第57話 帰ってきちまったな
とりあえずお客さんたちに今後のことを聞いてみたところ、「もう危険な旅はしたくない」ということだった。まあそりゃそうだ。
けどこの基地にずっと住んでもらうわけにはいかない。そこまで食料の備蓄は無いし、野菜の生産力だって限界があるんだ。
だからお客さんたちが選ぶべき選択肢はふたつ。
別の土地に移住するか故郷に帰るかだ。
さいわい移住先はある。錬金術研究所ともう一つの街が。
しかしお客さんたちの答えは「できれば帰りたい」だった。
本心では慣れ親しんだ場所で安心して暮らしたいのだと。新しい土地は対人関係などが不安だと。
うん。その気持ちはわかる。
だけど今現在発生している問題を解決しないと、安心した暮らしってのは取り戻せないよな。それ、実行するのはおれたちっていう流れになっちゃうよなあ、多分。
結局、おれたち四人が先に鉄男さんたちの故郷に行き、現地を見てなにができるかを判断する。
そのあとで今いる十人の客や、まだ現地に残っている人たちのあつかいを考える。
必然的に基地をしばらく客たちにまかせる形になってしまうが、セキュリティ関係はコンピューター制御でガチガチに守ってあとは彼らの善意に期待するしかない。
こんな感じに決まる。
ジルヴァだけでも基地に残って、研究をつづけながら彼らの監視もやってもらおうかって意見もあった。
けど、彼女のもつ圧倒的な知識量を現地で生かせないのはキツイということで、四人そろって行くことになったんだ。
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かつてはアスファルトで完璧に舗装されていたであろう、荒れはてた道路。
樹木に侵食されて廃墟……、というよりもはや『家の残骸』とでも言うべき存在がたちならぶ住宅街。
そしてなによりかつて地域の住民だったゾンビたち。
彼らのペットだったイヌやネコその他、小型獣のゾンビ。
そんな空間をいくつか突破し北上していくうちにだんだん農地が増えてきて牧場なども発見する。
そこで野生化した家畜とバトルになるも、貴重な新鮮食材をゲット。
今のおれたちは自動車やバイクを使った移動なのでそれほど大変でもない。
でもかつての鉄男さんたちや、基地に残してきた客たちは、これを歩いて突破してきたんだよな。
しかも銃も剣もなし。かすり傷一つでZ-ウィルスに感染してアウトという狂気的難易度で。
「すごいね二人とも。こんな大変な思いして基地まで来たんだ。おれどんな旅だったのか考えたこともなかったよ」
「人間、死ぬ気でやればなんとかなるもんさ」
皮肉な笑顔で微笑む鉄男。無言で物思いにふけってしまう紫織。
とんでもない苦行だったはずだが、二人はあえて言葉にしない様子だった。
「さあ、それよりも、見えてきたぜ」
目の前に長大な柵がならんでいる。街そのものをグルっと囲む大規模なものだ。
鉄骨だったり、木造だったり、素材や高さはバラバラだった。
きっとゾンビと戦いながら必死に作った柵なのだろう。
死人も何人も出したにちがいない。
だから素材をそろえるとか、緻密な設計をもとに築くとか、そういう余裕ぶった行動ができなかったのだ。
粗雑にして厳重。
矛盾した荒々しい風情の街に近づいていく。
鉄男さんが紫織にポツリとつぶやいた。
「……帰ってきちまったな」
「うん」
大原兄妹は複雑そうな視線で故郷を見つめた。




