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ゾンビだらけの終末世界でおれたちわりと無双界隈  作者: 卯月


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第65話 女王の国と三人の騎士

「申し遅れました。超上級天使『女王クイーン』アナスタジア様につかえる三騎士の一人、アルヴェインと申します」


 アルヴェインとなのった昆虫男こんちゅうおとこは胸に手を当てジルヴァに一礼した。

 昆虫男という表現をするとグロい外見を連想するかもしれないが、むしろかなりの美形だ。

 ただしはだの色は緑色。ドラゴンボールのザーボンさんみたいな感じといえば伝わるだろうか。

 自分を三騎士と名乗ったってことは、他にもドドリアさんとかキュイさんみたいのが居るって話になるな……。


「アナスタジアなんて名前、知らないんだけど」


 ジルヴァがやや冷たく、警戒心を解かない様子で言い返す。


「あんたもしかしてミチコの家来けらいじゃないの?」


 あからさまに日本人女性っぽい名前が出てきて、おれはつい口をはさんでしまった。


「ミチコ?」

「昔、そう言う名前の昆虫学者が仲間にいたのよ。上昇志向のかたまりみたいな女だったわ」

「へー。虫を媒介ばいかいにしてZ-ウィルスをばらまこうとした、とかそういう役割の人?」

「そうそうそんな感じ」


 とかハエが病原菌を拡散させるってことは実際あるからな。


「オホン」


 話が横にそれてしまったので、騎士アルヴェインは咳払せきばらいをして意識を自分にむけさせた。


「たしかに、わが女王はそのように名乗っていた時期もあったようです。しかしそれは過去のこと。今や北の地に王国をきずき『女王クイーン』アナスタジアと名乗っております」


 目を輝かせて語るアルヴェイン。

 こいつにとってはとーっても素晴らしいことらしい。 

 しかしおれたちからすれば人を拉致らち監禁かんきんして作った女王じょおうみやこだぜ。


 アルヴェインの言葉にすっかり気を取られていたおれたち。そんなおれたちに鉄男さんが耳打みみうちしてくる。


「油断するな、やつの後ろのほうから妙な気配がする。敵が隠れているぞ」


 言われるまで気が付かなかった。

 たしかにアルヴェインのさらに後ろのほう、物陰ものかげの奥でガサゴソと何かがうごめいているような音がする。

 チラチラと影が動いているのも見える。

 これは伏兵ふくへいか。


「ああこれは失礼、お気になさらないでください。あのものたちは別件でここにおります」


 アルヴェインはことも無さげに言う。


「別件ってなんだ?」


 おれの問いに、アルヴェインは答えなかった。

 聞こえたはずだけれど。


「別件ってなによ?」

「我々は任務のためにこの地に参っておりますもので。あなた様にお目通めどおりりかないましたのはまたとない幸運にございます」


 ジルヴァの言葉にはあっさり返答しやがった。

 こ、この野郎、人間風情(ふぜい)とは口もききたくないってか!?

 この気取った騎士にはおれの声も怒り顔もまったく気にする価値がないようで、視線をジルヴァにむけたまま彼女にだけ言葉を送る。


「いかがでしょうメルクリウス様、われらが王国にあなた様を招待させていただけませんか。先日から『偽聖剣』のジーク様も滞在しておられます。その他の方々もいずれいらっしゃる予定となっております」

「……へえ、どうしようかしら」


 ジルヴァは平静をよそおっていた。

 だが衝撃的な情報を前におれたちは内心の動揺どうようをおさえきれない。

 あの『偽聖剣』がこれから向かう敵地にいる。錬金術研究所を無造作に荒らしまくったあいつが!

 しかも他の超上級天使たちも集まってくる予定だと!

 そんな難易度ルナティックの土地に行って、おれたちはさらわれた人々を救出しなければいけないっていうのか。

 

 想像以上の困難に絶句してしまうおれ。

 そこにさらなる追い打ちが襲いかかった。


「おや、うわさをすればなんとやら。同志たちがひと仕事終えてきたようです」


 アルヴェインはそう言って街の外に視線をおくる。

 そこには巨大なアリの軍団と、それらをひきいる昆虫人間の姿が。

 

「紫織! 朱音あかねさん!」


 鉄男さんがさけんだ。

 彼が指さすアリの群れは、人間の若者たちを捕えていた。

 その中にさっきまで一緒にいた紫織と朱音の姿も。

 なんてこった!

 ちょっと離れていたすきに紫織たちまで犠牲ぎせいに!


「水銀のメルクリウス様、私もこれにて失礼いたします。お気が向かれましたらいつでも我らが国にお越しくださいませ。女王もさぞ感激しておむかえすることでしょう」


 羽をひろげ、あっという間に飛び立ってしまうアルヴェイン。

 

「くそっ、待ちやがれ!」


 おれたちも大急ぎで奴らの群れを追う。

 だがやつらはすでに爆走中。

 おれたちは車にもどって、キーをまわして、車の向きを変えて……などと面倒くさい作業で時間を取られてしまう。

 そんなことをしている間に敵はドンドン先に行ってしまい、その場で取り戻すということは不可能だった。

 不幸中の幸いでやつらの足跡あしあとがクッキリ地面に刻まれている。追跡は容易だ。

 だがしかし。

 難易度がとか、どんな手段でとか、そんなことを言っている余裕よゆうが消し飛んでしまった。

 無理でもなんでもこのまま行くしかない。

 今すぐ彼女たちを助けに行くんだ。

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