特典用SS:カナリス兄弟の邂逅
ちょっとしたレナートの裏話。
オレとレナートは似ていない兄弟だった。
母親似の弟に、父親似の兄。頭がよく計画的に行動する弟と、短絡的で適当に生きる兄。
喧嘩っ早いオレはよく他人と衝突したが、レナートは誰とでもうまく合わせやっていく奴だった。
オレによる風評被害もあったが、あいつは持ち前の頭脳と協調性で頭角を現していき、同じ騎士という道を選んだのに、片や騎士団長付き副官、片や隊を転々とたらいまわしにされる厄介者というところに着陸する。
そんな感じでまるっきり正反対の二人だったが、何故だか仲は良かった。
レナートはこんなだらしのない兄をそれでも敬愛してくれたし、オレはオレで優秀な弟が自慢であり、可愛かった。
まぁ、同じ両親の下生まれたとしても、生きる道が違ったんだろうと、お互いがお互いを理解していたせいかもしれない。
「相変わらず神出鬼没ですね……まさか旅の途中に現れるとは思いもしませんでした」
「意見が合うな、オレもだよ」
優秀な弟と違って、オレが聖女サマの同行者に選ばれるはずもなかったが、なんの因果か、とある少女の登場によって再び顔を合わせることになった。
旅の途中で立ち寄った街で、オレたちは久しぶりに久闊を叙していた。聖女サマがやってきてからこの方、騎士団長の副官であるレナートは、雑務に忙殺されて会うことさえままならなかったのだ。
「しっかし、久しぶりだよなぁ。おまえ、もう一年もうちに来てないんだぜ? あいつもさみしがってたよ」
「兄夫婦の家に独身の弟が頻繁に通っていたら、それはそれで問題でしょう。義姉さんも困りますよ」
「アーシアはそんなこと気にする女じゃない。弟ができて喜んでいたのに、おまえが来ない~って怒ってるぞ。同じアールタッドにいるんだ。暇なときは来いよ。メシ食おうぜ」
兄弟の気軽さで誘うと、レナートは深々とため息をついた。
「嫌ですよ。兄さんのところは仲が良すぎて、独身の私はあてられるんです」
「仲がいいのはなによりだろうが。ところでおまえの方はそういった話はねぇのか? 中々モテるって噂、耳にしたぞ?」
顔よし将来性よし性格よしと三拍子そろった弟は、〝竜殺しの英雄〟までとはいかないものの、婚活に励むお嬢さんたちにそこそこ人気だと聞く。
「……結婚は、好きな人としたいんです」
「すりゃいいだろが。いねぇのか?」
「いますが、人妻です。彼女は夫と相思相愛のようなので、つけ入る気はありません」
「そりゃ残念だな」
まさか人妻に片恋しているとは思わなかったオレは、かける言葉を失った。
「私は私が大事な人が幸せであれば、それでいいんですよ、兄さん」
「オレはおまえが幸せになるところが見たいんだがな」
人当たりが良く、柔軟性に富む弟は、時に頑固になる。
レナートはオレの言葉に、にこりと笑って答えた。
「私の大事な人たちはみんな幸せですので、私も幸せですよ」




