手を伸ばす
第28話です。
人生は、ただの繰り返しだと思っていた。
どんなにつらいことがあっても生きていける。
布団にもぐって空を眺めていれば、次の日になる。
その繰り返しだった。
今まではそれで耐えられていた。
けれど――
「美羽……」
美羽がいないと駄目だ。
僕が幸せになるには、美羽が必要だ。
彼女がいない夜は、孤独で息が詰まりそうになる。
たった数日しか経っていないのに、彼女のことが頭から離れなかった。
自室の布団の中、何度もその名前を呼んだ。
「美羽……」
気付けば家を飛び出していた。
闇に染まった街中を走る。
あの日、即答できなかった僕を、美羽は許してくれるだろうか。
わずかな期待を胸に、美羽の家へ向かう。
彼女なら助けてくれる。
そんな気がしていた。
美羽の家に着き、インターホンを鳴らす。
一度、二度。
返事はない。
――まさか。
窓に手をかける。
鍵はかかっていなかった。
勝手に入ってはいけないとは理解していた。
でも、今はそんなことを考えている余裕なんてなかった。
躊躇いもせず、中へ入る。
「美羽?」
返事はない。
部屋を一つずつ確認していくが、どこにもいない。
美羽が、いない。
「そうだ、電話……」
ポケットから取り出して思い出す。
「壊れているんだった……」
もしかして、もう二度と美羽に会えない?
「そんなわけない。そんなわけ……」
今は少し出かけているだけだ。
きっと帰ってくる。
もうすぐ帰ってくる。
リビングを意味もなく歩き回り、美羽を待つ。
外で物音が聞こえる度に、胸が跳ねた。
美羽かもしれない。
そう思って、何度も玄関を開ける。
でも、美羽が現れることは無かった。
何時間が経ったのか分からなかった。
早く、彼女に会いたい。
それだけだなのに。
窓の外を見る。
明るくなった空は雲で覆われていた。
美羽が、いない。
その事実が胸を締め付ける。
呼吸が荒くなっていく。
僕はどうすればいいのだろう。
ぐちゃぐちゃに壊れた日常は、もう元には戻らない。
この先、どう生きればいいのか。
誰のために生きればいいのか。
何をすればいいのか。
何も分からない。
「美羽……」
涙混じりの声は、誰にも届かないまま静かな部屋に溶けていった。
('ω')ノ




