朝御飯は何にしよう?
自分に鑑定を掛け、武器を扱うスキルを見てみる。
剣と弓矢、異種という不可思議なスキルを持っていた。
次に、生産系のスキルを確認すれば、幾つかの武器レシピが有ったので、剣とボーガンを作ってみた。矢は魔法で作れるらしいので、予め持っておく必要は無いようだった。
「後、防具かあ。鎧は重たいしなあ」
ゲームの女の子は、それで戦って大丈夫か? と聞きたくなるような服装で、平気で戦っていた。
あれを見本には出来ないから、何か考える必要が有る。
そう言いつつも、バッグの中から取り出すのはファンタジーゲームの攻略本だ。
「おはよう。もうやってるの?」
ペラペラ捲っていると、起き出して来た桃子が、呆れたように声を掛けて来た。
テーブルの上には、三人分のケットとパジャマが置かれている。呆れるのも当然だ。
「夕べはあれからすぐ寝ちゃったから、早くに目が覚めちゃったんだよね」
八時前にはベッドに入ったから、早く目が覚めてもしかたない。
それでも起き出した時、もう日はそれなりの高さが有った。
「ふ~ん。それで、何をしているの?」
「武器と防具の研究? ほら、そこのダンジョンに入らないといけないでしょ?」
ダイニングルームの下に有るダンジョンは、亜美奈が作る物と違って、魔物と戦って行かないとならない。
武器はもちろん、防具もしっかりしておくようにと、アンジェが言っていた。
「今は忙しいし、もう少し落ち着いてからで良くない?」
「でもさ、例のぬいぐるみの素材がね、どうもそこのダンジョンでないと入手出来ないみたいで」
「それにしても……」
「モチモチ綿って言うんだよ」
その 瞬間、桃子の目の色が変わった。
「それってもしかして……」
「うん、百均のあのクッションだと思うんだよね」
モチモチして肌触りも良く、ついつい抱きしめたくなると評判の、あのクッション。同じ感触のぬいぐるみも売っていて、元の世界の亜美奈の部屋にも沢山転がっている。
百円じゃ無いがその価値は有ると、高評価のあの不思議触感のクッションだ。
「鑑定してみたら、この近くのダンジョンに有るって出たんだよね。とすると、あそこしか無いかな、って」
生地の方も、モチモチのびのびとなっていて、やはりこの近くのダンジョンに有ると出ている。
レベルも上がった事だし、行かない理由は無い。
「というわけで、武器と防具を作らないと」
「そうよね。私も作るわ」
「あ、でもその前に、ご飯にしようか」
「へっ? あ、うん、そうね……」
酷くガッカリさせてしまったが、それはそれでそれなりに大切なので仕方ない。
そもそも、アンジェを置いて行くと後がうるさそうだ。到着するのを待って、連れて行かなければ。
「では、朝ご飯を作りましょう」
「そうだね、今日は何にしようか?」
朝ご飯は軽めにしたいが、それではレベルが上がらない。
サラダはもちろん、ハムやソーセージなど肉を加工して作る料理、を更にゆでたり焼いたりする。後はヨーグルトにフルーツ、フルーツジュースカフェオーレ。トースト、は、いらないかな?
一応パンも用意して。テーブルに並べ終えたちょうどその時、アンジェが扉を開けて現れる。
「おはようです。今日も美味しそうです」
カゴいっぱいのパンは、ほとんどアンジェが食べる。魔法を使うのは、お腹が空くらしい。
そんなに魔法を使っているだろうか、という疑問は、きっと言わない方が良いのだろうと思う亜美奈だ。
「ごちそうさまです。じゃあさっそく、外に行くです」
「外って、どうして急に?」
普段は『今日は何をする』かと聞いて来る。基本、亜美奈達の意思が優先されるのが普通だった。
もちろん、しなければならない仕事に付いては、上から指示を貰って来たりもしているが。
「ねえアンジェ、外に何が有るの?」
桃子が聞く。
小さな子どもに聞くように、優しい笑顔付きでだ。
「精霊がいっぱい居るです。亜美奈のスキルレベルのせいで、いっぱい集まって来ているです」
「レベルと精霊に、何か関係有る訳?」
「もちろんです。魔法やスキルを使うと、精霊のご飯はいっぱい出るですけど。レベルが高いと、ご飯は美味しくなる上もっといっぱい出るです」
「匂いを嗅ぎ付けて集まって来ているのね」
「そうです。ほっとくと、島が精霊だらけで外に出られなくなるです」
それはマズイ。やはり何事も『ほどほど』が一番。
ふわふわ浮かぶ精霊がいっぱいと言うのも、見応えが有るだろうが、やはり限度と言う物が有る。
「急いで食器を片付けてしまうから、ちょっと待ってて、ね……」
言ってるそばから、アンジェが魔法で片付けてしまう。
片付ける魔法だって経験値が入る訳で、見習いレベルの亜美奈達には大切な経験値なのだ。
「どうしたです? 早く行くです」
食器を片付けるなんて、待っててで一瞬だ。当然、経験値は少ない。それでも経験値が欲しいなんて、アンジェに言っても判らない。
二人はチラリとだけ顔を見合わせ、玄関に向かった。
つづく




