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ゾンビだらけの終末世界でおれたちわりと無双界隈  作者: 卯月


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第68話 入城審査の列

 白い巨城の前には、けっこうな数の行列ができていた。

 行列の先には大きな二軒の建物。

 片方はボロボロの衣服をまとったまずしそうな人たちが大量に。

 そしてもう片方にはけっこう見なりの良さそうな人たちが少数ならんでいた。

 なんの行列なのか知らんけど、貧富ひんぷの差で差別されているようだな。


し……じゃないよな」


 えた人たちのために豚汁でも配っているなら感心だが、そういう気配でもない。

 なかに入っていった人たちのほとんどはガッカリした顔で戻ってくる。

 ほんのわずかな数だけ戻ってこないが、その人たちはどうやら城の奥へ入れるらしい。


「なんの行列ですかねこれ?」

「さあな……」


 車内で議論しても答えは出ず、おれたちは周りの人たちに話しかけてみた。


「あのー、この人たちはどうして並んでいるんですか?」

「ああ、あんたら来たばっかりの人たちかい……」

「はいそうなんですよ」


 相手の男はおれたちの姿を上から下までジロジロと値踏ねぶみするように見ながら言う。


「あれは城に入るためにテストを受けているんだ」

「テストですか。へえ」

「天使様に認められればお城の中でなに不自由なく暮らせるらしい」

「ああそれであんなに並ぶんですね」


 受け答えしながらおれはうさん臭い話だなって感じた。

 なに不自由なく暮らせるって、そんなうまい話があるかよ?

 天使側に何のメリットがあるっていうんだ?


「見てのとおり中に入れるのは百人に一人もいるかどうかって感じでよ。オレなんてもう落ちまくってイヤんなっちまったよ」


 男は不潔ふけつな頭をバリバリとかいて苦笑いをうかべる。

 フケが飛ぶのを見ておれはウゲッ、とのけぞったがそれでも質問をつづける。


「ちなみにどんなテストなんです? おれたちにも参加する権利はあるんですよね?」


 男はまたジーっとおれたちを見てから言う。


「頭に自信のある奴は知能テスト。体力に自信がある奴は体力テスト。あと、見た目のいい奴も通れるってウワサだ」

「そうなんですかー」


 ああコイツ自分が何度やっても通れないから、新規参加者を敵視してるんだなきっと。

 だからこんなにジロジロ見てくるんだ。

 うーんと、これ以上につっこんだ会話をしてもいいだろうか?

 まあいいや。虎穴こけつに入らずんば虎子こじを得ず。

 言っちゃえ。


「実はおれたち、街の仲間たちをアリに誘拐ゆうかいされてここまで追って来たんです。なにか知りませんか」

 

 男は手やら顔やらをボリボリかく手をピタリと止めた。


「ああ、そうだったんかい。大変だったろう、よくここまで来れたね」

「ええまあ、なんとか」

「……たぶんだけど、運が良ければっていうか悪ければっていうか、待っていればここで再会できるんじゃないかなあ?」

「えっ」


 待つだけでいいの?


「まあ、ここではいつものことでなあ。さらってきた連中を城の中でテストして、不合格なら外へポイってなモンが天使様たちのやり方なんだよ。オレだって元々はもっと北の街で漁師やってたのにさらわれて来て、今じゃこんなさ」

「えーすっげえ無責任じゃないっすかそれ?」

「しゃーねえな。きたねえ街だが住めばみやこよ。ゾンビに襲われることはねえし死なねえていどにメシは食える」

「そうなんですか」


 おれは長話ながばなしにつき合ってもらったお礼に、かんパンの缶詰かんづめをひとつ彼に贈った。 

 彼は喜びながらおれたちに追加情報をくれる。


「ちなみにその仲間ってのは男かい? だったら今日にでも追い出されてくるかもしれんよ」

「いや、女たちなんですけど……」


 男はピクッ、と表情をくもらせた。


「もしかしてけっこう美人だったりするか?」

「まあ、はい、そこそこ……」


 え、女だとなんかマズいの?


「……あの行列を見ろ、男がかなり多いだろ」


 言われて再確認すると、たしかに男の比率があきらかに多い。


「女のほうが城の中に行きやすいんだ」

「それはどうして?」

「理由なんて知らんよ」


 なんだか雲行くもゆきが怪しくなってきた。


「城で住んでいる女たちに会う方法はないんですか?」

「無いなぁ、たぶん。侵入したらすぐ殺されるし」


 ウーン、とむずかしい顔でうなってしまうおれたち。

 紫織と朱音の二人をブサイクだという奴はたぶん少数派だ。

 試験官がどんなやつか知らないが、採点基準が甘かったら普通にテストを合格してしまうぞ……。


「まっ、そん時はそん時だと思うよ。人生なるようになるって。じゃあな!」


 男は乾パンの缶詰を抱きしめて走り去っていった。

 ぎわは適当だったけど、いい人だったな。

 もうすでに解放されているかもしれないという可能性に期待して、おれたちは周辺を探してみる。

 しかしあいにく紫織と朱音の二人はもちろん、先に誘拐されていた街の住民たちにも会えずじまいだった。

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