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シナリオ35 魔法無効

 「おぉ~良いもん持ってんな。俺の部下やったときも思ったが、テメェの魔法は何なんだ?普通に一流だぞ」


 「何なんだと言われましても普通の土魔法ですけど」


 「何が普通だ!ぜってぇ普通じゃねぇ!威力も精度もおかしいだろ!………が、そこまで土魔法極めてんなら、土魔法一辺倒ってことだろ?残念ながら俺に魔法は効かねぇぞ」


 俺のはなった魔法は、盗賊の持つ権威吸収された。確かあの剣の術式の中に魔法吸収とかいうのがあったからそれの効果だろう、

 厄介ではあるが、種が分かっているなら対策できる。

 というか、俺の魔法を土属性一辺倒だとか勘違いしているのもデカいな。眠らせる効果で物理的じゃなかったからわかりにくかったのかもしれないが、俺は闇も使えるんだぜ、

 もちろん、


 「効果がなくても、これしか使えませんので」


 「ちっ!足止めか!」


 ブラフとして土魔法主体で戦うけどな。

 俺が魔法で作り出した土の手が盗賊の足首をつかむと、盗賊はそれをわざわざ剣で斬りはらう。俺のあの魔法はただ力を込めて足を振るだけで崩れるというのに、だ。

 魔法には全て剣で対応するという癖がついている様子だな。これは、使えそうだ。


 「おっと。よそ見をされては困りますね」


 「っ!?テメェ!!」


 少し足止めで煩わしそうな顔をしていた盗賊だったが、その後の俺の魔法で明確に敵意を出した。今までの遊ぶという空気が薄れ、俺を敵として認識してきたような気がする。


 「おや。お気に召しませんでしたか?」


 「当たり前だろ。ふざけた真似しやがって」


 俺がやったのは、土魔法で粒を飛ばしただけだ。ただ、細かい砂粒を大量に。

 1つ1つは大した威力も出ないし、もしこれがひとまとまりになって盗賊に当たったとしてもほとんどダメージにはならない。

 だが、細かいからこそ今回は意味があった。


 「くっそ。目に入った!」


 狙ったのは目つぶし。そして全体的な不快感だ。

 目つぶしは勿論狙うがこれだけでは目をつぶられるだけで防がれてしまう。しかし、それに付随する効果として口や鼻、耳への砂の侵入。また、着ている鎧への侵入や汗をかいている部分への砂の付着。こういったものが重なることによる運動の際の不快感を作り上げた。

 いかに訓練はしていても、不快感は少なからずどこかで感じるはずなのだ。少しでも向こうが不利になるように仕込んだ種である。


 「さて、次は完全につぶれてくれるといいのですが」


 「ちっ!うかつに目を開けてらんえぇな………まあ良い。こっちはスキルで眼なんか使わなくてもテメェの位置は分かるんだよ!」


 「っ!そうですか!!」


 急に詰められる距離。

 それに一瞬俺は驚くものの、素早くバックステップして避ける。直後、ゴッ!という鈍い音がして俺の立っていた場所には小さなクレーターができていた。


 「危ないですね」


 「ふんっ!避けといてよく言うな!!」


 さらに距離を詰められると面倒なので適当に土魔法で槍を作って飛ばしたりしつつ、しっかりと盗賊の動きを観察する。

 観た限り直線距離を瞬時に詰めることができるようだが、激しいカーブなんかには対応できていないように見える。恐らく狭い室内での戦いには向いていないんだろうな。


 「ならば、それを利用しない理由がない」


 「っ!?また随分と派手なことを!」


 盗賊の周りで俺の土魔法が発動する。

 それによって生み出されるのは壁であり、盗賊の行動を制限するように彼の周囲を覆っていた。ここから俺を倒しに行くには、その壁を破っていくしかない。

 が、


 「魔法の壁なんざ、俺の剣の前では無意味なんだよ!!」


 いくら俺が魔法で壁を作ろうと、魔法吸収を持つ県の前では無意味。せいぜいコンマ数秒の時間稼ぎにしかならない。

 ………なんて、盗賊は考えていることだろう。

 だがな、そんなことはこちらも想定済み。そのうえで、


 「なっ!?穴!?」


 壁を破壊して進もうとした瞬間、盗賊の足元に穴が現れる。穴と言っても30cm程度で、抜けないと言ったことはなく足が引っかかる程度だ。これもまた1秒稼げるかどうかといった程度のもの。

 なのだが、ここまですべては本当に時間稼ぎと注意を引く程度の意味しかなく、


 「頭上不注意ですよ」


 「ごぁ!?」


 ゴンッ!と鈍い音がした後、盗賊のうめき声が漏れる。

 鎧を着ているためあまりダメージは大したことがない。と思ったのだが、声を聞く限り予想していた以上に痛みを感じていそうだな。


 「気になりますね」


 そうして鑑定してみたところ、あの盗賊の来ている鎧は状態異常耐性に特化しているみたいだった。物理耐性はほぼないといった感じだな。

 恐らく智龍ちゃんが消し飛ばした装備の中に物理体制のアイテムなんかはあったのだろう。と考えれば、俺がここまで戦えているのも智龍ちゃんのおかげか。


 「チッ!テメェ、床削って壁に使いやがったな!」


 「ハハハッ。何のことやらよく分かりませんね」


 盗賊は俺の使ったトリックを1発で見抜いたようだった。

 俺がやったのは単純で、壁を作る部分の下数センチ部分、つまり元から存在する床の一部を天井の上部へ持ち上げたのだ。

 こうすることによて、下にある土の壁を魔法吸収で消し去ると。支えがなくなったその床の一部が落下。それが無警戒だった盗賊の頭へと直撃したわけだ。また、地面に足が引っかかるくぼみができていたのもこれの影響だな。

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