【番外編】結婚式
「綺麗よ、茗子ちゃん…」
親族の挨拶の部屋で、ハルくんのお母さんから声をかけられる。
「おばさん…ありがとうございます…」
私がお礼を言うと、
「春と本当に――――…」
感極まったのか、おばさんが泣き出す。
『きっと時間が、あるべきカタチに関係を修復してくれる』
おばさんがあの日言ってくれた言葉…。
別れてから何年後かに…私とハルくんを再び結びつけてくれた。
「おい、泣くなよ母さんっ」
――――サクちゃん…。
「茗子、まだ間に合うから俺と結婚する?」
「こら、咲!何言ってるのよ!」
サクちゃんがふざけて言ったことばに、おばさんが怒る。
「あんたには、葵ちゃんがいるでしょ?」
「―――お義母さん、良いんです分かってますから」
サクちゃんのお嫁さんの、葵ちゃんがおばさんに言う。
「茗子さん…これからよろしくお願いします!
私…ずっと憧れてました。
だから…こんな風に…お義姉さんになって貰えるなんて…」
「葵の為に結婚するんじゃないから」
呆れたようにサクちゃんが言う。
「わ、分かってますよ…」
葵ちゃんが膨れて言い返す。
――――良かった・・・。
私はそんなサクちゃんと葵ちゃんを見て微笑む。
「なんでそんな嬉しそうなの?」
後ろからウエディングドレス姿の私の腰を抱いて、
ハルくんが囁くように言う。
「ハルくん…」
―――みんなの前で…恥ずかしいよ…。
こんな、見せつけるみたいに…。
「茗子?」
うつ向いていた私にハルくんが顔を覗き込む。
「さ、サクちゃんが…」
「咲が、何?」
――――顔、近いよ…。
「幸せになって…良かったなって…思って」
「そうだね、良かった」
「あの…ハルくん…?」
「ん?」
「そろそろ、親族の挨拶の時間だよね…」
「うん、そうだね」
「―――ハルくん、離して…」
「あぁ、ごめんごめん。可愛すぎて離しそびれた」
――――だから…そういうのが、恥ずかしいんだってば。
私は今日…ハルくんと結婚します―――。
披露宴の歓談の時間、高校時代の友達が集まってくれた。
「茗子、おめでとう…」
「ありがとう…航」
――――航と会うのは久しぶりで…正直今日参加して貰えるとは思っていなかった。
「わざわざ来てくれてありがとう、仲西くん」
私の隣に座っているハルくんが、笑顔で航に話し掛ける。
「あんたが招待状送りつけてきたんだろ…」
航が不機嫌そうに言う。
「まぁね。せっかくだから茗子のウエディングドレス姿、見せてあげようかと思って」
ハルくんが喧嘩を売る口調になる。
「もう、春先輩、あんまイジメないであげなよ!こいつだって相当へこんでるんだからさぁ」
甚がハルくんと航、二人の間に入る。
「茗子、いつでも日本に戻ってきて良いんだからな!なんなら俺の所に…」
「お前も、いい加減しつこいっ!」
甚が航にツッコミを入れる。
「茗子、幸せになれよ!」
「甚…ありがとう」
「茗子…良かったね…」
「彩…ありがとう」
「私が結婚するときは、絶対日本に戻ってきてよ?」
「うん、愛梨の報告…待ってるね」
「茗子…っ」
「菜奈…」
友人代表の挨拶をしてくれた菜奈は、泣いてばかりで…。
私ももらい泣きばかりだ。
みんな…本当にありがとう。
―――私は…幼い頃から一つ年上の、幼馴染みのハルくんが好きでした。
ずっと、追いかけて…。
いくら追いかけても…まだハルくんには追い付きません。
でも…、ハルくんが私を愛してくれるから。
私は、この差を…、いっそのこと、愛していこうと思ってます。