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おっさん異世界で最強になる ~物理特化の覚醒者~  作者: 次佐 駆人


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24章 異界回廊 52

 モンスター大群出現の報を受け、早速領都ザンザギルを出た俺たち『ソールの導き』。


 『精霊』が牽く馬車で領都の城門から外に出て、領都へ急ぐ旅人や商人とすれ違いながら街道を行くこと10分ほど。


 そこで俺たちは馬車を降り、街道を外れて平原へと歩いていく。街道から離れたところでシズナに『聖獣ガルーダモス』を呼んでもらう。


 程なくして巨大な蛾、ガルーダモスが俺たちの前に舞い降りてきた。シズナに通訳を頼み、偵察のために飛んでもらえないかと頼んだところ、


「喜んで協力をしてくださるそうじゃ」


 ということでガルーダモスの背に乗る。


 空を飛ぶこと数分、遠くに赤茶けた大地が広がっているのが見えてきた。そのさらに向こうにドワーフの里があるはずだが、俺の目にはまだ見えない。


 南東には岩でできた盾のような岩山が幾重にも連なって並んでいる、雄大な山岳地帯が見えてくる。以前ドワーフの里に来た時には気付かなかったが、かなり勇壮な景色である。


 そちらのほうをずっと睨んでいたスフェーニアが、ぐっと目を細めた。


「あの岩山のふもとから、多くのモンスターが北上してくるのが見えます。岩山と岩山の間から湧き出してきているように見えますね」


「数はどのくらいいそうだ?」


「千を超えていると思いますが、さすがにここからではわかりません」


「モンスターを刺激しない程度に近寄ってもらうか」


 シズナの通訳によって、ガルーダモスが南に旋回を始める。さらに少し高度を下げると、俺の目にも遠くにうごめくモンスターの群れが視認できた。


 盾のような形状でそそり立つ岩山と岩山の間、渓谷のようになっているところから、無数のモンスターが出てきて周囲に広がっている。数は今のところ千匹を超えるくらいで、その多くは小型のモンスターだが、中型大型のものも何匹か交じっている。


「スフェーニア、なにか気になるところはあるか?」


「そうですね……私の気のせいかもしれませんが、モンスターの中に見覚えのないものが交じっているようです。しかも、そのモンスターを中心にして、モンスターたちがまとまっているように見えます」


「見覚えがないモンスター?」


 俺は『望遠の魔道具』を取り出して自分の目でも確認することにした。


 多くはゴブリンやフィッシュマン、オークといった二足歩行のモンスターで、今のところゆっくりと歩いているだけのようである。オーガのような大型のものもいるが、数を考えなければ十分に対応できるモンスターだろう。


 そしてその中に、確かに見覚えのないモンスターが交じっていた。


 それは一言で言えば『歩くサボテン』であった。サボテンといっても、卓上で育てるような球形のものである。その球形のサボテンの下部から虫の脚みたいなものが3対6本突き出ていて、それで虫のような動きで歩いている。


 本体部分は緑色で、無数に細い棘みたいな器官が突き出ている。他の小型モンスターに比べるとかなり大きく、全高は5メートル近くありそうだ。


 そしてスフェーニアが言う通り、モンスターたちはそのサボテンモンスターを中心にいくつもの群れを作っているようだ。モンスターについては見てきたが、初めて見る光景である。


「確かに初めて見るモンスターがいるな。しかもそいつが小さな群れを束ねているようにも見える」


「ちょっとわたしにも見せて」


 ラーニが手を伸ばしてきたので『望遠の魔道具』を渡す。


「ん~……本当だ。見たことないやつがいるね。しかもすごく気持ち悪いやつ」


「ちょっとラーニ、アタシにも見せてくれよ」


 さらにカルマからマリアネ、シズナ、フレイニルと『望遠の魔道具』が回るうちに、その奇妙なモンスターが目視できるくらいまで近づいた。


「マリアネ、あのモンスターは過去の記録とかにあったりしないのか?」


 俺が聞くと、マリアネは首を横に振った。


「いえ、私の記憶にはありません。グランドマスターならあるいは知っているかもしれません」


「そうか。ゲシューラ、ライラノーラはどうだ?」


「『黄昏の庭』では見たことがないものだ。ただ、あのモンスターは形状があまりに不自然だ。他のモンスターとは分けて考えたほうがいいだろう」


「私はモンスターにはそれほど詳しくはありませんのでわかりません。しかし、あの姿形から考えて、自然に発生したものとも思われませんわね。モンスターは生き物の形をとることが普通と考えられますので」


