第10話
「各員、気を緩めるな!お互いをカバー出来るように立ち回れ」
第三小隊の隊長は端的に的確に指示を出した。隊員も無駄のない動きである。
「皆さん頑張っていきましょー」
声は張らず力が抜けるような指示であるΔ4sの隊長は軽いジョギングのように先陣を切っていった。
「なめやがって…」
第三小隊の隊員(モブ1)が早朝ランニングと見間違える程に力が抜けているニックに腹を立てて技を繰り出そうとする。
「バカ!早まるな!」
ウィルが叫ぶも既に手遅れだった。
「くらえ!クッソたれΔ4s」
沸点の低い第三小隊の隊員(モブ1)は手をピストルの形にすると指先から高圧力の水を発射した。
この世界では魔法使用時に唱える呪文などはなく、決まった魔法の形がない。即ち、使用者によって使い方が違い、ユニークな人ほど面白い使い方をする。他にも、使用する武器にエンチャントして武器を強化することも可能である。ただし、使用者の魔力量によって威力や効果時間なども違ってくる。今回の第三小隊の隊員は手から高圧力の水鉄砲を発射したわけである。ちなみに、この魔法は一般的なものである(威力や射程なども)。
「ふん、アマチュアめ」
ニックはうっすらと笑うと水鉄砲(高圧力)をギリギリでかわすと地面に手をつける。
「フリーーーーズ」
地面に魔力を注ぐとその地面を経由して沸点の低い隊員(モブ1)の足元で魔法が展開された。
パチパチと氷が地面から出てきて隊員の足を捉える。見事にその隊員は動けなくなってしまった。
「くそ!他の隊員は十分に距離をとれ」
ウィルの指示に沸点の低くない残された2人の隊員は数歩後ろに下がった。
モブ1のせいで崩れた陣形をどう直していこうかウィルが考えていると、沸点の低くない2人の隊員のうち長身のほう(モブ2)はガクンと膝から崩れ落ちた。
ウィルと残った沸点の低くなく背の高くない隊員(モブ3)は倒れた隊員のほうを見た。そこには長い髪で右目が隠れた怪しい男が立っていた。黒い布で口元を隠しているので顔は左目しか見えてない。一方で長身の隊員は失神していた。これは、この怪しい男の闇魔法であるステレス能力でバレずに長身の隊員の後ろを取って手刀でバシッと首筋を叩いたらしい。古典的な技だが接近は見事であった。
「ナイスだ、キャスパー」
ニックが黒い怪しい男をキャスパーと呼んで褒めた。キャスパーは無表情である。と、言うより表情が読めない。
「く、これだからΔ4sは嫌なんだ。戦いにくい」
イラつくウィルを横目に叫び声が聞こえた。
「うわぁあああああああああ!」
「どうした?!」
ウィルが驚いて声のする方を向いた。
突風。人が飛ぶレベルに強い風が残された沸点の低くない身長もそんなに高くない隊員(モブ3)を約10メートル上に吹き飛ばした。
エリカによる風魔法である。エリカの魔力量は一般的な魔法使いとは比べものにならず、軍の中でもトップクラスの魔力量を誇っている。人を飛ばすなど容易いことである。
ちなみに、普通の魔力量だと人が辛うじて自立できないレベルの風である。
しばらくして地上10メートルから隊員が落ちてくる。まともな受け身も取れずに気を失ってしまった。
「くそったれめ、この!」
いいようにやられているウィルがついに怒って腕を大きく横に振った。すると周りには2メートル弱の炎の壁が出来上がった。これで少なくとも接近は出来なくなったと判断したウィルは遠距離攻撃がどこから来てもいいように辺りを警戒する。が。
パチパチと氷が地面に張られる音がしたその時。辺り一帯にあった炎の壁がシュンと音をさせて消えていった。ニックの氷魔法の威力がウィルの炎の壁の力を上回り、炎の壁を消したのであった。
「うそだろぉ」
動揺するウィルにニックが素早く詰め寄る。氷で作った刃がウィルの首元に当てられた。
「俺たちの勝ちだな」
にぃと少年らしく笑うニックに気が緩んだのかウィルもまた、笑ってしまう。
「あぁ、また負けだ」
試合はΔ4sの圧勝であったが第三小隊もΔ4sに対して爪痕は残せている。具体的に言うと、初手で沸点の低い隊員(モブ1)が繰り出した水鉄砲(高圧力)をニックはギリギリ避けていた。ニック『は』。
後ろに立っていたハルトマンの頭にちょうど当たっていたのだ、あの水鉄砲(高圧力)が。おかげでハルトマンは全治1週間の怪我を負ってしまった。自業自得である。
ハルトマンは不注意への罰として1週間後にゲルマンディ軍曹との特別訓練が課せられた。
やっとの戦闘です。魔法って使ってみたいですよね。魔法って呪文がつきものですがこの作品では呪文は不必要な設定になっています。私ね、一度は呪文を考えたんですけどカッコいいのが思いつかなくて諦めたんです(笑)
まぁ、呪文がないってのものありなんじゃないですか?(自己弁護)




