第3話
彼は約1ヶ月くらい誠意を込めて手紙を書き続け、それを直子の自宅の郵便受けに届けに行っていたが、直子からの返事はなかなか来なかった。
そして諦めかけた九月中旬の昼過ぎ、彼の自宅の郵便受けに直子からの手紙が届いたのであった。
彼の誠意が伝わったのであろう。直子からの手紙は長文であり、彼に会っても良いと書かれていた。手紙には直子のラインIDが書かれており、早速登録して文章を送った。彼は返信が来るまでそわそわして何もする気になれなかった。
しばらくして直子からラインで返事が来た。その内容は明日の13時に見舞いに来て欲しいと書かれていた。その返事に彼は嬉しくて仕方がなかった。
翌日の13時に彼は直子の病室に見舞いに行った。
また、直子の病室は2人部屋でカーテンの仕切りがあった。
彼はその日早くに目が覚めてしまい、待ち遠しくて早めのバスに乗り、病院の待合室で長い時間をつぶしていた。
やっと彼は直子に会えて嬉しいのだが、それが素直に声に出せなかった。彼は緊張していたのであったが、徐々にあの頃の二人に戻ったようでな気がした。
一方、直子の方は落ち着いていて、終始会話をリードしてくれた。そして2人はお互いの近況などを話し合っていた。
また、直子の病名を知りたかったが彼は聞くのを躊躇った。後から思えばそれで正解であったと思う。
そして直子は沈黙を怖れるかのように話を続けていた。
昔話に花が咲いて楽しい時間を2人は過ごし、青春の日々を思い出していた。
そしてたちまちに面会時間が終了した。
彼は帰りのバスの中、直子のことを考え、今も直子の事が好きであると確認できたのであった。
次の日も病院に早く着いたので待合室にいると、直子の母がやって来て話を少し話をした。そして直子の病名が膵臓ガンだと教えてくれた。直子本人には既に告知していて、余命は半年程であるとのことであった。
「直子には病名を聞かないであげてね」
そう直子の母は念を押して言って立ち去った。
彼は直子の前では道化師になると決めた。それが彼なりの優しさだと思ったからである。




