表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゾンビだらけの終末世界でおれたちわりと無双界隈  作者: 卯月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/70

第56話 オタク最大の欠点

 おれの基地には二度と手に入らない精密機械や、大量殺人にも使える銃火器などがたくさんある。

 どんな性格かもわからない十人の来客(しかも子供たちもいる)に自由行動を認めるわけにもいかず、居住スペースだけ使ってもらうことにした。

 来客たちも不平不満は言わず、与えられた範囲はんいのものでとりあえず満足してくれたようだ。


 っていっても、ぶっちゃけおれが彼らに提供したのは広い談話室、蛍光灯の明るさ、適度な空調。

 飲食物はビスケットとインスタントコーヒー。

 そして娯楽ごらくとして、大型スクリーンでジブリアニメのDVDを見せた。個人的に一番好きな『千と千尋の神隠し』な。

 子供たちはありのまま素直にアニメを楽しんでいたが、大人たちはなつかしさのあまり泣きだしちゃった。

 楽しんでもらおうと思ったのにむしろ悲しませちゃって、おれは世界をほろぼしたヨン様……じゃなかったヨミ様とやらの愚行ぐこうがいかに罪深つみぶかいかをふたたび知るのだった。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


 ……で、別のベクトルで被害者になった紫織のフォローにも挑戦してみた。

 正直こっちはまるで自信がない。なにをどうすれば元気が出るんだ? 女心とかマジでわかんないんだけど。

 兄を戦力としていいように利用していたくせに、ウイルスに感染したらあっさり追い出した冷酷な故郷。

 そしてその故郷に絶望してみずから飛び出した紫織。

 いまさら「助けてくれ」なんて言われても、紫織としては納得できるわけないよな。大人の対応をしている鉄男さんのほうがむしろお人よしすぎるんじゃないか?


 紫織は野菜の栽培室さいばいしつにいた。

 基本的に真面目で、それだけにストレスを内にためて我慢するタイプなのが彼女だ。 

 ムスッとした不機嫌顔で、しかし丁寧に野菜の世話をしていた。


「ここにいたんだ」

「……どうも」


 あまり友好的ではない挨拶あいさつを交わしたあと、おれたちは無言になる。


「……」

「……」


 早くもこまった。なにも言うことが思いつかない。


「なにか用ですか?」

「いや別に、用ってわけでもないんだけど……」

「けど、なんですか?」

「いやその……」


 重苦しい沈黙ちんもく


「……」


 紫織は『ダメだこの男』っていう視線をおれに送ってきた。

 おれがここに来た理由はなんとなくつたわったらしい。

 けどまともなことをなんにも言えないでいるから、あきれられた。


 でも難しくねえ!? こんなとき世の男たちはどんな言葉をかけるんだよ!?

 元気出せって言って元気が出る状況でもないでしょ。

 君は間違ってないとか言っても大した効果は得られないような気がするし。

 無関係なジョークとか言ったら、下手すりゃ怒らせちゃうし。

 いっそおれがついてる、とか言って彼女を抱きしめるか? それこそ適当な誤魔化しでしかなくねえ?

 わからん! なんて言えばいいの!? それとも必要なのは言葉じゃなくて何らかの行動なのか!?

 まるでびたブリキのおもちゃみたいにギクシャクしているおれを見かねてか、紫織のほうから口をひらいた。


「兄さんが、一回実家にもどって墓参はかまいりに行こうっていうんです」

「あ、うん。それはいいと思う」

「っていってもあの人たちだけ残して出かけるわけにもいかないじゃないですか」

「……あーそれもそうだね」


 お客さんの十人。

 あの人たちを残したままで基地をカラッポにするっていうのは、たしかに不安だよね。

 悪い人が混ざっていて施設しせつを荒らしたり物資を盗んだりするかもしれない。

 

「その辺をどうするか、考えといてもらえますか」

 

 それだけ言って紫織は野菜室を出ていく。


「了解……」


 おれは紫織の背中にそう言うことしかできなかった。

 人生って難しい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