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過去の恋愛経験が終わってる俺に、3人のカースト上位女子が恋愛ってもんを教えてくれるらしい  作者: 仁波昼海
3人の転校生

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2/3

爽乃望空①

 ※


 昼休みのチャイムが鳴る。

 担任が教室を出るより早く、あちこちで椅子を引く音が響いた。


「ねぇねぇ、前の学校ってどこだったのー?」

「彼氏いたっ!?」

「最初それ聞いちゃうの!?」


 何人か笑い声が重なり、朝から騒がしかった教室は昼休みになってさらに賑やかになっていた。

 三人の転校生を囲むように人が集まり、その中心では、最初に自己紹介していたギャルっぽい女子が困ったように笑っている。


「ちょ、順番順番!」


 両手を前へ出しながらそう言うと、また周りが笑う。

 まだ半日も経っていないのに、教室の空気へ溶け込むのが妙に早い。俺なんて二ヶ月でこの様だと言うのに、酷い話だ。


 その陽キャギャルの隣では、小柄な転校生が質問されるたび小さく頭を下げ、もう一人の黒髪は落ち着いた様子で男子と話している。正直真ん中がうるさすぎてよく分からないが、二人も二人でしっかりと人が集まっているようだな。


 三人ともタイプは違いそうだが、ただ一つだけ共通していることがあるとするなら、後世二度と関わらないだろうな。という俺の中の消極的思考。関わらないというより関われないの方が正しいのかもしれないという悲しい話は置いといて。


 俺は目立つ彼女たちを横目に財布だけ持って席を立つ。椅子を引く音はもちろん耳に入らないだろう。


 昼休みは売れ残ったパンを買って、アニメとか見ながら過ごす。

 一般人は分かるはずがない。これが高校をよりよく過ごす最適解だと言うことを..。


 教室を出る頃には、転校生たちの姿は人に隠れてほとんど見えなくなっていた。


     ◇


 一階へ降りると、購買の前にはいつも以上の列ができていた。


「うわ……」


 思わず声が漏れる。最後尾は廊下の角を曲がったところだった。

 この時間なら食堂へ行っても似たようなものだろうが、運動したくないので諦めて列へ並ぶ。

 聞き耳など立ててはいないが、誰も彼も昼飯の話ばかりしている。


「今日カレーらしいぞ」

「マジ?」

「食堂行けばよかったかなぁ」


 後ろの方から聞こえてくるそんな会話をぼんやり聞き流していると、少し離れたところからまた笑い声が聞こえてきた。


「えー、どれがおすすめ?」


 気付かれないように、ほんの少しだけ覗くと、さっきギャルの隣で質問攻めにあっていた小柄な転校生が前の方に居た。

 今度はいつの間にできた女子二人の友達と一緒に売り場を覗き込んでいる。


「焼きそばパンと〜」

「クリームパンも!」

「二つ!?」


 体型からは判断できない初日から天晴な食べっぷりに、購買のおばちゃんまで混ざって笑っていた。

 流石としか言いようがないコミュ力。同じ年数生きてきたはずなんだが、俺はどこで道を...。

 ダメだダメだ。こういうのを見ると、たまに変なことを考えてしまう。


 出来るだけ何も考えずに過ごす虚無の時間も案外悪くないかもな、なんて毎回一時期だけ考えたりするけど、趣味に触れたら跡形もなくそんな思考消えるんだよな。


 前にある黒い制服を意味もなく眺め続けながら、自認で哲学的なことを考える。

 五分ほど経った頃には、棚のパンも目に見えて減り始めていた。


「焼きそばパン終わりでーす」

「あー!」


 残念そうな声。

 少し遅れて、また付け足される。


「クリームパンも終わりました〜!」

「えぇ!?」


 また転校生か。虚無感に浸ってる時にその耳を刺すような声はやめて欲しい。


「うそぉ……」


 売り場を覗き込みながら、小さく肩を落とす。

 その様子を見て、おばちゃんが笑う。


「今日は早いのよ。転校生見にみんな来てるんだから」

「私ですか!?」

「違う違う、この学校全体が浮ついてるの」

「よかったぁ」

「でも、少しくらいは私のおかげってことでいいですか?」

「そういうことにしときましょ」

「やった!」


 安心したように胸を撫で下ろす。私ですか!?って俺も一番に聞いてみたい。

 その一つ一つの反応が大きいからなのか、見ていた周りまでつられて笑っていた。


 列はゆっくり進み、ようやく俺の番が近付く。

 いつものことだが、人気どころはほとんどない。残っているのは見慣れないパンばかり。まあ、食えれば何でもいい。


 一番手前にあったパンを手に取り、財布を開く俺の横で、


「んー……」


 転校生は棚の前から動かない。


「決まらない?」


 おばちゃんが声を掛ける。


「全部初めて見るパンなんですよ」

「最後まで残るのは大体そういう子たちだからねぇ」

「あー……なるほど」


 妙に納得したような声だった。そこに他意は感じられない。


 俺は代金を払い、パンを受け取る。

 紙袋を持ち直してその場を離れようとした時、不意に横から視線を感じた。


「ねぇ君」


 小さく呼び止められる。反射的に少しビクッとしてしまった。

 恐る恐る振り向くと、転校生は俺の持っているパンを指差していた。


「それ、おいしいの?」

後半も今日中にあげます!

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