第67話 そこは能力主義のディストピア
川を渡ることで一時間程度のショートカットができたのは皮肉というかなんというか。
おれたちは夜明けまでしっかり身を休めてから出発した。
で、途中合流した合体スライムを屋根のうえに乗っけて車を走らせていたところ、意外すぎる協力者たちが現れた。
山林に巣くう野良スライムたちである。
「ピー!」
「ピー!」
木の上や草むらから飛び出してくる小さな野良スライムたち。
けっこう数が多くて運転しながら目視できただけでも30体以上いた。
紫織スライムとの大きな違いは、色がくすんでいて鮮やかじゃないという点。天然の動植物をエサにしているからかな。
『ピッピッピー!』
合体スライムは屋根の上でどことなく偉そうな声を出している。
そして野良スライムたちは偉そうな声に反応して身体をプルプルゆらしていた。
これはもしかして野良スライムたちから王様認定されてしまったという話だろうか。
『ピピッ!』
「ピー!」
なんだかよく分からないコミュニケーションの直後、野良スライムたちは四方に飛び跳ねていった。
合体スライムは我が愛車の屋根にドスンと座って微動だにせず。
まるで玉座で威をはるキングのごとし。
いったいなにが始まるんです……?
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「ここか……!?」
長いような短いような追跡行のはてにたどり着いたのは、想像をはるかにこえる規模の都市だった。
大きさだけだったら世界崩壊前の地方都市と比べても負けないくらい。
はるか遠くに白い巨城の姿が見える。
白い宮殿。白い城壁。白い巨塔。
ファンタジックなデザインの、いかにもなお城だ。
もしかしなくてもあそこが『女王』とかいうここのボスの居所だろう。
一方、城の周辺に広がる広大な都市は無惨なものだった。
ひとことで言うとザ・廃墟。
Z-ウィルスによるゾンビパニックの結果を放置しているとしか思えない状態。
すごい格差を感じた。
光と闇。白と黒。貧と富。その他なんでもいい。
とにかくちょこっと見ただけでとんでもない差が見て取れる。
おれたちは異様な気配に圧倒されてしまったが、しかし逃げるわけにはいかない。
「行ってくれカズヤ。慎重にな」
「はい」
「スライムも、周囲の警戒を怠らないでくれ」
『ピーッ!』
鉄男さんにうながされて、おれたちは街の中に入る。
心底不思議なのは、普通の人間たちをやけにたくさん見かけることだった。
ボロボロの衣服を着た人々が、路上で物々交換などをおこなって当たり前のように生活している。
貧しいながらもここの人々は地に足のついた生活を送っているように見えた。
「どーなってんだこりゃ……?」
おれたちは首をかしげながらさらに先へすすむ。
「なあジルヴァ」
「は~い?」
「ミチコとかいう人はどういう人なんだ。ここの女王様ってことでいいんだよな?」
「ん~、前に話したことでほとんど全部よ? 学者で、上昇志向の塊みたいな女。あんまり仲は良くなかったな~」
「こういう格差社会を作りそうな感じ?」
「ん~」
ジルヴァはしばし虚空を見つめながら熟考。
そして。
「やるかもね。『この社会はおかしい。エリート層が高い税金払って弱者の踏み台になるなんてバカげている』って、そんなことを昔いっていたわ」
「あーそういうタイプか―、なるほど」
自分の力で生きられない奴は〇ね。ってそういう意見もあるよなー。
高収入の人ほどブッ高い税率で搾りとられていたらしいから、嫌になる気持ちは想像できる。
あくまで想像だけね。
「んじゃこの街は弱者切り捨て御免の、超実力主義社会ってことか」
白い巨城の姿がいよいよ視界内を圧迫していく。
もうすぐ到着だ。




