第98話 仲間とはぐれて敵と再会する
……ほんの短い時間、意識を失っていたような気がする。
それがショックによる気絶かパニックをおこして放心状態になっていたのかは分からない。
だが数十秒、あるいは数分間、おれがなにも考えられない状態になっていたのは事実だった。
「うえっ、ぺっ、ぺっ」
口の中に砂が入ってとんでもないことになっている。
全身砂とホコリまみれだ。
あのガルガントとかいう化け物の羽ばたきによって、おれたち人間がここまで積み上げた勝利は吹き飛ばされてしまった。
どれだけ死者が出たのか見当もつかない。多くの住民たちが吹き飛ばされて宙を舞うのを見た。
だがおれはまだ生きている。
あきらめるわけにはいかないぜ。
「おいみんな、生きてるか!」
手でパッパッと砂を払いながら周囲の物陰に声をかける。
返事は、ない。
「おい、まさか……」
死んじまったんじゃ。
言葉にできない不安を胸に秘めながらコソコソと移動する。
仲間たちの姿はなかった。
生きてる人間も死んでる人間もいない。
「はぐれた、か」
ガルガントが羽ばたいた瞬間、おれは自分が生き延びるのに必死だったからな。
仲間たちの行動を見る余裕が全然なかった。
しかもちょっとの間おれはボーっとしていたみたいだから。
自分以外がどんな状態になったのか分からなくなっちまった。
全滅ってことはないと思うけど……。
などと考えていると、ガルガントがデカい足音を響かせながら街にむかって歩きだした。
ズン……! ズン……! ズン……! ズン……!
一歩ごとに小規模の地震みたいな揺れが。
羽ばたけば暴風。
歩けば小地震。
生きた災害みたいな奴だ。
幸か不幸かガルガントはこちらにまったく気づいていない様子。
よーく見ると化け物の頭上に女王が立っていた。
これがホントの陣頭指揮? いやそんなジョークを言うキャラじゃねえか。
ともかくこんな場所にとどまっていても仕方ない。移動しよう。
最悪、水攻めをしていたキャンプ地まで戻れば、生き残りの仲間たちとは合流できるだろう。
途中で合流できればもっといい。
ガルガントに近づくのはさすがに無謀だとおもうので、遠回りして裏口から街に出た。
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当然ながら街の中は大パニックだ。
突然現れた超巨大なアリの化け物。
そいつは人でも家畜でもなんでもバクバク食いつづけて満腹になる気配がまるでない。
あの巨体じゃ『エリクサー』の効き目もうすいようだ。
ときどき思い出したように羽をはばたかせては街をド派手にぶっ壊していく。
地獄だ。
安全な場所なんてどこにもないように思われた。
「こいつはひでえ……」
こんな時スーパーヒーローなら戦ってみんなを助けるんだろう。
だけどおれはそんなんじゃないから。
『エリクサー』なんて特殊能力は持ってるが、それだけで勝てるような奴じゃなさそうだから。
だから情けないかぎりだけど自分の身を守るためだけに逃げ回ることしかしなかった。
おれはさらに走りつづける。
すると、思いもよらぬ奇妙な二人組に出くわした。
「ブヒヒヒィーン!!!」
「こーらー、おとなしくするのー」
見覚えのある二足歩行のウマ野郎があばれている。
そいつの首にしがみついているピンク色の髪をしたドレス姿の少女。
中級天使ジャミス。
そしてたしか超上級天使『夢と幻』のアリスとかいうやつ。
そういえばこいつらもこの国に居たんだっけ……!
やっべえぞ、こんなやつらに襲われたら一瞬で死んじまう。
身を隠すひまもなく、おれはジャミスと目があってしまった。
「ブヒィー! た、助けてくれー!」
「えっ?」
ジャミスはなんとおれに助けを求めてきた。
な、なにごと?




