第70話 おれたちもテストを受けてみる
大きな城の正門の横に小さな勝手口がある。
その勝手口から新たな不合格者たちがゾロゾロと出されてきた。
今日出てきた人たちはなんとなく見覚えのある顔ぶれだ。
「みんな! 無事だったか!」
「鉄男さん!」「大原さーん!」
鉄男さんと元の街の人たちが大声で呼びかけて駆け寄っていく。
どうやらさらわれた人たちと再会できたようだ。
ここに来た初日に名も知らぬおっさんが教えてくれたとおり、ただ待っているだけでほとんどの人たちには再会できた。
しかし大原紫織と藤堂朱音の姿はない。
「あの二人はここにはいないの?」
おれの問いに、中から出てきた女の子の一人が答える。
「あの二人は合格だって、ここで結婚して暮らすんだって、中の人が言ってました」
「結婚!?」
おいおいずいぶんと急な話じゃないか。
恋愛や見合いをすっ飛ばしていきなり結婚とはね。
絶対まともな話じゃないぞこれは。
「鉄男さん、これは急がないと……」
「ああ」
鉄男さんはおれの声に大きくうなずく。
「一か八か、俺たちも中に入るしかないな」
「はい」
おれたちは静かに闘志をみなぎらせた。
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テスト待ちの大行列の前までふたたび戻ってきたおれたち。
おれは三人でいっしょに並ぶつもりだったが、ジルヴァがなんだかよく分からないことを言い出した。
「んーじゃ、あたしはひとっ飛び先に行ってこようかなぁ。あたしだけなら顔パスで文句も言われないだろうし」
「えっ、そりゃまあそうかもだけど、ひとっ飛びってなに?」
「こういうことよ。これが『水銀』と呼ばれたあたしの真の姿」
ジルヴァの背中から銀色に輝く羽が飛び出した。
まるで大きな蝶をおもわせる四枚の羽根。
しかし本物の昆虫の羽ではない。
その羽は銀色の液体金属。ジルヴァの体内奥深くに封印されている水銀のような物質で形作られていた。
これが超上級天使の一人『水銀』のメルクリウスの真の姿。
ちなみに白昼堂々、大人数の見守る中である。当然とてつもなく目立った。
こんな所で正体見せんなよ……。
みんなビックリしてるぞ、おれもだけど……。
「んじゃ先に行ってるわね~」
能天気な笑顔でヒラヒラと手を振ると、彼女は一瞬で大空まで飛び上がった。
とんでもないスピード。
おなじ超上級の『偽聖剣』の速さを思い出す。
きっとおなじくらいの速度だ。
あっという間に城壁を飛び越え、城の最も高い所に飛んでいく。
陽光にキラキラと輝く銀色の光はやがて建物の中へ消えていった。
「なんかつくづくとんでもない人だな」
「ですね……」
鉄男さんとおれはぼう然としてしまう。
ジルヴァにむけられた好奇の視線はおれたちにも向けられたが、我慢しながら行列にならぶしかなかった。
二時間近く待たされて、ようやくおれたちの番になる。
鉄男さんは体力テスト。おれは迷ったが、知力テストをうけてみることにした。
「じゃあ、あとでな」
「グッドラック」
おれと鉄男さんはそれぞれ別室に案内される。
知力テストの会場でおれを待っていたのは、見覚えのあるウマ野郎だった。
「あっ」
「あっ」
おたがい同時に声がでる。
アニマルゾンビ軍団を指揮して錬金術研究所をおそった、ビアンカ派のクソウマ公ジャミス。
思いもよらぬ再会におどろきを隠せない俺たち。
「なんでテメーここに居やがる!」
「そりゃこっちのセリフだ女装コスプレイヤー!」
「そ、それは誤解だ! あん時だけだ女装は! テメーのほうこそなんなんだよ!」
「オレ様はバイト中だ! 人生をイチからやり直している真っ最中なんだよ!」
そういやこいつ『偽聖剣』に助けられていっしょに飛んでいったんだよな。
そして『偽聖剣』がここに居るらしいから、こいつもこの地についてきてしまったって感じか。
「……不合格だ」
「えっ」
「不合格だ! 不合格に決まってんだろテメーなんか! とっとと出ていきやがれ!」
「えっちょっちょっと待っ」
「退場ー!!」
アリの群れがワラワラと集まってきて、おれを部屋から追い出そうとする。
「こんなんアリかー!?」
「はいつまんないダジャレ言ったから不合格ー! 二度とくんなボケ!」
「ダジャレじゃねーよ、イテッ、イテッ! くっそー!」
おれはチャンスすら与えられず乱暴に追い出されてしまう。
しばらく待ったが鉄男さんは出てこない。きっとテストに合格したんだ。
ど、ど、どうしよう……?




