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ゾンビだらけの終末世界でおれたちわりと無双界隈  作者: 卯月


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第69話 この街では死すら効率化される

 アリの女王が支配する国。

 ボロボロの城下町でおれたちは半日ほど情報収集をした。

 日が暮れたころ、街はずれの農場から汗にまみれた労働者たちが戻ってくる。

 その中に鉄男さんたちの街からさらわれてきた人物が混ざっていた。

 鉄男さんと同じ年頃の男性。名前は虎児とらじさん。

 虎児さんに連れられて行った先は、誘拐されてきた人たちが住むちた団地だんちだった。


「みんな無事だったか!」

「鉄男!」

「なんでお前生きてんの?」

「ははは、そこからかよお前ら」


 鉄男さんを中心として旧交きゅうこうを温めあう街の人たち。 

 雑談まじりの彼らの会話を要約ようやくするとこうだ。

 彼らは誘拐ゆうかいされて城に連れ込まれたものの、テストで不合格になって城外に出された。

 ゾンビや怪物におそわれる危険を思うと歩いて帰るわけにもいかず、ここで畑仕事はたけしごと家畜かちくの世話をしてその日暮ひぐらしの生活をしていたんだそうな。


「一日働くとコレがもらえるんだ。長時間労働でキツイけどな」


 男の一人がおれたちにコインのような白くて丸い石(?)を見せてくれた。

 大きさは百円玉くらい。でも百円玉硬貨(こうか)にくらべると形も大きさも適当で絵もきざまれていない。

 そして素材がよく分からない。石のような、陶器とうきのような。

 これがこの国のお金なのだという。


「ジルヴァ、これ素材がなんなのか分かるか?」 


 錬金術師なら分かるかもしれない。そう思ってジルヴァに渡したが、彼女はまゆをひそめて断定だんていをさけた。

 

「城壁の建材とおなじに見えるけれど……どうかしらね。持ち帰って分析ぶんせきしてみないと分からないわ」

「そっか、まあそこまでしなくてもイイや」

「はいはーい」


 おれの言葉を合図にジルヴァはお金を元の持ち主へ返す。

 持ち主は美女の顔を間近まぢかに見て鼻の下をのばしていた。

 それを見て女性陣の目つきがキッと厳しくなる。

 どんな状況でも人間はたくましく生きていくんだなあなんて、ふとそう思った。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


 翌朝よくあさ

 おれは朝日に照らされたちょっと衝撃のシーンを目にする。

 大きなアリの群れが、ケガや病気で亡くなってしまった住民たちの死体を運搬うんぱんする光景だ。

 アリたちは、なれた動きで次々と死体を回収しゾロゾロと城へ歩いていく。


「あ、あれは一体なんです……?」


 鉄男さんの知り合いがすぐ横で解説してくれる。


「ここで死んだやつは生まれ変わってアリになるんだ」

「へっ!?」


 生まれ変わるって……それ天使の素材に使われるってだけじゃねーの!?

 おれの基地にもそういう機械があるんだよ、生き物やらなんやらを合成して天使を作る機械が!


「そ、それヤバくないっすか!?」

「そんなこといったって……しょうがねーし……」


 教えてくれた男も納得しているという顔ではなかった。

 テストに合格できず城に入れなかった人間たちは、元の住処すみかに戻ることもできずこの広大な廃墟はいきょで一生働きつづけるしかない。

 そして働けなくなり死んだあとも、人間らしく埋葬まいそうされることはない。

 素材として回収され、兵隊アリとして生まれ変わるのだ。


「おれたちが嫌だって言っても、あいつらが無理やりさ……」


 男の視線の先に、アリの群れをひきいる大男の天使がいた。

 身長は二メートルほど。筋骨隆々のプロレスラーみたいな体つき。

 いかにもパワー系戦士といった面構つらがまえのそいつは、カブトムシのような甲虫の羽とよろいを身につけていた。


「あいつは『女王クイーン』アナスタジアにしたがう三騎士の一人、ドラグスだ。間違っても話しかけたりすんなよ、俺たちなんてあいつからしたら虫ケラみたいなもんなんだからよ、踏みつぶされちまうぜ」

「ドラグス、あいつも三騎士なのか」


 ここに来る直前、アルヴェインとかいう気取った野郎にも会った。

 あともう一人。

 たぶんこいつらを倒さないとおれたちは帰れない。

 そんな予感がした。


 ドラグスの率いるアリたちは回収した人の死体を運んでいく。素材として利用するために。

 この街のシステムはなんて冷酷なんだ、弱者は普通に死ぬこともできないなんて。

 許せないな。

 おれはそう思った。

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