第47話 またな、みんな!
『ゲーム』のスタート地点だった基地へ帰る。
冷凍睡眠で拘束している鉄男さんを助けに行くんだ。
帰還メンバーはまずおれ、カズヤ。
次に鉄男の妹、大原紫織。
それと、ジルヴァも同行することになった。
理由は『偽聖剣』のジークに襲われたあの日以来、研究所のみんなと人間関係がギクシャクしてしまったから。
ジルヴァの正体は超上級天使『水銀』のメルクリウスだった。
彼女の正体を知っていたのは先代所長の勝さんと、ごく少数の初期メンバーのみ。
ずっと隠されていた大きな秘密。それが敵によって明かされるという最悪の展開に住民たちの心がついていけない様子なんだ。
勝さんの「女の過去を掘り返すな」という発言の効果があったのか、真正面から「裏切り者!」とか言っちゃう奴はいない。
そもそもこの街が錬金術研究所として大きく成長できたのは『水銀』のメルクリウスが知恵と力をあたえてくれたから。
つまり今の自分たちが自分たちでいられるのはメルクリウス、つまりジルヴァのおかげなんだ。
そんな彼女が敵なわけがない。分かっている、分かっているんだ。
しかし……。
とまあこんなどうしようもない周囲の心境とジルヴァ本人の居心地の悪さを考え、いったん距離をおいたほうが良いんじゃないかと。そういう話になったんだ。
出発直前。
おれの車の前で、真美所長とジルヴァが最後の挨拶をかわす。
「ジルヴァ……!」
「やだなに泣いてんのよ、どうせすぐ帰ってくるってば」
抱き合って友情を確かめあう二人。
ジッと見つめているのも何だったので、おれと紫織は見送りに来てくれた他の人たちに目をむける。
車イスに座った勝さん。壁のように整列して圧をかけてくる大柄筋肉マッチョ軍団。
はじめのころは何だこの異常空間は! なんて思ったけれど、離れる今はなんだか寂しい。
「それでは、健康には気をつけてな」
勝さんにそんなことを言われて、おれはちょっと言い返したくなる。
「『エリクサー』に言いますかそれ?」
「わははは」
ここの住民たちは『エリクサー』の効果で全員Z-ウィルスに対する免疫をゲットした。
もうゾンビとの戦闘は怖くない。負傷したってへっちゃらだ。
これをもっと大きく広めれば、まさに世界が変わる。
自分の一歩一歩が世界のためになるって、なんだかすげえ事だなって興奮するぜ。
「それじゃ、行きます」
われながらひどく素っ気ない言葉を残して、おれは愛車に乗り込んだ。
男の別れなんてそんなものだろ。
紫織とジルヴァもそれぞれ挨拶を終えて乗る。
さあ出発。その時だった。
外からみんなの歌が聞こえてくる。
マッチョ マッチョ マッチョマン
脳汁とびだせ
マッチョ マッチョ マッチョマン
筋肉全開 マッチョマン
胸の下で育まれた シックスパックのマッチョマン
厚い胸板 塊 燃えろ背筋マッチョマン
負荷を乗り越え いつも鍛えてくれるよ
サイドチェストで魅せたなら
マッチョ マッチョ マッチョマン
きみの胸板に
マッチョ マッチョ マッチョマン
筋肉全開 マーッチョマーン!
「そんな歌で見送るの!?」
思わず窓から顔を出すと、みんながおれに笑いかけてくる。
ついつられて、おれも笑ってしまった。
「ははっ、またなみんな!」
こうしておれたちは錬金術研究所をあとにした。




