パーティ結成
俺はそのアテに会いにAクラスに向かった。
そう、俺が戦う時は呼ぶと約束していたカイルだ。
「ちょっといいか?」
「おうおうおうおう、ちょっと顔貸せや!」
カイルに声をかけるやいなや、強引に外へと連れ出された。
「今のはいくらなんでも無理矢理感が凄かったぞ」
「お前と組んでるって知られるのは後ろめたさがあってな。で、何の用事だ? バトルか?」
「ああ、バトルだ」
願っていた機会が得られると知り、カイルは上機嫌になった。
「いいじゃねえか。相手は誰なんだ?」
「レッドドラゴンだ」
「お、おお! 相手にとって不足はねえな! 他にも何人かAクラスから誘って行くか?」
「いや、これで全員だ」
「……全員というのは、えーっとそこのお嬢さん方のことか?」
「何よ失礼なヤツね。本当にコイツ強いの?」
「言うねえ。これでもAクラスだぜ? でも、同じクラスじゃないってことは、……上級生か?」
「残念ながら同級生のFクラスよ」
「ウチも同じく」
「……俺とテオとFクラスのお嬢さんが2人」
カイルは大きくため息をついた。
「あのなあ、確かに強いヤツと戦う場は欲しい。でも、わざわざ死にに急ぐのは希望してねえぞ」
「ほらね。こんなヘナチョコ誘ったって役に立たなそうじゃない」
「あんだと!? いいか、レッドドラゴンってのは、そりゃもう恐ろしい存在なんだ。俺だって1人じゃ倒せねえ。なのに、お前らみたいな足手纏いを守りながらじゃ勝てるもんも勝てねえの!」
ちゃんと守ってやろうと考えてるあたり、やはりコイツは良いヤツだな。
だが、この2人はただのFクラスではない。
「紹介してなかったが、アイナは身体能力だけなら学園の中でもトップクラスだ。さらにリマの治癒能力は学園だけじゃなく王国でもトップクラスだ」
「いやいや、なんでそんなやつらがFにいるんだよ」
「まー、そこはミステリアスな乙女の秘密っちゅーことでよろしく!」
そんなリマの適当な回答では、カイルはまだ信じきれていないようだ。
「特殊な事例だから、説明はできないが、足手纏いにはならないことは俺が保証する。だが、どうしても無理だと判断したら、これを使え」
緊急帰還用の指輪型のアイテムをカイルに渡す。
念のため同じものをアイナとリマにも渡している。
高価なアイテムだから、本当は使いたくはないところだが、万が一にも死なれたら困るからな。
「これ貰えるのか?」
「使わなかったら返せよ」
「ちっ、ケチくせーな。まあ、お前の覚悟は伝わったぜ」
なんとかカイルも渋々このパーティで行くとこを承諾した。
今回のキーパーソンだったので、断られなくて一安心だ。
正直な評価で言えば、カイルの戦闘力はそれほど高くない。
いや、一般的な基準から言えば、充分以上に高いのは間違いないのだが、俺と2人でレッドドラゴンを倒すのに充分かと言うと、そのレベルではない。
だが、期待している点が3つある。
1つは頭の良さだ。
アイナたちがFクラスだという理由だけで、普通ならばNOと言うだろう。
だが、カイルは自分の頭で考える能力があるため、偏見も少ないと期待した。
2つ目は貪欲さだ。
俺と手を組んででも、上り詰めるという意思は今回の戦いでは重要な力になるだろう。
レッドドラゴンに4人で挑むこともチャンスと捉えて乗ってくれたのもそのためだろう。
そして、3つ目は俺にとって最も重要なポイントだ。
カイルには俺の代わりに次世代の希望になってもらいたい。
学園長から提示された条件を飲んだは飲んだが、できれば俺が戦い続けることは避けたい。
このままでは卒業後も戦いの道からは逃れられなくなってしまう。
しかし、俺以外にも同等以上の実績を積めるものがいたらどうだ?
俺が頑張らなくてもソイツに期待は移り変わる。
だから、俺はカイルを俺以上の存在になれるように育てることに決めた。
「さあ、行くと決めたら俺も腹をくくるぜ! お嬢さんたちがアイテム使って逃げるだけの時間は稼いでやるから、安心しろよ」
「はいはい、アンタも足を引っ張らないでよね」
「ウチは戦えんから守ってもらえるのは嬉しいな」
カイルもやる気を振り絞り始めたが、まだ勝てるイメージは湧いていないようだ。
「俺は勝つつもりだからな。カイルもそのつもりで行けよ」
「ああ、もちろん勝つつもりさ。だけど、どうしてもなあ」
いい奴がゆえに、心配してしまうのだろう。
しかし、このままだと連携にも難が出かねない。
「俺はすでに10回以上はレッドドラゴンを倒したことがある」
「なんだ? 急に自慢か?」
「アイナも同じくらいの経験がある」
「……は? さすがに嘘だろ」
アイナは急に視線を向けられて、恥ずかしそうにそっぽを向いた。
どう答えるか悩んでいるようだ。
「……昔の話よ」
「マジかよ……」
「ちなみにリマはレッドドラゴンのブレスを受けて全身火傷を負った人でも治せる」
「いやいやいや、それはさすがに……」
「両手両足が炭になってても大丈夫やけどな!」
リマはウインク付きで親指を立てる。
「……」
「……それは俺も驚きだ」
「リマならできそうだけど、アタシでも信じきれないかも……」
「なんやねん! ええ話やろ! 大船に乗った気でいろや!」
リマのせいで嘘っぽくなってしまったが、これだけの実績があるメンバーだ。
たとえカイルにレッドドラゴンの討伐経験がなかったとしても、俺は勝てると信じている。




