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シナリオ20 別れ

 「………ってことだから」


 「「「はぁ~い」」」


 良い返事が返ってくる。フルールについて行った場合の立ち回り方を教えておいた。

 この場合本当に理解しているかどうかというのは別の話だ。いくつか俺の話を覚えているだけでも、将来何かしら助かる場面はあるだろう。

 俺も前世では会社の人間が他社の幹部とかにすり寄るときできるだけ邪魔されないようにという目的で技術は叩き込んだからな。使えるかどうかもしっかりと確かめてある。


 「じゃあ、頑張ってくれ」


 俺はそれだけ伝えてその場を去る。

 この3人と一緒にいるところをフルールに見られたら変に勘違いされて恨まれるかもしれないし。できるだけ面倒になる事態は避けた方が良い。

 で、そうして俺が裏でいろいろしていると、すぐに数日は経ち、


 「じゃあねぇぇぇぇ!!!!!!」

 「ばいばああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 「うぅ。ぐすっ!また、ねぇ」


 3人の幼女がこちらへ涙を浮かべながら手を振る。そうして振り返すこちら側も、涙ぐむものは多かった。

 今日はフルールが帰っていく日。それに合わせて。3人も家族とともに引っ越すことになっているのだ。荷物などはすべて公爵家の方で運んでくれるらしく。たまに村へ来る商人に頼むよりもこちらの方が楽なのだとか。


 「師匠!いろいろとありがとうございました‼」


 3人からは少し離れたところで、フルールは俺に頭を下げている。

 3人と仲良くさせるためにいろいろと教え込んで誘導していたらいつの間にか俺が師匠呼びされるようになったんだよな。


 「いえ。お気になさらず。私にとっても友人が幸せでいられることは大切ですから」


 「ありがとうございます‼」


 俺の言葉を受けてもう1度頭を下げるフルール。

 師匠呼びはされているが、俺たちは一応友人になった。ただ、お互いあまり友人という気分ではないだろうな。あちらにとってはいろいろ教えてくれる変なガキだろうし、俺にとっては利用しやすいカモだ。

 そんな風にしてフルールとも会話を交わした俺だが、その後にもう1人もっと面倒な相手が待ち構えている。それは勿論、


 「閣下。どうかお気をつけて」


 「うむ。智龍様にもよろしく頼むぞ」


 「はっ!確かにお伝えいたします‼」


 侯爵である。

 なぜか知らんが(すっとぼけ)、別れの挨拶をするから会いに来いと言われていたんだよな。正直現世との別れでないことを祈るばかりだ。

 フルールにはバレていないが、侯爵には俺がハニトラを仕掛けたのはばれている。だからこそ警戒もかなり必要な相手なのだ。いつ邪魔だと思われて消されるかも分からない。

等と、色々考えて警戒していたのだが、長い沈黙の末侯爵の口から語られるのは、


 「本来は、この土地をどうにかして手中に収めるつもりだったのだ」


 「………そうなのですか」


 何かよく分からないが語りが始まった。

 俺の前世のドラマ知識によると。昔語りをしだすのは始末するときのお約束のような物。最後に「楽しかったよ」とか言われて撃たれるものなのだ。

 この世界でそんな知識が当てはまるとも思えないが、俺の背中には冷たい汗が流れていた。


 「ただ、支配しようとすれば逆に内側に入り込まれてしまった。しかも、智龍様との顔つなぎまでさせてもらったうえでな」


 「それはそれは。閣下とあろうお方でも計画が狂うことはおありなのですね」


 「もちろんだとも。よくあることだ。だが、今回はいつも以上に計画を狂わされた。すべては貴様の影響だ」


 俺に冷たい視線が突き刺さる。

 正直かなりまずい気がしている。現在気配こそ隠してはいるが騎士が分かりやすく俺を包囲しているし、何かしら合図を出せば直後に俺の首を飛ばすのも可能だろう。


 「………だが、決してデメリットばかりではなかったのも確かだ。貴様の選んだ3人は確実にこれ以降フルールへ虫がつくことを阻んでくれるだろうし、智龍様とのつながりもできている。特に智龍様とのつながりは貴様がいなければ作れなかったものだ」


 要するに、都合のいいようにされて嫌な部分もあったけどメリットもあったという話だろう。後はその損得のどちらがより大きかったかということで判断することになる。

 向こうにしてみれば息子に愛人が増えたのと、この村に融和政策をとることになったのが俺から仕掛けられたこと。それらは被害と言えなくもないが、大したものではないともいえる。

 俺の予想だと俺は許されるな。侯爵がここまで圧を出しているのは、


 「ふむ。ここまで圧をかけても同動じぬし変なことも口走らぬか。優秀だな」


 「おほめいただき光栄でございます」


 俺が口を滑らせたりするのを期待していたみたいだ。

 何か隠していることを口走ったり、侯爵にとって有利になるようなことを言ったりとかするとかな。○○するので許してほしいとかいう感じのことを俺でない一般の村人だったら口走っていたかもしれない。


 「また来る。貴様の成長を期待している」


 「ありがとうございます。またのお越しを心よりお待ちしております」


 どこかの飲食店みたいな別れの挨拶を告げて、俺は侯爵が去っていくのを見つめる。

 こうして、侯爵襲来という1つの大きなイベントが終わったのだった。

《メインシナリオ『神と人と権利と』を達成しました》

《シナリオ達成ボーナスが与えられます》

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