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宗教上の理由  作者: 儀間朝啓
第三章
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その十一

 アタシたちが入ったお店は「ブリテン料理」をうたっている。つまり「イギリス料理」なのだが、この村にはウェールズやスコットランド出身の人も住んでいるので、かの国は「大ブリテン公国」という古めかしい日本語訳にのっとって、「ブリテン」「UK」などの呼び方をするのが通例だそう。

 ブリテンの料理って、アタシはフィッシュ&チップスしか知らないのだけど、それがドンピシャでランチになっている。これは分かりやすい。

 ところがメニューをよく見ると、

「フィッシュ&チップス丼」。


 「丼」。


 さまざまな国の食文化を、上手いこと自分たちの都合に合った形にアレンジするのが日本人は得意だと思う。なんたって、とりあえずご飯に乗せれば美味くなるという無敵のレシピを持っている。

 特に揚げ物は相性抜群。だから昔むかしのコノハナで、揚げられた白身魚とジャガイモを見てひらめいた日本人がいて不思議はない。


 とまれ、思いつきがメニューとして残っているのならそれは美味しいからに決まっている。さっそく注文。

 ランチメニューは他にも、「ブリティッシュカレー」というのがあり、真耶ちゃんはこちらをセレクト。後輩ふたりは、アタシと同じ丼を注文。

 一般にランチタイムの料理は、出てくるのも早い。でもそれでいて、手を抜いている感じはまったくないから、この店、当たりだ。

 ランチはすべてスープ付きで、これはタラの燻製をベースに野菜などをたっぷり入れて煮込んだスコットランド風のスープ、カレンスキンクというもの。なるほど、イングランドの料理だけじゃないからブリテン料理、という理由でもあるのか。

 そしてフィッシュ&チップス丼の魚は、なんと鮭! 確かに鮭の切り身が赤いのはエサのせいで実は白身魚だから、白身魚のフライという定義には合ってる。

 そして、なぜ鮭かといえば、昔の日本でも手に入れやすかったのだと思う。新巻鮭にすれば、山奥の村まで運んで来るのもやりやすかっただろう。

 まず一口。うん、美味しい。カリッと揚がった衣の中からは、ふわっとした歯触りの肉厚の鮭。付け合わせのポテトも外はカリッ、中はふわっと。この火加減は日本流だと思う、きっと。

 真耶ちゃんのカレーも美味しそう。ドーナツのように真ん中を空けて盛られたご飯の真ん中にルーがたっぷり。一口もらってみたら、辛味もあるけど野菜や果物の甘酸っぱさが味を深くしてるカンジ。

 なお、お値段はいずれも五百五十円。安い!


 お昼時だけど、店内はさほど混んでいなくて、年末なのだと実感させられる。世間の人々が仕事を納め、かと言ってまだ観光に出かけるでもない、合い間の時期。

 そんな中、

「カランカラン」

と、店の扉に提げられたベルが鳴り、一人の女性が入って来る。彼女はこちらのテーブルに気づくと、

「こんにちはー、真耶さん」

と、声を掛けてきた。真耶ちゃんが手を振りながら挨拶を返す。

「あ、楓ちゃん、こんにちはー」。


 そうそう。彼女こと板谷楓さんは村のコミュニティ放送局、このはなFMの人気DJ。そして真耶ちゃんの中学校の後輩。

 生放送のスタジオも広場に面しているので、真耶ちゃんが地元っ子たちの歓迎を受けているのも、このお店に入るのも、見えていたのだろう。

 もちろん真耶ちゃんも楓ちゃんとは仲が良いし、アタシと彼女も面識がある。だからすぐに空いている椅子を引いて、

「一緒に食べよ?」

と誘う。

 「ありがとうございます、お邪魔しまーす」

と言って着席する楓さん。

「こんにちは、私、覚えてますか?」

アタシがそう尋ねると、楓さんは笑顔で、

「はいもちろん。真耶さんと一緒にピュアピアショーをされてるんですよね? 夏以来ですよね、でも何年前なんだろ……」

よく覚えてくれてる、嬉しい。あとお陰でそこからの話もスムーズに進み、

「で、この子達は、私と真耶ちゃんの、ピュアピアの後輩で……」

あっという間に、アタシ達全員が打ち解けた。


 そもそも、女子が五人集まった日には会話の花が咲きまくってしまうのは当然のこと。年末ゆえに店内がすいているのをいいことに、つい長居をしてしまった。

 さらに、

「希和子さんたち、家族旅行ですよね? もし良かったら、夜もご一緒しませんか?」

と、今夜の予定まで決まったのだった。

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