第100話 黄金の十字射撃
ウマ娘ならぬウマ男と並走して全力ダッシュをつづけること一、二分。
意外にもおれたちを追うガルガントのほうが体力負けしてきた。
ちょっとずつおれたちとの距離がひらいていく。
「おっ? いくら燃費悪いっつーてもこりゃひどいな?」
あんだけ人やら家畜やらバクバク食いまくってんのにこの持久力。
兵器としての完成度は今ひとつとみた。
「ブヒーッ! ブヒーッ!」
ところでなぜか、となりのジャミスまでバテてきている。
「だらしねえなウマのくせに」
「うっせえ、最近……変な病気が流行っててよ……ブヒー」
あっ、『エリクサー』の効果か。コレおれのせいだ。
じゃあもしかしてガルガントにも『エリクサー』の効果が出てんのかな?
この国は現在生きとし生けるものすべてがおれの『エリクサー』の影響下にある。
バクバクバクバク調子にのって食いまくってきたせいで、少しずつ効き目がでてきたのかもしれない。
「ちなみにアリスちゃーん? 君は今日も元気なのかなー?」
「うんっアリスはいつも元気だよ~」
アリスはジャミスの背で愛らしい笑顔を見せた。
……こいつはどうやって倒したらいいんだろう? 全然想像がつかない。
まあそれは未来のおれにまかせよう。きっと素晴らしいアイデアで大勝利をもたらせてくれるさ。うん。きっと。たぶん。
今はまずこの窮地を脱しないとな!
おれは何か良い情報の一つでもないのかと、走りながら周囲を見渡す。
すると、空を大きな蝶が飛んでいるのに気づいた。
不自然にでかい、銀色の蝶。
あれは……。
蝶はおれの姿を見てから、右方向へ飛んでいく。
「右だ!」
おれは叫びながら右に曲がる。
ジャミスも素直に従った。
曲がった先はちょっと細めの道路。
走りながらおれは前方を見た。
並びたつ家々の中に、キラッと輝くなにかを構えた人間たちが隠れている。
何か仕掛けがあるらしい。
「走りつづけろ、絶対に止まるな!」
「ブヒーッ、か、簡単に言ってくれるぜェ……」
息も絶え絶えのジャミスを励ましながら走りつづける。
後ろで曲がり角の建物が破壊される音がした。
ゴワッシャアアン!!
急に細い道に入ろうとしたせいでガルガントが曲がり損ねたらしい。
だが衝突して壊れたのはガルガントではなく建物のほう。
たいした防御力だ。
すぐに体勢をととのえてふたたび追いかけてくる。
多少左右の建物に身体をこすりつけてもおかまいなし。
逆に建物のほうを破壊しながら突っ込んでくる。
「オイオイオイどーすんだコレよ!?」
「だまって走れ」
「死にたくねえ……童貞のまま死にたくねえ……」
ジャミスは必死に走りながら涙目になっていた。
いや泣くなよ……。
「もうすぐだよ」
「なにが!?」
「罠」
おれが「わな」の二文字をつぶやいたのとほぼ同時。
建物の陰からふたたび大きな蝶が飛び上がった。
正確には蝶の羽をのばした人間の陰。
ジルヴァだ。
「今よみんな!」
彼女の合図で左右の建物に隠れていた仲間たちが一斉に姿をあらわした。
黄金の針や『エリクサー』入りの小瓶。
さらには錬金術で強化された金ピカの投げナイフなども。
逃げ場のない狭い通路に閉じ込められた状態での十字射撃だ。
巨体に全弾命中。
ガルガントの動きが止まった。
「カズヤ、生きてるわね!」
「おう、助かったぜ」
ジルヴァが空から降りてきた。
そしておれの隣に立っているジャミスと、その背におぶさっているアリスの姿を見て眉をひそめる。
「どーゆー状況?」
「おれにもよく分からん。呉越同舟……みたいな?」
「はぁ~?」
「あーメルクリウスだー、ヤッホー」
アリスはやっぱり笑顔のまま。
突然現れたジルヴァに、のん気に手を振っている。
「そっちの状況は?」
おれの方からジルヴァに問う。
「住民の避難をフォローするためにイイ感じの場所で敵を待ちかまえていたのよ。あんたの事だからしぶとく生きてるって信じてたわ」
「まあな」
「まあ、こんなオマケたちがついてくるとは想像してなかったけど」
「ハハハ……」
二人のオマケ。
つまりジャミスとアリスを見て苦笑するおれ。
とりあえずガルガントの動きは止まった。
だけど、これで死んでくれるほど楽な敵じゃないよな……。




