第52話 はじめての仲間モンスターといえば?
謎だったおれの秘密が明らかになった。
おれは世界を滅ぼした男の、弟のクローンであると。
クローンを作った理由は『おれたちクローンがこの世界をゲーム感覚で生きる姿を観察して、楽しむ』こと。
しかしオリジナルはすでに病死し、他のクローンもほぼ全滅しているらしい。
ということは、だ。
おれが目覚めて活動を開始する前から、おれの存在理由は終わっていたということになる。観察するやつがいない観察対象に意味なんてないだろ?
おれにはもはや義務も責任もない。ただここに居るだけ。
普通の人間とおなじなんだと、おれは解釈した。
生まれながらにして義務や責任を負っている人間なんてそう多くはないだろ?
おれもそういう平凡な人間の一人なんだと。そういうことにする。
と、いうわけでおれはこれまでとなにも変わらない生き方をすることにした。
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「お兄ちゃん! カズヤさん!」
剣の修行をしていたおれたちの元に、紫織がはしゃぎながら駆けてくる。
「すごいの! すっごいの!」
いつになく興奮してはしゃいでいる。
「どうしたんだ紫織ちゃん、何かいいことがあったの?」
「新しい施設が解放されました! もうすっごいんですよ!」
おれと鉄男は顔を見あわせた。
なにも分からないが、とにかくすごい事があったらしい。
地下三階までおれたちは降りた。
ここにはよく分からない高度な科学設備がならんでいて、おれはほとんどノータッチなままだ。
かわりに紫織とジルヴァが毎日こもって色々とやっていたんだけど。
「来たわねあんた達」
おれたちの姿を見つけたジルヴァが、親指をグイっと部屋の奥にむけながら会心の笑顔を浮かべた。
「この施設、とんでもないオモチャを隠してあったわ」
「なんだよマジンガーZでもあったとか言うんじゃねえだろうな」
我ながらしょうもないことを言いつつ、新たに解放された隔壁のむこうに足を踏みいれる。
そこは高い天井の広々とした空間。
よく分からない機器の中央に、大きなドーム状のカプセル設置されていた。
「天使をつくる施設よ」
「なに!?」
ゾンビ以上の脅威。人類の敵『天使』。
それを生み出す機械がおれたちの家にもあっただと!?
「これがあれば今後は簡単に戦力の増強ができるわよ」
なんの屈託もない笑顔を浮かべるジルヴァ。
まあこいつも天使だしな。天使を増やすという行為に疑問を感じないのは、自然なことなのかもしれない。
しかし基本的に天使=敵という認識だったおれはちょっと気分がモヤモヤする。
そんなおれの気持ちを払拭するかのように、紫織が生まれたばかりの天使をおれに紹介してきた。
「ほら、この子が記念すべき一体目ですよー」
プルルン。
そいつは、紫織の手のひらの上でプルプルと身体をふるわせた。まるで挨拶でもしたかのように。
「ス、スライム?」
記念すべき天使第一号。
それは両手の上に乗るくらいの大きさしかない、一匹のスライムだった。




