第46話 ふたつの新武器
おれが獲得したチート能力『エリクサー』は錬金術研究所に劇的な変化をもたらした。
ゾンビの治療と感染予防に効果があるのはもちろん、武器にもなることが判明。
『エリクサー』、つまりおれの血がゾンビにつくと相手はダメージを受ける。
ゾンビが俺たち人間にやってきたウイルス感染という追加攻撃を、反対におれたちもできるようになったんだ。
これはきっとあの『偽聖剣』にも効く。
あんなのにどうやって当てるんだっていう大問題はあるけど、一発大逆転の可能性は見えてきたってことで。
いま錬金術研究所は『エリクサー』の効果を消すことなく長期保存する方法や、血が固まって粉になった状態でも効果を発揮できる方法はないものかと連日研究中。
『偽聖剣』のせいでメチャクチャにされちまってどうなることかと思ったけど、それでもこうしておれたちは新しいステージへと進んでいる。
ケガも順調に治ってきてそろそろ基地へ戻る計画を立てようか、なんて考えはじめていたある日。
おれは先代所長の南鞠勝さんに呼ばれた。
ケガの影響でまだちょっとギクシャクする身体を引きずりながら、おれは勝さんが住む山小屋にむかう。
「おう、呼び立ててすまないね。座ってくれたまえ」
「はい」
勝さんは車椅子に乗っていた。
『偽聖剣』のウソみたいな神業で生きのびた勝さんだったけれど、それでも五体満足というわけにはいかなかったんだ。
リハビリをしても右半身に麻痺が残り、立って歩くのもやっとという身体に。
利き手のマヒによって文字を書くのも大変になり、名実ともに完全な引退となった。
「実はこれを君に受け取って欲しくてね」
勝さんは布袋にはいっている何かを取り出す。
しかしマヒした右手を上手くつかえず、中身を落としてしまった。
ゴトッ!
「あっ、すまない!」
「いいですよ」
かつての勝さんだったらこういうことは無かっただろう。
師匠の衰えに少しさみしいような気分になりながら、おれは木製の床に転がっていた球体を拾い上げた。
「これって、『偽聖剣』が取り出したアレ?」
「うむ、私の脳内コンピューター『ベル』……だったものだ」
おれは布袋の上に『ベル』を乗せる。
ミニサイズの水晶玉みたいな演出になった。
「もう交信すらできなくなってしまってね。私には無用の長物なんだ」
「でも、いっぱい思い出があるでしょう?」
「あるよ、良くも悪くもいっぱいね。だがいいんだ。会話できない相棒なんてひどく虚しいだけだからね」
「……」
それじゃあ、なんて軽い気持ちで受け取れるものではない。
だけどこのままこの家に置いておいても宝の持ち腐れなのは確かだ。
「持って行ってくれ、正直こいつが今なにを考えているのかすら分からん、というのが精神的に苦痛でね。そっちで有効活用してほしい。二つあったほうが便利なのはわかるだろう?」
「たしかにおれのAIと通信ができるのはすごく良かったです」
「通信だけじゃないよ、今まで使いようのなかった武装まで実用的になってくる」
「武装?」
武装なんてあったっけ?
「そこのタンスの中をちょっと見てくれんか」
「はあ」
中には剣の柄、あるいは魔法使いの手杖みたいなものが入っている。
「君の『ノヴァ』にもあるはずだ。自爆装置とレーザーブレードが。頭から取り外したことで有効活用できるようになったと思わんかね?」
「あっ!」
おれは誘われるままテーブルの上の『ベル』をとり、刀身のない柄にはめこむ。
「『ノヴァ』、『ベル』にレーザーブレードを起動するよう言ってくれるか?」
『了解いたしました。危険ですのでケガをしないよう注意してください』
数秒後、ブウウウン……! というお約束的な効果音を出す光線剣があらわれた。
まるでスターウォーズ。あるいは宇宙刑事。あるいはファンタジー系の色々。
それがおれの手に。
輝く光剣をまぶしそうに見つめ、勝さんは苦笑した。
「フッ、これだけの物をわざわざ頭の中に閉じ込めてくれたのだから、作った人間はずいぶんと意地の悪いことをする」
「ですね!」
「私にできるのはここまでだ。あとのことは君にまかせるよ」
こうしておれは『エリクサー』と『レーザーブレード』という二つの新たな武器を手にいれた。
思いもよらずこの研究所に長居してしまったが、そろそろ旅立ちの時だ。




