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おっさん異世界で最強になる ~物理特化の覚醒者~  作者: 次佐 駆人


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24章 異界回廊 51

 サクラヒメとの婚約が決まったその翌日、ザンザギル領にも『異界の門』を設置した。


 場所は領都ザンザギリアムの東側、すなわちドワーフの里がある方角だ。


 街道から外れたところに石造りの頑丈そうな建屋が作られていて、その中に『異界の門』を作るのも他と同じである。


『異界』へはザンザギル侯爵とカエデノハ夫人に入ってもらったが、事前にサクラヒメから話を聞いていたらしく、そこまでは驚いていないようだった。


 ただ、やはり『異界の門』と『異界回廊』の軍事的価値はかなり気にしていたようだ。


 ザンザギル侯爵には、


「この『異界の門』の管理方法については、すべての国の元首が話し合う必要がありそうでござるな。そして、それを実現できるのは恐らくオクノ侯爵だけであろう」


 と、かなり重いことを言われてしまった。


 だが確かに、国を閉ざしているオーズ国の大巫女ミオナ様を外交の場に連れてこられる人間はかなり限られる。その中でも、娘であるシズナとの婚姻が視野に入っている俺がもっとも適任であるのは言うまでもない。ミオナ様自身からもアプローチがあったことは……今は横に置いておこう。


 さて、これで帝都とファルクラム侯爵領、そしてドーラゼル侯爵領と、ここザンザギル侯爵領の4カ所に『異界の門』を開くことができた。それら4カ所は互いに行き来できるよう看板や道標となる杭などを打ち込んだので、帝国領内だけであればすぐにでも使える状態になった。


 この後南のガッシェラの町にも設置すれば、ヴァーミリアン王国ともつながるルートができ上がる。となると、いよいよ『異界回廊』開通が近づいてきた感がある。


 翌日は一日休みとしたが、俺とサクラヒメは侯爵邸で内々に婚約の儀を行った。本当に身内だけのものであったが、これで俺とサクラヒメは正式に婚約を結んだことになり、結果としてサクラヒメはザンザギル侯爵の後を継ぐ権利を失ったことになる。


