゃだめだよーって教わらなかったか?」


「まだ不動産屋が開いてなくて、店の開いてそうなところについ。特に教わらなかったんですよね」


「そうか、まあ折角の機会だ。試しに見てみるといい。流石にわかってくれたと思うが、特にやましいことでもないからな?」


 そう言われ、紙を渡された。見るといっても、人を実際に見るのではなく、その紙からどんな人となりかを把握する。パラパラめくって見ていくが、年齢、体格といった仕事上必要なものだけで、容姿についての言及はない。あくまで一緒に過ごす人であり、恋人を買うものではないよってことだな。


 引き続き見るものの、いまいちこれといったものはない。まあ何を求めるかはっきりさせてないから当然か。見るだけで帰ってもいーよとは言われていたので、帰ろうと思ったところ、良さげなのがひとり。


 名前はノエル。15歳の女性。身長は平均くらい。地方の獣人の集落の生まれだが、外で戦うことを希望し奴隷に。冒険者志望で、戦士向き。ともに鍛錬ができるくらいのステータスのある方のみ可。”鑑定”を持っている。金額5000G


 買う側にも条件をつけることができるみたい。俺なら適しているはず。何より、”鑑定”を持っていることが一番魅力的だ。マーガレットさん曰く、”鑑定”は冒険者の必須スキルで、これを持つまでは森へは行くなと。でも俺、スキル一つしかもてないじゃん?それに仲間も欲しかったから、渡りに船なんだよね。


「誰か気になる人は見つかったか?あ、この人ならいま居るが、一度面会してみるか?」


「それならぜひ!ちなみにどれくらいの期間で売れちゃいますかね?」

 ぜひ買いたいところなのだが、まだ懐がこころもとないんだよね、、もちろん人の人生を変えることを考えると妥当な金額なんだろうけど5000はなかなか重い。


「奴隷の皆様にも自由に()()()()()()があるから、確約はできん。今朝入ってきた方で、若くて鑑定を持ってる分、非常に人気が高いだろうな」


 やっぱ人気だよなぁ。後悔しないように一度会ってみよう。


 別室に通された。少し広めの一室だ。特に持ち物検査等はされなかったが、なぜだろうか。部屋にはすでにノエルさんがいた。獣人とのことだが、ほとんど普通の人じゃないか。いや、小さいが猫耳がついてる。まじで!?


「はじめましてニャ。私はノエル。冒険者になりたくて、一緒に鍛錬のできるご主人様を募集してるニャ。見たところ弱そうだニャ...?」

 概ね紙の通りだな。てかなにその語尾!?ホントに獣人じゃん!!感動!!!


「獣人さんなんですね!一応、ある程度戦えますよ、、、?」


「わかってくれたのニャ!でも、戦えることが最優先なの」

 ちょっと嬉しそう。でも、どうやって証明すれば、、、


「装備を渡すから、模擬戦をしてみてはどうだ」

 後ろに控えていたおっちゃんから提案が。いい案だし乗ろうか。ノエルさんも同意したので、やってみることに。お互いに木剣が渡された。


「あなた、治癒魔法は使えるニャ?」

 頷くと、なら全力でかかってこいだってさ。


「装備はつけたままでいいニャ」

 かなり腕に自信があるようだ。一応おっちゃんに目配せするが、特に止める様子はない。まあ彼は俺のステを知っているからな。そのうえでの判断なのだろう。


 テーブルなど部屋の中のものを一通り出して、いざ戦闘。お互いに剣を構える。対人戦は初めてだが、どうしよう。戦い方が全く分からない。

「先手は譲る。思い切って来いニャ」

 なかなか舐められてるな。じゃあ、行かせてもらうとしますか。


 軽く踏み込んで距離を詰める。流石に全力だと大ケガさせてしまいそうなので、2割位の力で。これでもオークをワンパンできるくらいの威力にはなってるはず。


「おらああああああ」

 せめて声だけでも全力感を出して、一閃。


 ノエルさんも受け流そうとするが、力不足だ。大きな一撃を与えることに成功。って、気絶してるじゃん。やりすぎちゃったか、、、、


 急いで近づき、回復魔法を詠唱。"小回復"を4回使うと、ようやく意識が戻った。

「お、思ってた何倍も強いニャ、、」

 念のためもう2回"小回復"を使っておく。もう痛みはない?

「もう大丈夫ニャ。ありがとう」

 危ない危ない、力の調整をしたおかげで大事には至らなかった。でももっと出力を抑える訓練をしないとな。毎回これじゃ鍛錬にならない。


「攻撃能力の高さは分かったニャ。次は私の攻撃を受けて」

 そう言って、斬りかかってくる。オークからしか攻撃を受けたことがないので新鮮だ。素早く後退して受け流す。うん。オークと変わらないな。


「まだまだいくニャ!」

 そう言って踏み込んでくる。これも同じように下がって、、ってさらに踏み込んできた!?強引に受け流したが、少々腕に痛みが。オークとは違って複雑な攻めをしてくるな。


 ノエルさんがさらに斬り込んでくる。全て見極めて避けるが、フェイントを仕掛けてきた。なんとか攻撃を左肩に当てて、致命傷こそ回避。しかし激痛が。実戦なら片腕を失っていたところだ。


「守りはいまいちね。盾をうまく使うといいニャ」

 アドバイスをもらった。素直に従ってみる。盾で攻撃を受けながら、剣で相手を誘導し、動きを封じる。その後はなんとか被弾することなく終えた。


「なるほど、このレベルならいい訓練ができそうニャ。何か質問はあるニャ?」

 特にないと言うと、ノエルさんは下がっていった。どうやらこれで面会は終わりらしい。

長くなってきたのでこのへんで一区切り。

お読みいただきありがとうございます

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