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シナリオ26 神か魔物か

 「当主様。脱走した男爵様の確認が取れました」


 「………そうか。あやつか。やけに積極的だと思えばこれが理由だとはな」


 侯爵は騎士からいなくなった男爵の報告を受けているな。さすがにここまで時間が経てば誰がいなくなったのかもわかるわけか。

 侯爵の指示により、すぐに残っていたその貴族の騎士たちが拘束されていく。

 どうやら侯爵の話を盗み聞きする限り、逃げた男爵というのはメンバーを集める時にかなり最初の方に手を挙げて、積極的に仲間を集めてきていたやつらしい。だからこそ何かあるとは思っていたようだが、まさか単独でこんな犯行をするとは思っていなかったようだ。

 そんな話からいろいろと考えを巡らせ、


 「智龍様。もしかするとこれから先、この村と先ほど逃げた男爵の領地との間で争いが起きるかもしれません」


 俺はこれから起こりそうなことを智龍ちゃんに伝えておく。

 案の定、


 「な、何じゃと!?あやつは罪人として捕まるのではないのか?」


 智龍ちゃんはそこまで考えてはいなかったようで驚いているな。捕まるものだと思っているようだ。

 だが、そう簡単な話ではない。


 「非常に心苦しいのですが、智龍様はこの村の中で神として扱われておりますが、国として神だと認めているわけではありません」


 「む?そ、それもそうじゃな」


 「ですので、最悪魔物へ攻撃を仕掛けただけだと言い張られてしまいますと、完全にそれが罪であるとは言い切れなくなってしまうのです」


 「なっ!?………そうじゃったのか」


 そんなことなど考えたことがなかったという様子だ。実際、俺も想定はしていたがあまり考えたくはない未来の1つだった。ただそれでも想定していたのは、ひとえに俺がシナリオというとんでもないものを抱えているからこそだろう。

 というか、俺がこのシナリオを持っていなければこんなことにはならなかったのだと思う。シナリオはいつだって、俺のスローライフを邪魔しに来るつもりのようだ。


 「そ、そうか。奴はそこまで考えて………」


 「恐ろしいですな。ただ、そう言われてしまうと確かに我らではどうしようも………」


 俺たちの話を聞いていた貴族も、俺の意見には反論できる要素がないということで難しい顔をしている。それほどまでに智龍ちゃんという存在は国の中で不安定なものなのだ。

 そういう意味も含めて、政治的に守ってもらうためにフルールの下へ村の子を送り込んだわけだが………少し甘かったかもな。

 ただ、ここで諦めてしまえば俺のスローライフが遠ざかる。今更そう簡単に智龍ちゃんという存在を手放したりはしない。


 「閣下」


 「な、何かね?」


 「その男爵様のご子息は村へ来ているのでしょうか?」


 「………………いる、な」


 侯爵は頷く。つまり例の男爵は、村の中に子供を放置したまま逃げたということだ。

 その理由としては、


 「捨て駒なのか、それとも人質に取られていると言ってこちらを責める口実にするための道具なのか………」


 「どちらもあり得る。ただ捨て駒だが使えるなら口実にも使うなどと考えている可能性はあるな」


 「なるほど」


 本当に面倒極まりないが、子供が人質にされているというのは十分すぎるほどに相手を責める理由にはなる。

 一応先に事実確認のため。捜査関係の人間もこの村に入ってくることにはなると思う。ただそこも事前に根回しがしてあったりして、男爵の息のかかった人間が検査をするだろう。そうなれば結局悪いのはこちらになってしまう。


 「ふむ。ではできるだけ早く男爵様の領地へ行き、何かされる前にご子息様を返還するというのは………無理ですかね」


 「無理であろうな」


 俺も言っていて途中から無理だと思った。どうせ何とか間に合ったとしても、それは偽物だと言われて終わるだけだろう。

 何の意味もない。

 それよりは、


 「正面から戦う準備をするなり何なりした方が良いですか」

 「それしかないやもしれぬ」


 俺の意見に侯爵は苦々しそうにしながら同意した。

 何故男爵がここまでのことを引き起こしたのかは不明だが、もしかすると侯爵がこの村や智龍ちゃんとつながることで影響力を拡大させることを阻もうとしたのかもしれない。と考えれば、侯爵としても歯がゆいかもな。

 まあ侯爵にはあとからいろいろとこの件の責任は取ってもらうこととして、


 「このようなこととなってしまい申し訳ありません智龍様。すぐに対応いたしますので、此度はここで」


 「うむ。おぬしも何かと大変じゃろうが、まあまた会える時を楽しみにしておくのじゃ」


 さすがにここでずっともたもたしている時間はない。ということで侯爵の指示で俺含め中にいた人間は外に出て、すぐに対応に当たることになった。

 貴族たちはすぐに村を出る支度をしているし、俺は村長などの村の重役に事情を説明する。


 「な、何じゃと!?」


 「智龍様へ害をなしただと!?ゆ、許せん。いくらお貴族様であろうと、そのようなことは許してはならん!!」


 「争いが起きるかもしれぬというのなら、全力で抵抗する!みんな、男衆に声かけて戦いの準備をさせろ!ほかにも魔法や弓が使える女衆も呼んできてくれ!ヴェンは手伝えそうなやつに声をかけてみんなの武器と防具を頼む!」

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