 儀式が終わった後、さすがにそれでおしまいという訳にも行かず、サクラヒメと2人で庭に出た。


「以前、サクラヒメと初めて会った時に縁があると感じた話はしたが、まさかこうなるとは思ってもいなかったな」


 俺がそう言うと、サクラヒメは目を細めて「ふふっ」と笑った。


「人の縁というのはソウシ殿でもわからぬものでござるか?」


「むしろ一番わからないのが人の縁かもしれないな。というより、前も言ったと思うが、自分の年齢を考えるとサクラヒメと夫婦になるなんて考えられることではないからな」


「貴族の世界ではあり得ぬことでもござらぬが」


「それでも余程の理由がなければ普通はやらないだろ? まあ、そう考えた時、俺自身が『余程の理由』になるのだろうという自覚もなくはないんだが……」


「ふふっ、確かにソウシ殿は、この大陸一の大人物と言えるであろうな。だが、その理由がなくてもそれがしはソウシ殿の妻になりたいと考えたと思うでござるよ」


 そう言いながら、サクラヒメは頬を染めつつ俺のほうをじっと見つめてきた。


 その美しい顔を俺は直視できず、つい目を逸らしてしまう。やはり彼女のような女性が自分の妻になる、などという現実を直視するのは気恥ずかしさが先に立つ。


「……俺も、サクラヒメとこうして婚約できて嬉しいとは思ってるよ。まあ、実際に結婚となると少し先になるだろうが」


「それは仕方あるまい。さらに言えば、実際の結婚となるとそれがしより先に為されなければならない女性が『ソールの導き』には多い。ソウシ殿も大変でござるな」


 いきなり怖いことを言うサクラヒメだが、その目は笑っているので半分は冗談なのだろう。俺が苦い顔をしていると、


「皆ソウシ殿のことを信じているゆえ、ソウシ殿はまずは為したいことを為すとよい。我らは皆それについて行くだけでござる」


 と、フォローされてしまった。


「それでも、いつかは皆のやりたいことも優先できるようにならないとな」


 そんなことを口にして、俺が辛うじて男としての甲斐性を保とうとしていると、侯爵邸の玄関からマリアネが出てきてこちらに走ってきた。


 その顔はいつもの通り無表情ではあったが、所作で彼女が少し焦っていることがうかがい知れた。


 マリアネは俺たちの前に来ると、「お二人で大切な話をしている時に申し訳ありません」と口にした。


「大丈夫だ。それより急ぎの用件だろう?」


「はい。付近で活動していた冒険者から緊急の報告が入りまして、ここザンザギルの南東方面にある山岳地帯から多くのモンスターが現れたそうなのです。中には大型のものも交じっていて、現在北上して街道に向かっているとのことです。遠からずここザンザギリアムや、ドワーフの里へも至ると思われます」


「まさか、もう『大いなる厄災』が動き出したということか?」


「グランドマスターが各支部に報告を上げさせていますが、どうやら大きな動きは今のところここだけのようです。ともかく、急ぎザンザギリアムとドワーフの里のギルドには冒険者を集めさせています。私たちも対応をお願いしたいとのことです」


「ああ、すぐに動こう」


 どうやら、『異界回廊』開通間近にして、遂に『天運』スキルが動き出したようだ。


 俺はサクラヒメとマリアネとともに、館へと走り出した。




 モンスター大群出現の報はすでにザンザギル侯爵にも伝わっており、侯爵は急ぎ領軍に出動の準備をさせているところだった。


 ただし、どの領地でもそうだが、元冒険者の兵士はそれほど数は多くない。ザンザギル侯爵配下には150人ほどがいるそうだが、彼らは実力的には多くがC~Dランクということで、高ランクのモンスターが相手だと厳しそうだ。


 もっとも侯爵自身が元Aランク、軍の大隊長クラスはBランクもいるとのことで、むしろさすが武門の家と言えるレベルではある。


『通話の魔道具』でドロツィッテと連絡を取ったが、『ソールの導き』は領軍と連携しつつ、できれば先行して情報を上げて欲しいとのことだった。


『ソールの導き』のメンバーは、幸い全員が館に戻っていた。話をすると全員が速やかに準備を始め、10分後には完全装備となったメンバー、すなわち俺、フレイニル、ラーニ、スフェーニア、マリアネ、シズナ、カルマ、ゲシューラ、サクラヒメ、マリシエール、ライラノーラ、の11人が館の玄関前に揃った。


『アイテムボックス』から馬車を出し、シズナの『精霊』をつないでいると、ザンザギル侯爵が玄関から現れた。


「オクノ侯爵、済まぬがこちらの準備はあと四半刻ほどかかりそうだ。もしモンスターの大群がいたとして、あまり深入りはせぬようにして欲しい」


「わかりました。数が多いとなれば、我々だけではすべて対応できません。まずはなるべくモンスターを刺激しないように遠くから偵察を行います。連絡は『通話の魔道具』を使いますのでお願いします」


「うむ、よろしく頼む」


 馬車の準備が終わり、俺たちは領都ザンザギルの通りを走り抜け、東門から出発した。


「ソウシさま、もしかして『大いなる厄災』が始まってしまったのでしょうか?」


 同乗しているフレイニルは、さすがに不安そうな表情をしていた。


 そして、その疑問は当然俺も先ほど持ったものである。


「どうかな。マリアネの話だとまだ騒ぎはここだけのようだし、『大いなる厄災』そのものではないような気はする。今後こういった事が増えて行って、その先に『大いなる厄災』が現れるということじゃないか」


「それならいいのですが……。でも、私たちがいる時でよかったですね」


「これも間違いなく『天運』スキルが働いているんだろうけどな」


「そう考えると、『天運』はソウシさまや私たちにとって助けになるだけでなく、人々のためにもなるスキルなのですね。やはりソウシさまに相応しいスキルなのだと思います」


 フレイニルのその言葉は、少しだけ俺をハッとさせた。


『天運』は俺たちのところに難題をもたらす代わりに、それを乗り越えた時に力を与えるスキルである。


 だがその『難題』がモンスターなど厄災の形を取った時、それに対処できる俺たちにぶつける働きがあるということは、逆に考えれば世の中のために役立つスキルということにもなる。スキル自体はライラノーラを作った『神』が定めたもののようだが、なるほどよく考えられているものである。

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こちらもよろしくお願いいたします。

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