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たまり場になりそう予感が

 日が暮れる前にすべて売り終わり、『神の手』は全員三つ葉学園高校から引き上げる事になった。

 魔法とスキルは全ての人が使えるようになったが、生徒達と『神の手』はまったく同じとは言えない。むしろ違う事の方が多いため、共存は難しいようなのだ。特にスキルは全く違う。

 夕方の校庭で、料理スキルを使っている女生徒を見たが、彼女の料理はごく一般的なそれに近く、妖精の姿は全く無かった。

 調味料の類が見当たらなかった事から、味付けについてはスキルの恩恵を得ているらしい。けれど、出来立てのオムレツはフワフワで美味しそうだったし、美味しいと喜んでいた。

 亜美奈達が作れば妖精が手伝ってくれると知ったら、どんなに驚くだろうかと思うが、それを告げるのは憚られた。


「下田組はそのまま帰るのかな?」


 彼らは例の一群を連れて、八丈島まで行っている。

 行くと言っても、海を渡って行くわけでは無く道を使う。一度言った事の有る場所へは、扉を開けるだけで繋がるのだ。

 もちろん下田組は亜美奈達の家に来たことは無いが、工房に有る扉は天使の通り道になっているため、天使が扉を使えば来ることが出来るらしい。

 それでも八丈島からはこの房総に来るより、下田に帰る方が気分的に近いはず。


「道を使えば、どっちも同じ距離だしねぇ」

「みんなぁ、来てるから来るかもねぇ~」


 三人だけで話すのは、昨日の昼ぶりだ。

 向うに行ってからは別々にいたり、『神の手』みんな一緒だったりで話す事もしなかった。特に昨夜は給料に使う貨幣を作るため、校舎のどこかに詰めていた。

 貨幣を作るのは倍増を使えば簡単だが、それを袋に詰めるのが大変だったらしい。

 倍増を使えば、と言ったところ、自分の貨幣は倍に出来ても他人の作る貨幣は出来ないそうだ。


 庭では桃子逹新しい『神の手』逹が、トレーラーハウスを作っている。付与で亜美奈が配ったレシピだが、どんなに新しいデザインのレシピを作っても、どうしてか二番目に作ったシンプルなレシピが付与されてしまうのだ。

 そのためみんなが作っているのは、バス・トイレ・簡易キッチンが付いただけの、長い箱だ。後はそれぞれが自由に、インテリアを設置して行く。彼らにはそれが楽しいようで、あれこれ作っては設置している。


「明日からどうする?」


 何とはなしに亜美奈は聞いた。一応、やることは決まっている。三ツ葉学園高校の周りに、ダンジョンを作って衣食の保証をするのだ。

 それが済んだら先発隊の手伝いだ。歩いて引っ越し先を探す彼らに付いて行き、道中の食材探しの手伝いや危険の察知。場所が決まったら周辺の地図とダンジョンを作ってから、一旦戻って本隊の案内をする。

 しばらくはその繰り返しの筈だった。それでも三人なら楽しいと思っていたのだが。


「ごめんねぇ、私逹ぃ、銀行やらないといけないんだってぇ」

「うん……」

「せめて三つ葉の引っ越しが終わるまで、ボク逹三人でやりたかったんだよ、でも、ダメなんだって」


 引っ越しするには、色々必要な物が有る。

 引っ越しした後も、色々必要な物が出来て来るだろう。

 校内で様々な仕事を作り出し、それに対して報酬を払う事でみんなが安定して収入を得る事の出来る環境を作りたいのだそうだ。

 当然だが現金は必要になるし、支払う為の準備に人手が必要だ。

 そういった仕事をするには、専門のスキルが必要なのだと言われてしまったら、彼女達にはもう断れない。


「もっと亜美奈と遊びたかったなぁ」

「私もぉ。学校の帰りとかぁ、休みの日とかぁ、遊びに行けば良かったぁ」

「落ち着いたら遊べるよ」


 しばらくは忙しいと、ミケルは言っていた。

 町作りが終わったら、後は時々覗きに行けば良いだけだ、とも。


「夏になったらさ、学校の前の海岸で泳ごうよ」


 忙しくたって、1日ぐらいの休みは有るだろうし、1日ずつも積み上げればいっぱいになる。


「あの、さあ、……ちょっと良いかな?」


 しんみりしてるのに、邪魔するのは誰だ?


「あ、やっぱ後にするかな?」


 おずおず話し掛けて来たのは、下田組の久我だった。下田組の中で、唯一名前を覚えたのがなぜだか彼だった。


「戻って来たんだね」

「そりゃ、オレ逹もあの家欲しいし」

「レシピは付与で渡したよね?」

「貰ったけど、水回りをダンジョンに繋ぐのって、オレ逹じゃ出来ないからさ。それに、みんなに渡す物が有ったんだ」

「お土産だったら昨日貰ったよ、まだ貰っちゃって良いの?」


 下田組からの土産は、彼らが作る中級ダンジョンでないと採れない、特別な鉱石だ。それを使って、光る玉を作るのだ。

 鉱石と一緒にそのレシピも貰ったのだ、これは大盤振る舞いと言えよう。


「いや、精霊」

「精霊って、あの?」


 人気の無い所をフヨフヨ浮かぶように飛んでいる、小さな光。下田の方から、わざわざ連れて来たというのか? そんな事をしなくても、招待してくれれば遊びがてらみんな行くと思うのに。


「保護しようとすると逃げるくせに、やたらまとわりついて来る奴らがいるんだよ。さっき思い出して『一緒に来るか」って聞いて 箱開いて見せたら入ったから連れて来た。多分、他の地域の『神の手』をオレ逹に感じたんだろうって、天使逹が言ってた」


 どのくらい入ってるのだろう、みかん箱程度の木の箱だ。特に使い道が無さそうなそれは、このために作ったようにも見える。

 きっと以前から考えて箱も作って置いたに違いない。自分たちの家に招待するか、それともこちらに連れて来るか。考えた末に今になってしまったのでは無いだろか。


「そういやあの豚、あの後どうなった?」


 すぐに開けると思ったら、どうでも良いことを聞いて来る。チラチラ仲間の方を見ていることから、タイミングを図っている?


「畜産のぉ、先輩逹がぁ持って行ったよぉ」

「解体した後熟成させてから、各グループに分けるって」

「豚は病気持ってるから、直ぐには食べられないんだってさ」

「ボク逹も欲しいって言ったんだけどねー」

「そっか…… さ、始めるぞ」


 久我が手を挙げると、他でも手が挙がり、箱に手がかかった。

 フワリ、光が飛んで行く。久我の箱の中にいた精霊も、ふわふわと一旦上空に登りそれから目的の人に向けて降りて来た。

 亜美奈が手を伸ばせば、五つの光が手に触れて石に変わった。


「私はぁ、三つだったよぅ」

「ボクは四つ。亜美奈が一番多かったね」

「三・四・五だね」


 精霊の持っているスキルや魔法や、精霊の種類や住んでいる地域によって違って来る。この辺りの精霊は、生活系が多かった。


「さて、この子逹はどんなスキルを持ってるのかな?」

「袋にぃ、入れてみようよ~」

「うん、入れようっ」


 こんなにノンキなやり取りも、なんだか懐かしい気がした。そんな筈は無いのだ。

 昨日までだって今朝だって、きっとそんな会話をしていたはず。なのに思い出せないのは何故だろう。






                       つづく

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