島は船ですよ
二人には相棒と呼べるチームメイトがいるはずなのだが、亜美奈達の所に来る時は、たいてい真鈴と心菜は二人で来る。気遣いなのにだろう二人に、亜美奈の頬が緩む。
「心菜と真鈴は良く遊びに来てくれるけど、ミケルさんは久しぶりですね」
「人間族の城の近くに住んでると、何かと頼まれることが多くて、ノンビリは出来ないんだよね」
城と言うのは天使族の城では無く、亜美奈達と一緒にこの世界に来た、高校の校舎の事だ。大きな建物は全て城だと思うのが、天使族らしく、そう言われてみれば城に見えない事も無いと思う亜美奈だった。
「今日は大丈夫なんですね」
「いや、今日も仕事だよ。これからこの島に乗って、皆で隣の大陸に行くんだ」
「隣の大陸?」
天使からの頼まれ事は、結構行き成り。それは判っていたはずだったが、隣の大陸と言うのは、ちょっと行って来るという場所じゃ無いと思う亜美奈だ。
「本来この世界は、一つの人種だけで構成させる予定だったんだそうだけど、間違えて、良く似た違う人種を幾つか召喚してしまったんだよ。
それで上手く行けば良かったんだけど、どうも怪しいらしくってね。違う人種は違う世界に連れて行く事になったんだ」
「私達も手伝えば良いんですね?」
「手伝うというか、やって貰う?」
「「「「はいぃっ……?」」」」
良く判らない別の世界に、恐らく殺気立ってる人達を連れて行くのを、神様でも天使でも無い自分達がやる?
「ああ、人を乗せるのはオレ達がやるよ。亜美奈達は人間にしか見えないし、日本語を話すと危険だからな」
「乗せた後、何かする事が有るんですか?」
「向こうの天使族が迎えに来るらしいから、そこまで連れて行って欲しいんだ。中間に当たる部分を、オレ達は通れないから」
「つまり、この島の運転をすれば良いんですね」
「それは、ちょっと楽しいかも知れないわね」
「桃子もそう思う?」
こんな大きな島、どうやって動かすのか解らないけど、自分で動かすのはきっと、物凄く気持ちが良いと亜美奈は思う。
「えぇと…… もしかして、私は運転出来ないんです?」
どうしてそう思うのだろう。考えて、思い当たったのはミケルが言った『オレ達は通れない』という言葉だった。けれど、迎えに行くまでは一緒なのだから、その途中で動かす程度は出来そうだ。
そう思って言って見たが、向うに着くまで自在に動かせるよう、練習する必要が有るため、アンジェに遊ばせる暇は無いのだそうだ。
「天使族なんだから当然。それにアンジェは、聖王様に呼ばれてるぞ」
「何の用です?」
キョトンと首を傾げ、ミケルを見上げるアンジェは可愛い。けれど恋人の居るミケルには、アンジェの【可愛い】は効かないのだった。
「お前、亜美奈達から色々貰い過ぎ。確かに家族登録してあるから、多少貰っても良いけど。アンジェの方からは、ここしばらく何も上げて無いだろ? 聖王様、怒ってたぞ。等価交換を忘れるな、って」
ああ……
思わず顔を見合わせる、亜美奈と桃子だった。確かにちょっと、気になってはいた。特に食べ物関係。甘い物。
サクラを大人しくさせるため、おやつを出して上げようとすると、当然の様にアンジェも要求してくる。しかも、サクラと同じ物とは言わないので新しく作らなくてはいけない。
「という訳で、アンジェは城に戻る事」
「ハァイです」
けれど怒られるのは、ちょっぴり可愛そうな気もする。甘やかした亜美奈も悪いのだし。最近は、わざと聞こえない振りして、上げない事も多かったので、少しは大目に見てあげて欲しいなぁ。なんて、言っても無駄だろうか。
「亜美奈達は、気にしないで良いからね。良い事も悪い事も、こうやって一つずつ覚えて行く。人間の子供も、そうなんじゃ無いかな」
「確かに、そうかも」
「そうね。私達もきっと、間違えながら成長して来たわね」
なるほど。確かにそうなのかも知れないし、そういう意味でのお叱りなら、対して怖くも無いだろう。
人によって、怖さの基準は違うたろうが。
「じゃあ、アンジェはまた今度」
「ええ。大陸から帰って来たら会いましょう」
「はいです。また、私達のお城で会うです」
隣の大陸まで何日掛かるか判らないが、空を飛んで行くならそう掛からないだろう。亜美奈達が元々住んでいた世界と違い、飛行機が飛び交って入るわけじゃ無い。方向を一旦決めたら、ただ真っ直ぐ進めば良いだけ。簡単な物。
「うんっ。またねっ」
「行って来るわねぇ」
大きく出る手を振り、アンジェを見送る。と言っても、バッグから取り出した扉を開けて入って行くだけなので、情緒も寂しさも感じないのだが。
つづく