「やはり2人も特異なものだとは感じるんだな。それは俺も同感だ」


「私もあのモンスターは自然のものとは思えません、ソウシさま」


「そうじゃのう。キノコかなにかに足をくっつけただけの妙な形をしているからのう。『悪魔』と同じような奇妙さを覚えるのじゃ」


 フレイニルとシズナまで賛同し、他のメンバーも同様のことを口にした。


「ちょっとドロツィッテにも聞いてみるか」


 俺は『通話の魔道具』を取り出してドロツィッテを呼び出した。待ち構えていたのか、2秒もしないうちに彼女は応答した。


 俺が見たままのものを説明すると、少しの沈黙の後、答えが返ってきた。


『……確か、邪龍が出現した時の記録に、似たようなモンスターが出現したと記述されていた気がするよ。その時も邪龍とともに多くのモンスターが現れたんだけど、球形のモンスターが他のモンスターを率いていたように見えた、とあったはずだ』


「とすると、今回のモンスター出現が過去の厄災と関係があるのは間違いなさそうだな」


『そうなるかもしれないね。できればその特殊なモンスターを生け捕りにできればいいんだけど、難しいかな』


「一度試みてみよう。だめだったら諦めてくれ」


『無理のない範囲でお願いするよ。ともかく今は継続してそのモンスターの群れを監視して欲しい』


「承知した」


 俺はさらにザンザギル侯爵にも同じ報告をした。


『承知した。こちらも兵士と冒険者、合わせて3400人ほどで東の門から出発したところでござる。ただし3000人は普通の兵、Fランクモンスター以外は相手にできぬ。詳細を引き続き報せられたい』


 とのことだった。冒険者ともと冒険者の兵士が合わせて400、ザンザギル領はBクラスダンジョンまであるので、Bランクパーティも複数いるだろう。そのレベルになれば一騎当千に近い働きはするはずなので、戦力としては決して少なくはない。


 通話をやめて空からの偵察を続ける。


 岩山の間から現れたモンスターの群れは全部で6つ、後続は確認できない。一つの群れは500匹くらいのモンスターで構成されていて、すべての群れの中心にサボテンモンスターがいる。全部で3000匹の群れが、平原を北上していた。


「う~ん、弱いモンスターしかいないし、あれくらいの数ならわたしたちだけで全滅させられる気もするけどなあ」


『望遠の魔道具』を覗きながらラーニがそう言うと、マリシエールが反応した。


「確かにあれくらいならソウシ様がいればすべて倒せそうな気はしますわね。ですがそれはしない方がいいでしょう」


「なんで?」


「私たちが倒してしまったら、結局何事もなかったということで終わってしまいますわ。これから『大いなる厄災』が近づいているのなら、皆に危機感は持っておいてもらわないと逆に危険になりますもの」


「あ~、確かにそうか。これくらいのモンスターなら他の冒険者とか兵隊とかで十分対応できるもんね」


 マリシエールの指摘は感情的にはともかく、理屈の上では確かにその通りだろう。それに俺たちだけでモンスターを倒したとなると、俺たちが手柄を独占することにもなる。『黄昏の眷族』や『冥府の燭台』の件によって功績が天にも昇るほどの『ソールの導き』は、こういった時にはやりすぎない方が各方面にとって助かるはずだ。


 さて、モンスターの群れだが、ついに東西に伸びる街道に行きあたった。するとモンスターの群れは、東西に3つずつの群れに分かれて移動を始めた。つまり、領都ザンザギリアムとドワーフの里と、両方へ進軍を開始したことになる。

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