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ゾンビだらけの終末世界でおれたちわりと無双界隈  作者: 卯月


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第86話 人間の怒りを思い知れ

 そもそもが無理やり誘拐ゆうかいされてきた人々である。

 だがテストに合格して城でぬくぬくと生活できている者はまだいい。

 テストではじかれて外へほうり出された圧倒的多数は、家へ帰ることもできずこの地で奴隷どれいとして生きる道を強要されていた。

 どこもかしこも恨みつらみで満ちている。

 支配階級であるアリたちの弱体化が明らかになったいま、どこかで反乱がおこるのは自然の成り行きだった。


 直接的な暴発は農園でおこった。

 ほんのわずかな給料のために朝から晩まで肉体労働をさせられている、農業奴隷たちが口火くちびを切ったのだ。

 最近のあれやこれやですっかりやる気をなくして仕事をサボっている男がいた。

 それを見つけたアリ兵士がばつとして手槍で彼をたたく。

 普段ならここまでの話だが、今日は違った。

 男は激怒し、アリ兵士を突き飛ばして手槍をうばってしまう。

 そして感情のおもむくままにアリ兵士を突き殺してしまった。


 そこから先は感情のドミノ倒しである。

 日ごろの奴隷労働に対する不満が爆発した人間たちは集団で見張りのアリ兵士たちに襲いかかり、殺害し武器を奪う。

 街中を巡回していたアリたちが鎮圧ちんあつにむかうも多勢に無勢、逆に撃退され人間たちを勢いづかせる結果になった。

 

 こういう時、人のうわさ話が拡散する速度はおどろくほど早い。

 朝の乱闘騒ぎも聞いていた人々はいよいよ本格的にアリVS人間の争いが始まったことを確信する。

 自分たちも、と武器になりそうなものを手にして騒ぎの中に飛び込んでいくものたちが何人も現れた。

 街中から参加者が集まってきていよいよ集団は大きくなっていく。

 人間とはれで生きる動物だ。だからなのか集団になると気が大きくなる。ひとりでいる時よりも強くなったような気分になってしまう。

 だから今。

 単独ではなにもできず、奴隷でいることしかできなかった者たちが集まった今。

 どこにでもいる普通の人間だった人々は、異様な熱気をおびた凶暴な集団へと変貌へんぼうしていた。


 幸か不幸か今日は人間たちにとって攻めやすい場所ができた日だった。

 今朝の地震で壊れた城壁の隙間すきま

 千載一遇せんざいいちぐうのチャンスとはまさにこの事だろう。

 武装した人間たちはあまりにも分かりやすいその弱点に殺到さっとうし、戦闘になった。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「とんでもないことになっちまったな」

「ええ、おれたちはこのスキに逃げましょう」


 おれ、カズヤと鉄男さんは遠くではじまった大騒動に顔色を変えつつも、他人事だと感じていた。

 今日はようやく知り合いたちの避難が終わる日だ。

 最後ということもあって連れていく人数も荷物も多く、こんな時間まで遅れてしまった。

 状況が状況だけにおれたちは街の人たちの戦闘には参加しない。戦えない人たちを何人もつれて戦場に行けるわけないんだ。

 おれの愛車はいま人と荷物がパンパンに押し込まれていて、なんとなく昭和のコメディアニメのような見た目になっている。

 逃げる以外の選択肢を選べるわけがなかった。


「よし、出発しましょう」

「ああ。みんな苦しいだろうが我慢してくれよ!」


 露骨ろこつ積載せきさいオーバーのせいで愛車の動きがいつもより悪い。

 ちょっとしたカーブで車体が大きくかたむく。あやうく横転おうてんしかけた。

 事故ったら本当にシャレにならないので、ノロノロとした超安全運転にするしかない。


 こんな有様ありさまだったもんで、おれたちは逃げることに必死。

 だから気づけなかったんだ。

 おれたちの姿を見ている敵がいたなんて……。

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