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精霊使いのお願い  作者: まるあ
番外編
34/34

嫉妬する風

予告(?)していた通り、エルの嫉妬話です。



 ―――イラつく。

 この視線の先でメイが見せる笑顔が、訳も無くイラつく。


 

 赤い髪のオルガとか言うクソガキが、メイの輝く笑顔を隣で見るなど言語道断。

 人間の男に半径1メートル以内に近づくな、とメイにも忠告しているのに。

 人間の男に笑いかけるな、と毎晩のようにメイに熱心に伝えたと言うのに。



 「……全く聞いていないな」



 今晩もメイと話をする必要がありそうだ。

 毎晩のように伝えても聞いていないというのなら、―――今晩は特に念入りに伝えようではないか。



 人間は夜に就寝し、朝に起床するという習慣がある。あまり睡眠を欲しない俺と違い、メイにはきちんとした睡眠が必要だ。

 それだったら、帰宅してすぐに話し合う必要があるか……。


 

 椅子に座り、離れた所からメイを見ながら今日の計画を立てていると、隣から忍び笑いが聞こえてきた。

 フフフ、と漏れ聞こえる声は俺のよく知る、エンジュのものだった。


 エンジュはいつの間にか気配も無く現れ、俺の隣で茶を啜っている。

 この香りはエンジュ特製ブレンドだろう。よく飲む事が出来ると、こればかりは感心できる。

 香りは良いのに、とても渋く舌が痺れる茶だったはずだ。初めて飲んだ時は、毒物かと思い、吐き出した覚えがある。俺の存在した時間の中で、誰かの前で吐き出すなど初めての経験だった。……消し去りたい苦い思い出だ。



 過去の出来事に想いを馳せていると、エンジュが手にしている茶を俺に突き出し、ニヤリと笑った。

 


 「香りは同じですが、コレは渋くないですよ? 私自身も、昔エル様にお出ししたモノはさすがに飲む事は出来ません。……不味いのでね」



 ―――頭をかしげる仕草をするエンジュを前に、凄まじく殺意が湧いたのは言うまでも無い。



 メイの居る建物の中で、事を荒立てるわけにはいかない。

 彼女を不機嫌にさせたら後が大変だ。今、笑顔を振りまいているメイに少し苛立ちながらも、こうして離れているのは彼女に『お願い』をされたからだ。

 朝、家を出る直前に「お願いだから、店に居る時は、絶対に私に近寄らないでね。」と可愛らしい笑顔で言われたら聞かざるを得ないだろう。

 メイを不機嫌にさせたら、一切触れさせてもらえないどころか、会話すらしてもらえない。それはこの間実際に経験した。


 ただ、一言「何だか最近、抱き心地がよくなった」と言っただけだったのに、暫くの間、存在を無視された。

 あの時はこの世の終わりかとさえ感じた……。



 メイが何気にこちらを気にして見ているのに気付き、エンジュに対して芽生えた殺意を今はグッと堪えた。



 「何の用だ? 」



 俺の顔を見たエンジュは「用なんて、ないですよ?」とクツリと口元を上に上げた。

 

 長い年月、エンジュが俺の傍に居たが、未だにコイツの事がよく判らない。

 享楽主義と言うのは見当が付いているが、相当の面倒臭がりというのも知っている。

 「人間の世界に来るのって、面倒なんですよね」と言いながらも、ほぼ毎日こっちに来るのはなぜだ?



 優雅に茶を啜りながら、その香りに酔っているかの様な瞳をしながら、一つの場所を見ているエンジュの視線を追った。

 その視線の先にいたのは、赤い髪のクソガキと談笑しているメイ―――。

 

 まさか。

 まさか―――っ!?


 ガタン、と音を立てながら椅子を蹴り上げる勢いで立ち上がり、余裕の表情をしているエンジュの胸倉を掴む。

 あり得ない、そう頭では考えながらも身体が自然に動く。



 「―――お前っ!! 」



 焦る俺とは逆に、落ち着いて妙な笑顔を浮かべているエンジュ。

 それが、俺の考えを肯定しているような気がして、気に触る。

 まさに殴りかかろうとしたその時、場をメイの声が制した。



 「なにやってんのよっ!! 」



 急いでこちらへ来たのか、僅かに息を乱しながら俺とエンジュの間に入る。

 メイのその小さな手が、華奢な指先が、少しでもエンジュに触れるのが許せなくて性急に抱き寄せた。

 

 抱き寄せたメイの髪に顔をうずめ、その香りに酔いしれる。

 メイを抱きしめる時に、目の端に映ったエンジュの表情は、俺の苛立ちを増幅させるかの様な嘲るものだった。

 

 「ふふふっ。精霊界最悪最強と言われ続けたエアリエル様が、ここまで骨抜きにされるなんて、……そこまで良いのですか?

 ――――手元に置きたくなってきましたよ」


 メイを抱きしめる腕に力がこもる。

 

 今、俺とエンジュの力は均衡している。

 本気で戦えば、時が流れた為に怪我が治らない俺の方が不利になる。


 ―――だが


 渡すものか。

 やっと、手に入れたんだ。

 何も興味を持てなかった俺が唯一興味を持ち続けた、―――愛しい娘(メイ)。 



 「渡さない。 ―――誰にも、だ」

 一触即発の空気を破ったのは、そこ空気を流れさせた本人であるエンジュの気の抜けた笑い声だった。

 エンジュは再びカップに口を付け、何事も無く茶を啜りだした。

 



 「ハァ~~……。フフフッ!! …………冗談ですよ? まぁ、興味はありますけれどね」




 エンジュが何かに興味を持つと、本気でメイを手元に置きかねない。

 苦しがるメイを更にきつく抱きしめ、俺は心に一つの事を決めた。



 ―――今夜、メイに話す事の中に、エンジュと二人にならないと約束させよう。

 


 エンジュは要注意だ……。

 

 

 



 

 

 

最後までご覧いただき、誠にありがとうございました!


さて、某活動報告でも書きましたが、今回の話をもって『精霊使いのお願い』に完結タグを付けさせていただきます。


番外編と銘打って書いていたんですが、ただ単に各登場人物のお話を書きたかったんです^_^;

今までお付き合い頂いて、感謝感謝です(*^_^*)



この続編は宇宙にありますので、心身ともに大人の方は探してみてくださいっ(>_<)

……ただ、今は更新が止まっています。こちらのイメージが崩れる恐れがござます(-_-;)

今連載している別の作品が終わったら再開予定です☆

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