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おっさん異世界で最強になる ~物理特化の覚醒者~  作者: 次佐 駆人


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24章 異界回廊 49

 翌日は、朝から帝都近郊に出て『異界の門』を設置した。


 ヴァーミリアン王国と同じように石造りの頑丈そうな建屋が用意されていて、その中に『異界の門』を発生させる形である。


 もちろん皇帝陛下も、帝国騎士団長であるドミナート侯爵や親衛騎士たちを引き連れて立ち合いに来ていた。


『異界』の中にも入ってもらったが、


「まずは、このような不思議な経験ができることに感謝しないとなりませんね。それとともに、これを『回廊』として利用しようと考え、実行するオクノ侯爵の視野の広さと実行力には感服するしかありません。もしこの『異界回廊』が整備されれば、この世界にどれだけの影響を与えるのか想像もつきませんよ」


 と、感じ入ったように口にしていた。


 ただそれとともに、彼自身『異界』の様子を見ながら、色々と考えを巡らせていたようだ。


『異界回廊』から得られるメリットは、領土の広い帝国こそ大きいものがある。今回5カ所に開くことになるが、その利便性が確認されればさらに増やすことも考えるはずだ。


 なお、今回は王国からも遠い場所に『異界の門』を開いたため、一番近いはずの王都の『異界の門』ですら位置が確認できなかった。ただ、これは国境の町ガッシェラに開けば解決するはずだ。


 翌日、翌々日と、西のドーラゼル侯爵領、北のファルクラム侯爵領への設置は連続で済ませてしまった。


 なお、『黄昏の眷族』侵攻の時以来、二度目の訪問となるファルクラム侯爵領だが、当時の領主のファルクラム侯爵、そしてその夫人と長子モメンタル青年が全員『冥府の燭台』の犠牲となってしまった悲劇の土地である。


 結局、次男のライエンタル青年が急遽領地を継ぐことになったのだが、彼ももともとはソーグラン伯爵家に婿に出てソーグラン家を継ぐ予定だった人間である。


 ライエンタル青年はまだ20歳そこそこの年齢であり、帝室から人材の助けを得ているとはいえ、そのようなイレギュラーに事態にかなり苦労をしているようだ。


 応接間で相対したライエンタル青年は以前会った時に比べて痩せてしまっていて、頬のこけ具合など俺から見ても可哀想なほどであった。


「将来的にはソーグラン伯爵領を継ぐ予定で、義父の元で領主としての勉強を行っていた身ですから、正直とても厳しいのです。伯爵家も私と妻以外継ぐ者がいないものですから、そちらも気にしておりまして……」


 と、俺に苦しい裏事情を話すくらいなので、本当に追い詰められているようだ。


 侯爵家を継ぐとなれば、貴族としては普通嬉しいことのはずだが、やはり現実の壁は高いということか。


 俺としてもファルクラム侯爵家の一件には深くかかわった身であるし、彼の身の上には同情するしかない。


「我々がダンジョンで得た、身体によいとされる食材や、薬の原料になる素材など多くお渡ししましょう。他になにかお助けできることがあれが言ってください」


 と口にしたのはそのせいだったのだが、それに対して、


「できれば、オクノ侯爵閣下にこの領をお任せできるとありがたいのですが……」


 などと、とんでもない言葉を返されてしまった。


 しかもそれにいち早く反応したのは、帝妹マリシエールだ。


「それはとてもよい考えかもしれませんわ。この領は『黄昏の庭』にもっとも近いところにありますから、『黄昏の庭』の総督でいらっしゃるソウシ様が治めるのは理に適っていると思います」


「いや、そんなことは……」


 俺は当然無理だと言おうとしたのだが、それをドロツィッテが遮った。


「なるほど、それは一考の余地が十分にあるね。皇帝陛下もお許しになるだろうし、皆が助かるんじゃないかな。それにこの領は北の平原や山脈、北の海と未開拓地が多いから、ソウシさんとしても治めがいのある土地だと思うよ」


「いきなりそんな話をされても本当に困るから勘弁してくれ。それに、自分は闘技大会でモメンタル様を倒したことになっているから、領民の感情が許さないと思うぞ」


 ファルクラム侯爵の長男であったモメンタル青年と、俺は帝都の闘技大会で戦った。そしてその時、俺は表面上モメンタル青年の命を奪ったことになっている。


 もちろんその時点で、モメンタル青年は『冥府の燭台』によって命を奪われ、操り人形となっていた。俺もそれを知ったからこそ彼を殺したのであるし、後にその実態は帝室から正式に発表されている。しかし民衆の気持ちはそれだけで収まるものでもない。俺が観客の前で彼の亡骸を破壊したのは確かなのだ。


 しかし俺の言葉を聞いて、ライエンタル青年は首を横に振った。


「この領でオクノ侯爵閣下を恨んでいる者などおりませんよ。むしろ仇を取ってくれた英雄として皆が感謝しております。その上侯爵閣下は『黄昏の眷族』を追い返した英雄でもありますから」


「そうなのでしょうか?」


「もちろんです。それにオクノ侯爵閣下がこの領に来てくださるということで先が見えるのであれば、私もそれまでなんとか耐えられると思うのですが……」


 そこでライエンタル青年がすがるような目で追い打ちをかけてきて、俺としては返す言葉に困ってしまった。


「ともかく、ここで決められることではありません。今は『大いなる厄災』の対応が先ですから、それが終わった時にまた考えることにいたしましょう」


 と先送りにしたが、実は俺自身、それもありかもしれないと思ってしまったのも確かである。


 フレイニルは土地を持つなら俺が新しく国をおこすべきなどと言っていたが、どう考えてもそれは現実的ではない。


 どうせどこかの土地に落ち着かなければならないなら、すでに領地として整備されている土地に封じられるのが一番楽だろう。


『異界回廊』が整備されれば距離の壁はなくなるのだから、大陸の北の端のこの領に腰を落ち着けるのも悪くはない。ドロツィッテが言う通り、『黄昏の庭』総督としてもこの領の領主になるのは理に適っている。


 しかし領地を持つというのは家を買うように決めるわけにもいかない。フレイニルたちメンバーと相談する必要もあるだろうし、俺自身踏ん切りがつかないといけないというのもある。


 いやむしろ、半分強制的に決められてしまった方が踏ん切りがついていいのかもしれない。もと庶民の俺が、そんな簡単に領主になるなんて決められるはずがないのだから。

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