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ドラゴン退治

「早速いろいろと動いてるみたいですね」


今日はテオとしてディーリア学園長のところに来ていた。

学園長には正体もバラしているので、テオでもライアンでも関係ないが、今日の話はテオとしての俺が聞くことに意味がある。


「これから少し忙しくなりそうでして、それで早めに例の条件を満たしておきたいと思っているんですが、何か良い案件はありますか?」


俺が入学時に提示された条件は、卒業までは次世代の期待の星としての責務も果たすこと。

つまりは、人々を安心させるために、定期的に実力を示せるような実績を作れという意味だ。

学園としては、勇者の息子を入学させておいて、全く音沙汰なしとはできない。

育成機関としての存在意義を示すためにも、「勇者の息子はちゃんと成長してますよ」ということを世界に発信していく必要があった。


「ちゃんと探してきましたよ」


そういって学園長が机の上に出したのは冒険者ギルドからの依頼書だった。


ランクA: レッドドラゴンの討伐


ランクAは王国騎士が十人は必要なレベルだ。

普通は学生が受注するような依頼ではない。


「これはパーティを組んでもいいんでしょうか?」

「ええ、今回は他の生徒にも経験を積ませようと思いましてね。4人パーティで挑んでもらえませんか?」


俺やアーロンは別として、普通の生徒に王国騎士ほどの実力はない。

それなのにたった4人で挑めとは、厳しいハードルを設けられたものだ。

だが、幸運にも俺にはアテがあった。


「わかりました。これで実績としては充分だと認めてもらえますか?」

「そう言ってもらえると思ってましたよ。実績としては1ヶ月分ってところかしら」


実績としての1ヶ月とは人々がこのニュースを忘れないだろうという試算だ。

その期間は俺の活動が音沙汰なしでも、問題にはならないだろう。

本当はもう少し欲しいところだが、とりあえず1ヶ月あれば、当面の活動は何とか進められそうだ。

しかし、難易度といい、実績の期間といい絶妙な条件を提示してくるものだ。


「あの、たまに監視の視線を感じるのですが、もしや学園長ですか?」

「あら、バレちゃいましたか。かなり高レベルの隠蔽をしていたんですけどね」


やはり俺の状況は把握していたのか。

ということは、俺が組むであろうパーティも想定済みだろう。

学園長には彼女なりの考えがあるのだろうが、いまだにその意図は見えてこない。


「そんな怖い顔をしないでください? やりやすい道になるように協力してるつもりなんですけどねえ」

「ありがとうございます。信頼してますよ」


気は抜けないが、今の俺には数少ない頼れる大人であるのは間違いない。

この人は敵に回さないように、当分は手のひらの上で踊り続けようじゃないか。

学園長室から退出した俺はその足でパーティメンバーを集めにいった。


「ちょっといいか?」

「あ、テ……えーっと、ど、どなたかお探しですかー?」

「いや、お前だお前」

「あ、アタシは知らない人ですよ?」

「アイナだろ? 何言ってるんだ」

「な、なんでアタシだってわかるのよ!」


コイツはまだ自分のイメチェンが上手くいっていると思っていたのか。


「久しぶりだな。まさかこんなとこで会うとは思ってなかったが」

「う、うん。久しぶり。それで何の用よ!」

「ああ、ちょっとレッドドラゴンを倒しに行かなきゃいけないんだが、協力してくれないか?」

「……アンタねえ。アタシはFクラスよ。そんな大物倒せるわけないじゃない」

「Fクラスだろうが、アイナはアイナだろ?」

「……ごめん、アタシはもう前みたいには戦えないわよ」


アイナは自分には適正がない魔術師を目指している話を打ち明けてくれた。

ライアンとしては聞いていたが、テオとしてはこれが初めて聞くことになる。

もちろん、俺はそれをわかった上で誘いに来ている。

体術を使わなくても、その身体能力が高いのは折り紙付きだ。

攻撃には参加できなくてもサポートとしての活躍は充分に来たいできる。


「事情はわかった。だが、それでもお前が必要なんだ」

「な、何よ……そこまで言うなら行ってあげてもいいけど……」


よし、これで1人ゲットだな。

それともう1人ここのクラスに候補がいる。


「リマ、ちょっといいか?」

「ん? んー、あー、ちょっち今は忙しいな」

「何もしてないように見えるが?」

「蟻が戦ってるのを見てるんや。せやから忙しい」

「いいから来い」


俺はリマの手を引っ張って無理矢理教室の外に連れ出した。


「あー、痛いな、か弱い乙女に何するんや」

「お前そんなキャラだったか?」

「テオとリマは知り合いなの?」

「んー、知り合いっちゅーほどのもんやないやろ。前に会った時は話した記憶もないしな」

「ああ、大した知り合いではないな」

「それならいいんだけど」

「んふふふ、それならええっちゅうのはどういうことやろね」

「う、うるさいわね! ほら、テオが何か用事があるみたいよ!」

「あ、ああ、アイナとレッドドラゴンを討伐しに行くんだが、一緒に来てくれないか?」

「そんなピクニック気分で誘われてもなあ。ま、ええけど」

「いいの!? レッドドラゴンよ?」

「まあ2人がおるなら何とかなるやろ。それにウチがいれば死ぬことはないしな」


リマの治癒能力は間違いなく王国一だ。

これがあるだけで、依頼に失敗する可能性はほぼない。

アイナにリマを守ってもらえさえすれば、この人数でも充分に勝機がある。


「ほんで、あと何人くらい誘うんや? あんまり多いといくらウチでも治しきれないで」

「あと1人だ」

「1人!? 4人でレッドドラゴンを倒そうって言うの?無謀よ!」

「大丈夫だ。俺にアテがある」

「そんなに強い人がこの学園にいるの?」


強い人で選ぶならアーロン生徒会長だろう。

だが、今回必要なのは強さではない。

それにあの生徒会長がついてきてくれるとも思えないしな。

経営にしろ冒険にしろ仲間集めは縁が大切だ。


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