良い物出て来た?
「ああ~……」
精霊の鑑定をしていると、心菜が情けない声を上げた。
「どうしたの、心菜?」
「コレ~、昨日欲しかったぁ……」
「どんなスキルだったの?」
「ボクもだぁ」
答える事も無く、二人ともガックリと地面に手を付いた。
「数える魔法だった。小さい物なら、指定した数が手のひらに自動的に乗るんだって。大きめだと、指定の場所に指定した数が整列するって」
「昨日持ってればぁ、きっとぉ半分の時間でぇ出来たのにぃ」
それは、きっと大変だったのだろう。その場所に居なかった亜美奈には、どんな作業員をしていたか判らないが、二人のこの様子から作業の大変さは理解出来なくも無い。
「つ、次の時には、きっと凄く楽になるね」
「うん~、きっとぉ、きっとぉ……」
落ち込み続ける心菜と逆を行くように、真鈴はぐいっと姿勢を正した。
それを見て亜美奈は、少しだけ安心する。
「面白いのも有ったよ」
「へえ、どんなのだったの?」
「海の上を歩ける魔法。しかも、二メートル以内に居れば、他の人も一緒に歩けるの」
「それは良いねえ。夏が楽しみになりそう」
海の上を歩く人の姿を想像してみれば、かなり激しく異様な光景だが、自分が歩く立場なら絶対楽しく遊べるだろうと思う。
ただ、知らない人に見られると、ちょっと厄介な魔法かも知れない。何しろ人間は、水の上を歩くことなど出来ないのだ。
いくら魔法と言っても異様だし、不気味がられる可能性が高い。
とは言え、人に見られない所まで飛んで行って、そこで遊べば良いのだ。それなら異様などと言われる事はない。それどころか、かなり楽しい遊びになるのでは無いかと思う。海の透明度が高ければ、天然の水族館だ。
心菜と真鈴にそう言うと、なぜか心菜がものすごく嬉しそうに笑った。
「私のもぉ、水族館だよ~」
「えっ、どんなの?」
「なんとぉ、水に濡れずにぃ、水中を歩けま~すぅ。もちろん息も出来るよ~」
それは本当に水族館だ。しかも、魚と一緒に泳ぐことだって出来てしまう。
「凄いっ。それもみんなで行けるの?」
「もちろんだよ~」
「凄いすごいっ。夏が楽しみになって来た」
「今直ぐでも潜れるよ~」
「それはさすがに寒いから」
濡れなくても寒さは感じると思う。底の方の水温は高いと言うし、風が無い分多少暖かいかもしれないが。
「他はどんなのだった?」
「私はぁ、経験値二倍」
「ボクもそれ有ったよ。しかも二つも……」
精霊もガチャガチャもダブるのだ。仕方ないが、やっぱりダブると悲しい。
「亜美奈は?」
「私はねえ…… なんか、レベル足りなくって見えにくい、みたい?」
「あぁ、有るある。レシピとか、特に有るよね」
「全くぅ読めないのぉ?」
そう言う訳でも無いが、読める所を繋げてもかなり意味が判らない。
とは言え、亜美奈一人だけ教え無いのもおかしいだろうし、とりあえず判る範囲で説明してみる。
「コレは魔法だけど付与専門で、何かのレベルを上げた後に何かの協力を得て、この魔法を何かと何かに付与出来る。っていうのが二つ。この二つは、併用して使えるって。
次が、ぬいぐるみのレシピで、レベルの上げるとそのぬいぐるみに何かを付与出来るみたい。
後の二つは、引っ越し魔法と経験値二倍。この引っ越し魔法って、良いかも?」
「『何か』ばっかりだね」
「うん、ろくに見えないからそうなっちゃう。けど、いつかは判るはずだから。うんうん、きっとね」
引っ越しの方はしっかり判るし、使い勝手が良さそうだ。なにしろ見える範囲に有る物を移動させたり、入れ替えたり出来るのだ。
しかもこれにはレベルの概念が初めから無いスキルだとかで、いきなり大きな建物を移動・入れ替えが可能になる。生きてる人間や動物も可能らしいとなれば、危機一髪を切り抜けるなんて事も出来そうだ。
ただ、あまり期待されても困るから、それについては言わない方が良いかもしれない。
なので簡単な説明だけを、心菜と真鈴に説明する。
「建物も移動出来るのは、確かに便利だね。水害とかで川に流されそうな時も、移動で何とか出来るし。ボクたちの家って崖の近くに建ってるから、出来れば少し移動して置いた方が良いかも、って思ってたんだ」」
「なるほど、落ち着いたらやっとくね」
「う~ん、確かに便利そうな気がしなくもないけど」
「他にもぉ、何か有るんでしょう~?」
にこにこニヤリと、二人が亜美奈の方へにじり寄って来る。
まあね、と亜美奈はイタズラっぽい笑みを浮かべてみせた。
「天使のバッグ・天使の箱・マジックバッグの機能を、他の袋状の物、または箱に移動出来る」
「「マジックバッグ?」」
それはネット小説に良く出て来る、とても便利で不思議なバッグだ。
容量無制限で時間経過が無く、何年も前の料理が熱々のまま出て来たりもする。
もちろん箱とバッグを組み合わせる事で近い事は出来るけれど、ネット小説ファンとしてあのバッグは憧れだ。
この世界にそれが存在する。まだ見ぬ憧れに夢を馳せ、それぞれに空想し楽しんでいると。
「そのスキル、オレに付与してくれないかっ?」
間近で叫ばれ、三人揃って飛び上がった。
そこに居たのは知っていた。いや、知っていた筈だった。ただ、すっかり忘れ去っていただけで。
「居たんだ」
ボソッと真鈴がつぶやいた。
「ひでぇっ、ずっと居たろう? 話しの内容がアレだったから、静かにしてただけで」
それは気遣いありがとう。言外に礼を言い、笑ってごまかした。
「ごめんゴメン。引っ越しが欲しいんだね」
「そっ。このバッグ便利なんだけどさ、女の子っぽいって言うか、柄じゃ無いって言うか。後、引っかかっる事がけっこう有って、ちょっと邪魔なんだよ」
「サコッシュショルダーだから、男女関係無いハズだけど」
「男の子はぁ、気にしちゃうんだねぇ」
久我の言葉を受け、亜美奈は辺りを見回してみた。
女子はそのまま斜めに掛けているが、男子はヒモを短くして背中に回すなり工夫して使っている。
本来このバッグは、自転車の長距離レースの給水ポイントで配る物だから、男子向けの筈だったが。チャームを付けるチェーンが付いているせいも有り、女の子向けに見えるのかもしれない。
「良いよ。それで、久我くんの方は何くれるの?」
「そうだなぁ?」
物もスキルも、欲しいなら精霊を保護するか交換だ。それも等価交換が基本だと、ミケルに厳しく言われている。
「ん~、そうだなぁ。……あっ、いやその前に聞いとくか」
「聞くって、何を?」
欲しい魔法。必要なスキル、だろうか。
この世界に存在する、全ての魔法を知ってる訳じゃ無いから、聞かれても答えようが無いと思う。
「付与して貰っても消えちゃって、自分の物にならない事が有るだろう? そう言う時ってどうしてる?」
つづく




