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力とは

「力……?」


自分たちの力のなさを突きつけられたばかりの彼らにとって、その言葉は空虚に響いた。


「そう、みんなで協力すれば望むだけの力を手にすることができるんだ」


俺自身の武力をもって無理矢理に状況を作り出してしまった責任も取りたい。

商売をするにしても、今のままの彼らでは投げやりにやってしまうだけだ。

ならば、まずは彼らの失った尊厳を取り戻すところから、やらなくてはならない。


「はあ……、お前にはわからねえよ。許してやるから、黙って勉強でもしてな」

「みんなはどうして力が欲しいの?」

「あ?んなの魔物を倒したり、決闘で勝つためだろ」

「じゃあ、どうして魔物を倒したり、決闘に勝ちたいの?」

「あああ!もう!うるせえな!!!魔物を倒せば金が貰える、決闘に勝てば金が貰える、当たり前の話だろうが!!」

「その金で何をしたいの?」

「なんだテメエは!ケンカ売ってんのか!?」


先ほどまで落ち込んでいたコニーも流石にイライラが高まったようで、俺に掴みかかってくる。

だが、そんなことで怯む俺ではない。

ライアンとしても、ここで怯む演技などは必要ない。


「そのお金で強い武器や魔道具を買ったり、強くなれる食事をしたり、訓練場に通ったりするんだよね?」

「いいから黙れや!!!」


コニーは拳を俺に振り下ろした。

しかし、俺に届くことはなく、頬の少し手前で止まっている。


「なんだ、これは!」

「これが"力"だよ」


俺の首元ではネックレスが光り輝いている。

攻撃無効化の付与が付いているネックレスだ。

その効果によってコニーの攻撃は俺に当たることなく無効化された。


「ちっ、アイテムかよ。胸糞わりぃ成金野郎だな」


特別な効果が付いている武器やアクセサリーなどの装備品はとても高価なもので通常は手にすることはできない。

俺は魔物を倒してきた過去の実績で少なくない金を貯めているので、こういったアクセサリーを入手することもできている。


「そう、アイテムだ。でも、これを使えば力を手に入れられるでしょ?」

「でも、そんなの俺たちでは買えないぞ」

「それともお前が買ってくれるって言うのか?」

「金があるやつはいいねえ」


他の生徒たちも俺の話に興味を持ち始めたようで、何かとヤジを飛ばしはじめた。

今のところは肯定的な意見はないが、無関心よりは良い傾向だ。


「簡単だよ。お金を稼げばいいんだ」

「だから!金を稼ぐためにはまず力が必要だろうが!!」


この世界で金を稼ぐといえば、魔物を倒すか決闘の賞金を獲得することくらいだ。

それ以外の仕事では大した金が貰えないので、いくら働いたところで強いアイテムなどを買うことはできない。

そのため、強いヤツが金を稼ぎ、その金で高価なアイテムを買い、さらに強くなって稼ぐのが、この世界でのやり方となってしまっている。

でも、強くなくてもお金さえ稼げれば?

高価なアイテムさえ揃えられれば、その力で魔物を倒すことだってできるようになる。

そう、力は金で買うことができる。

金こそが平等に与えることができる平和な力だ。


「大丈夫。僕に任せてくれれば、みんなで稼げるようになるよ」

「はっ、信じらんねえな!」


コニーを筆頭にぞろぞろと教室の外に出て行ってしまった。


「信じてもらえないか……」


急にこんな話をしても胡散臭いと思われてしまっただろう。

今日の決闘は見逃してでも、もっとゆっくりと計画を進めるべきだったか……


「アンタねぇ、金持ちのボンボンの言うことなんて信じてもらえるわけないじゃない。勉強以外にも運動とか人付き合いとか色々学んだ方がいいわよ」

「そう、みたいだね……」


こんな俺にもアイナは慰めるように声をかけてくれた。

嬉しかったが、商売自体に興味があるわけではなさそうだった。

教室に残っているのは最初から今回の決闘には参加していないような武力には興味がない人たちだけだ。

ここから仕切り直すためにはどうするか……


「あのー、稼げるってのは具体的には何をするの?」


俺も諦めていたところだったが、なんと猫耳の女の子が話しかけてくれた。


「無理してコイツに乗ってあげなくてもいいのよ?」

「いえ!もし強くなれる可能性があるなら話だけでも聞かせてもらえればと思いまして」


決闘に参加していなくても武力に興味がないわけじゃないのか!

参加も考えられないほど、自分の力に自信が持てていなかった。

そういう人ほど力への渇望があるのかもしれない。


「ありがとう!えっと、君は」

「カーティ・カーリングです。虎系獣人属で、弱いですが1番得意なのは体術です」

「あら!あなたも体術を使うの?」

「え?アンナさんは魔術師じゃ?」

「……!あ、ああ、そうね。魔術師だから体術は使わないんだけど……そう!知り合いが体術に詳しくてね」


アンナは反射的に体術という言葉に反応してしまったようだ。

なんとも苦しい言い訳だが、本当にコイツは過去のことを隠す気があるのだろうか。


「得意といってもベニヤ板を一枚割れる程度ですが……」

「あ……うん、このクラスだしね……」

「大丈夫だよ。お金を稼ぐのに特に武力は必要ないから」

「そうなんですか!?」


カーティは目を丸くして驚いている。


「どうやって稼ぐのがいいかは人によっても違うから、まずは色々と話を聞かせてほしいんだけど……」


カーティと話を進めようと思っていたが、何やら服の裾を引っ張られる。


「……私も」

「ミーシャが参加するならウチもやな。金に興味はないけどな!」


ミーシャか!

図書室で会った時から思っていたが、やはり俺と同じような目的らしい。

これは力強い協力者が仲間になってくれた。

リマの目的はよくわからないが、仲間は1人でも多い方がいいので、とても助かる。


「えー、みんながやるならアタシも話くらい聞いてあげようかな」


なにやらアイナまでも乗り気になってきているようだ。

そんなに周りの空気に流されやすくて大丈夫かと心配になるが、とにかく仲間は多いに越したことはない。


「みんな、ありがとう!」


最初はどうなることかと思ったが、やれる気がしてきたぞ!

クラスの他のみんなにも信頼してもらうためにも、まずはこのメンバーで実績を作ろう。

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