特典用SS:ルチアとセレスのお料理談義
意外と雑なセレスティーノ。副官は彼の世話を焼くのが大変だったけれど、楽しかったという設定がありました。
旅をするにあたって、宿に泊まらない場合の食事の支度は結構重要です。
石窯もないので調理方法も限られますし、新鮮なミルクや卵や野菜類もないので、保存食でどうにかしなければいけないのです。煮込み料理をしようにも、そう時間をかけられませんし。それが毎日毎食となると、結構頭を困らせるものです。
「どうかしたの?」
わたしがメニューに悩んでいると、天幕を張り終わったセレスさんがやってきます。隊服の上着を脱いで、シャツ姿になっているのがちょっと新鮮ですね!
「今日のご飯、どうしようかと思って」
自宅ならば、グリュエルやポリッジといったお粥や、シチューやスープなどの煮込み料理が主でした。それに庭先で作った野菜のサラダをつけたり、パンを添えたりするんですけど、旅の間はそれはできません。
しかも! しかもですよ? 召し上がる中には王太子殿下がいらっしゃるんですよ! わたしの作った庶民の食事が口に合うかもわかりません。
「なんでもおいしいよ?」
「そういうわけにはいかないんですよ……」
温かいものを食べれるのは嬉しいと殿下はおっしゃっていましたが、殿下が普段召し上がっているものと、わたしが差し上げられるものでは、「温かい」という一点しか優れているところがありません。
「そっか。ごめんね、俺、料理作れなくって。あ、野戦料理くらいはできるんだけどね? こんな手の込んだものは無理だからさ、すごいなって純粋に思うんだ」
「野戦料理?」
「うん、遠征のときにあったかいものが食べたくなったら肉を焼くんだ」
お肉!
わたしは俄然セレスさんの語る野戦料理が気になってきました。どんなものでしょうか。
「セレスさん、よかったらそれ教えてください!」
「そう? でも、肉を捕ってきてもすぐには食べれないしなぁ。数日かかるよ?」
「塩漬け肉ならありますよ?」
わたしは馬車の荷物入れからお肉の塊を取り出しました。結構な塊です。
「胡椒ある?」
「はい」
わたしはお肉と香辛料をセレスさんに渡しました。どういう料理でしょうか。
「塩漬け肉だから塩は省くけど、胡椒をお肉に擦り込むでしょ」
手際よく準備をするセレスさんからは、料理が作れないなんて思えません。
「あとは焚火に放り込む!」
「そのまま放り込んだらまわり炭になっちゃいますから!」
串に刺して炙るのかと思いきや、まさかのワイルド行動です! 前言撤回します。セレスさんはたしかに料理は作れないみたいです。
焦ってとめたわたしに、セレスさんは首をかしげました。
「そういやなんか大きな葉っぱで包んでたかも」
「串焼きでなくて蒸し焼きなんですね」
「串刺してるやつもいたね」
騎士団の野戦料理って、だいぶフリーダムなんですね……。
その日は串焼きにすることにしましたが、普段食べない男性の手料理は、面白い上においしかったです。




